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メビウス  作者: ののせき
妖怪
24/47

相殺

【槌使いの勇者】 消滅。


「……あれ?」


 中央に配置したばかりのカードが煙を上げていた。不思議と悲鳴までも聞こえてくる。正面。悍ましい怒りを露わにする猫娘は全身が炎に焼かれながらも、火の粉が花となって舞う姿があった。

「赤の場面から【永炎恋歌(えいえんれんか)】」

 【永炎恋歌(えいえんれんか)】 属性【赤】 通常効果【魂の火力が1000上がる】


「…………赤に赤」


「そう。赤の場面で赤の呪詛。正位置で発動。【相乗効果】だ」


 呪詛には二つの【効果】がある。【通常効果】と【相乗効果】 場面と呪詛の属性が一致している時、その効果は何倍にも膨れ上がる。


 【永炎恋歌(えいえんれんか)】 属性【赤】 相乗効果【魂の火力が1000上がり、相手を攻撃する】


「俺と彼女はちゃんと想い合っていたはずだ。それは揺ぎ無く、そして、ちゃんと帰って来る。俺が死んでも」

「…………」

「惜しいことしたな。正直ちょっと揺らいだけど。君は口が悪くて、馬鹿だ。俺は君と旅は出来ない。俺はいつだって、待つのが仕事だ。占い師としても、ただ一人の人間としても。そして此処に俺は居る」

「お前が決めなくて、誰が決める。お前が出なくて、勝手に勇者が決まって良いのか」

「ああ。別に?」

「いいや。お前はそうは思ってないね。絶対思ってない。ならなんで、そんなカード作った。わざわざカードを作って、占いたくて仕方ないんだろ」

「…………」

「俺が探すよ。本物のカード」

「…………君なんぞに見つけられるものではない」

「見つけたら」

「…………なら俺を倒してみせろ。そうでなければ意味は無い」

「………………だな。良いよ。やってやる」

「意気込みだけは立派だがな」


「【魔法使いの勇者】を召喚する」


 【魔法使いの勇者】 属性【黒】


「はぁ……。つまらねぇな……。白。【暗夜流星(あんやりゅうせい)】 黒属性の魂の火力を800上げる 赤で【美禍闇(みかやみ)】 【苦虫佃煮丸薬にがむしつくだにがんやく】 【秋恋謳歌(しゅうれんおうか)】 【蝶扇子(ちょうせんす)】」


「あれ……あのぉ……」


 瞼を降ろしているくらい暗い夜の中に煌めく一筋の星が、大地に美しくも悍ましい災いを齎した。僅かな食料を頼りに生きる者は愛する者と儚い歌を奏で、その魂は蝶となり大地を照らす。


 そんな高丸を取り巻く領域の中央に立つ猫娘は、空のカード全てが空の思うがままに動いたとしても届き得ない神にも等しく視えた。

「全部通常効果だ。……やっぱり、当たらないもんだ」

 ただそれはあくまでも、火力の話だ。【蝶扇子】 猫娘専用のカードとして存在し、それは猫娘の火力を倍に変えるもの。火力は既に5000を越えていた。更には【苦虫佃煮丸薬】の効果によって、火力はより向上し、そして、猫娘の消費していた火力を全て取り戻している。既に、攻撃態勢に入っていた。


「本物のカード使ったら、もっと凄い?」

「さぁな」

「お前、なんで当たらなくなったんだよ。何か原因くらい分かってるんじゃないの?」

「……実はな。それがさっぱり分からないんだよ」

「分からないまま終わって良いわけ?」

「ああ。構わない。もう良い。俺は疲れた」

「枯渇するんじゃないか? 才能ってやつは」

「才能と来ましたか……。フケを落としたら何か変わるよ」

「変わらねぇよ。雑魚が。次は泣き落としか?」

「それも良いけどね。お前はまだ悪路王の誇りを持ってる。きっと元の王よりもずっと。初代が認める王だった。これは、俺の占いだ。喜べ」

「【攻撃(だまれ)】」


「【秘伝忍術(ひでんにんじゅつ) 畳返(たたみがえ)し】!!!」


「…………へぇ」


 その時、高丸の視界にも確かに視えた。一枚の畳如きが、猫娘の猛烈な攻撃を防ぎ切り、背後に待つ勇者がナイフを投げて反撃行動を取ったのだ。それは猫娘の胸を貫く。


 【妖怪 猫娘】 消滅。


 空は視た。死に逝く猫娘の右手に握られる、【魔法使いの勇者】に酷似する藁で作られた人形の姿だった。握り締めると同時、空の身体が軋むほど圧迫される。


「ぐっ!! なに!!」


「【闇夜道連藁人形やみよみちづれわらにんぎょう】 消滅と同時に、相手も一緒に消滅する」


 【魔法使いの勇者】 消滅。

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