幻視
「まず二刀流の勇者の能力発動。火力が500上がる」
【二刀流の勇者】 火力【500/500】
「俺も火力を上げよう。緑の場面から【邪悪光】」
【邪悪光】 属性【赤】 通常効果【魂の火力が500上がる】
【妖怪 猫娘】 火力【500/500】
同じ火力。しかし、ただカードが横たわっているだけの空の領域とは違う。目で視てハッキリと分かる。猫娘は既に火力を消費し、火力は上がれど黒く妖艶なオーラに包まれ火力が上がれど、攻撃が出来るほどの気力は無いらしい。
【攻撃】行動を取った魂は疲労が溜まり、攻撃する事が出来なくなる。よって、この時使用者は魂の回復を謀らなければならない。
「…………」
(緑の場面って事は……。回復待ちかな。畳み掛けるなら今だ)
「青の場面から【炎】」
【炎】 属性【赤】 通常効果【魂の火力が300上がる】
【二刀流の勇者】 火力【800/800】
「攻撃してみよう」
【二刀流の勇者】 火力【800/0】
攻撃があれば当然防御があるとばかり、パキッという音がして、猫娘の前、花形の紋様を象る青く透明な壁が現れた。
「白の場面から【シールド】」
【シールド】 属性【青】 通常効果【相手の攻撃を一度防ぐ】
「それでも良い。青の場面に新たにカードをセット。そのまま使うよ。【雷撃】」
【雷撃】 属性【白】 通常効果【相手に700のダメージを与える】
「700か。まぁ受けるよ。攻撃ではないから消滅はしない」
【妖怪 猫娘】 【500/0】
「畳み掛けるぞ。もう一度、青の場面。【龍衣武装】」
【龍衣武装】 属性【赤】 通常効果【魂の火力が400上がる】
【二刀流の勇者】 火力【800/400】
「緑の場面から【黒霧】」
【黒霧】 属性【黒】 通常効果【相手の火力を500下げる】
黒く淀んだ霧が漂ってくる。頬に当たればタールのようにネットリとしていて、周囲を汚す。
【二刀流の勇者】 火力【700/0】
「そろそろ来るか……。緑の場面から【吹矢】」
【吹矢】 属性【白】 通常効果【相手の場面に配置された呪詛が1枚消滅する】
「今緑に配置したカード。そろそろ回復カードが来てるんじゃない?」
「……残念。【雷鎚】だ」
「…………まぁ良い。それも貴重な攻撃カードだもんね」
「そして赤から【仄香】」
【仄香】 属性【緑】 通常効果【魂の火力が600回復する】
【妖怪 猫娘】 火力【500/500】
「な!? 来てたのか……」
「ブラフってやつだ。【攻撃】」
【妖怪 猫娘】 火力【500/0】
一息に扇子を広げる猫娘は残像を残して霧の中に身を隠す。空の背後から突如現れ、その背中を爪が裂く。
「痛った!!」
そう感じてしまうほど猫娘の肉球から現れた爪は刃の如く血を纏っている。実際に斬られた。そう思って身体が仰け反った。
馬が急な曲がり角を猛烈な速度で走っているところを見ていれば、自然と身体が傾いてしまう。
人が痛がっているところを見れば何故か自分も同じ箇所が痛む。
失ったはずの腕がまだあるような気がして、失った当時の痛みを未だ感じる。
銃を発砲されたが、空砲だった。しかしそれでも人は死を想起し、死ぬこともある。
カードゲームをやっていれば受けたダメージを肌で感じる事などままある事だ。
背中から血が出ているような気がした。流れ出る液体を感じ、血の臭いすらもする。だが触れてみれば一瞬手のひらに血液が視えたが、顔を振ってみればそこに血液など存在しない。【幻視痛】と呼ばれる現象である。
【二刀流の勇者】 消滅。
「お前、なんでそんなに強いのに、当たらないなんて言うんだよ」
「俺が知るか。当たらないものは当たらない。……本当は今日は雨が降るはずだった。俺は此処で彼女と共に死ぬのが俺の占いだった」
「今日はピーカン。彼女は生きてる。ちゃんと。お前の、昔のお前の占いを信じて生き延びた。お前が探しに行ってやるべきだ」
「俺はな」
「お前はちゃんと伝えたのか。ちゃんと。好きだって」
「…………」
(意識くらい飛ばす気で攻撃したんだがな……)
「ははぁーん? 分かったぞ?」
痛みを堪えながらも空は、煽る事を止めない。
「お前、捻くれ者だから諦めたんだろ。王子様に盗られちゃって」
勝利へのビジョンなど全く無かったが、彼を揺さぶる事で何かが変わる。そう思えてならなかったのだ。そしてその言葉は覿面だった。
「!?!?」
溢れ出す瘴気。灰色の無機質な瞳が一点の殺意を以て空の胸を突き刺す。少なくともこの世にこれ以上悍ましいものがあるとは信じ難い。故に、これは魔王を凌駕する存在であると、空は確信する。




