飴玉
【冒険者ギルド C‐E】 玄関を開いたそこには大抵飲み屋がある。
居酒屋【MAKUNOUTI】
そしてそこはただ飲食をするだけの場所ではない。
食料とは常に貴重なものだ。何より砂糖は極めて高価で、飴玉は冒険において貴重なエネルギー源として高価で取引されている。故に、飴玉は金銭となり、飲食店の一角は甘味を賭け金として賭場となる事がある。
「『お絞りある?』」
サトウキビを絞る事で砂糖を得る事から、飴玉のことを『絞り』と表現し、これは賭場に入る為の隠語となる。
賭場への入口に入る一人の男性。ステテコに腹巻きを撒いた半裸の男は賭場に入ると見渡してある者達を探した。彼らはこの賭場によく出入りしているという。
誰もが男に視線を向けた。カモかそれとも強者か測るがそのどちらでも無い。その身体に飴玉など携えている様子も無く、ましてや冒険者でもなさそうだ。男は汗を手のひらに拭いながら部屋の壁に沿って歩く。
賭場の端。4人で卓を囲んでトランプを睨みつけている者達が居る。
「マシルス君。どう?」
難しい表情を浮かべながら頭を掻き毟る赤毛の女性【ルージュ】は頬杖を付いてニヤける男【マシルス】を一瞥すると、彼はまたクスクスと笑った。
「さぁどうだろう」
「くぅ……。2枚変える」
マシルスは付いた頬杖を解いて、手の先を大柄な男に向ける。
「【ダッグ】さんはどう?」
「悪くない」という虚勢をマシルスは見抜いていた。
「じゃあ僕は交換なしで」
そして最後。それはパーティを率いるリーダー【マーシー】。栗色の髪の毛に赤みが斑に入るオールバックの男は、「ペッ」と唾棄する。
「これは、俺の勝ちだ。10のフォーカード」
「っだー! クソッ。アタシはワンペア」
「同じく」
「ふっ。フフフ……」
「…………」
「…………」
「…………」
カードが開かれた。
「ストレート」
カードが散らばり卓を汚した。そこに賭けられた飴玉をかき集めるマシルスは注目を集めるほど綺麗に笑って「悪いね。悪いねぇ」とか嫌味混じりながらも嫌悪を掻き立てないようやんわりと懐に仕舞う。
「あの!! アンタ達!!」
釣り人【サウジ・ガラ】が、卓を強く叩いた。彼は酷く慌て、額が光るほど脂ぎった汗に汚れている。
「あん? なんだよ。アンタ」
男は息を荒げて、外を何度も指差した。
「海岸に、怪物が……」
「怪物だぁ? 何言ってんだアンタは」
それと同時刻、同じように嫌な予感に苛まれ現れた一人の占い師が居る。その姿に、マシルスが視線を向けた。
「あれ、占い師さん?」
「私も、感じました。桟橋に何かが居ます……」
「はあ?」
「……マジ?」
「何かって……」
「魔物?」




