厳選
艶美は突然現れる。一年先、二年先、そんな未来に起こり得る小さな予言を告げて帰ってゆく。時に路地裏から姿を表し、小言を述べて帰る事もあれば、こうして堂々、スーナオを通して現れる。そしてこういう時は大抵、大きな災いを告げる時だ。これが、外れた事は無い。
「人類の……絶滅……?」
とてつもなく大きな災いを、艶美は察知したらしい。
「10年先の未来。もはや人間の手に負えない程にまで魔物の数は増大し、人間達はまた一箇所に集まりそして、蹂躙される。抵抗する事など赦されず、瞬く間に、人間という種族はこの星から消えるでしょう」
「………………どうすれば?」
「【勇者】を探してください」
「……勇者を」
「しかし、勇者はまだ覚醒には程遠い。勇者となり得る素質のある者を見つけ出し、試練を与え、育てなさい」
「……では、そんな者をどうやって探せと」
「候補者を募るのです。その者を勇者だと証明付ける占い師が共に現れるでしょう。その時始まります。【勇者決定トーナメント】が」
ローブを翻し、艶美は去った。怪訝な表情のスーナオと比べ、エルメスの表情は険しかった。エルメスは思った。
「…………」
(私はまだ死ねない……。チノとリリスの未来を見届けるまで、絶対に……)
魔王の死をこの目で見届け、世界を正常に戻すまで死ねないと、思わなければならなかった。
三大国は協議した。占い師により導かれた三人の王が集まり、【勇者】を探す方法を思索する。きっと、勇者覚醒の道には、文献に記される情報が必要だろう。きっと奇跡が導き、勇者の手にそれが渡るはずだとエルメスは力説する。きっと、候補者を募ると言えど、その数がどれほど膨大になるか分からない。よって、艶美の言う【勇者決定トーナメント】開催までにある程度の厳選が必要であると考える。
それに参加する為の条件として、三つを提示した。
一 魔王との戦争を描いた文献を所有していること。
ニ 自らを勇者だと証明する占い師を携えること。
三 トーナメント開催地は秘匿とし、占い師の導きにより、参上すること。
これら条件を満たした者を晴れて【勇者候補】とし、【勇者決定トーナメント】への参加を認めるものとする。
この決定が瞬く間に世界に広がる、少し前。
【人類絶滅】という事象をいち早く察知していた者達が既に動き出している。所詮、王の決定など勇者でない者達への告知に過ぎないのだ。
彼らは理解している。星が危ないと。そして世界は求めている。ただ人が喜ぶことだけを言うだけの生半可な占い師などではなく、未来を見据え、確かな力を以て人を導く存在。
そんな存在を人は敬意を以てこう呼んだ。
闇を照らす星の輝き 【占星術師】




