侵攻
【魂】の召喚を終えると、【呪詛】と呼ばれるあらゆるカードの中から選出した60枚で構成される【山札】から1枚ずつ引き、魂を囲む形で5枚、【場面】と呼ばれる枠に配置する。それぞれの場面には属性が備わっている。
魂の右に【赤】 左に【青】
赤の下に【黒】 青の下に【白】
魂の下に【緑】
必ず上記の順番で配置しなければならない。
「カードセット」
「カードセット」
これで全ての準備が整う。此処から先は純粋な殴り合いだ。このゲームに【先攻】【後攻】などという概念は存在しない。相手よりも早く行動し、相手魂よりも高い火力で攻撃を与える事で魂は消滅する。少しでも行動が遅れたらそれはもう、馬乗りになって殴り続けられるようなものだ。
魂の持つ固有な【能力】
呪詛が宿す異彩な【効果】
これらを駆使し相手が持つ全ての魂を消滅させることで勝利が決まる。
これがTCG【LOST】
「俺が勝ったら、お前は俺とこの村を出て、【勇者】になる為の旅に出る」
「君は良い勇者にはなれるだろう。だがそれを導くのは俺じゃない。だからもう俺の事は放っておけ」
「目の前にある命を放って置くなんて、勇者のやることじゃない。俺がお前を導く。だからお前が俺の道を照らせ」
「もう遅い」
「!?」
赤い光が浮かび上がって、猫娘の周囲を走ると火が灯る。幾つもの炎が宙に揺らめき、その光は猫娘を照らし彼女に対し火力を与える。
「黒の場面から呪詛を発動する。【炎】」
【炎】 属性【赤】 通常効果【魂の火力を300上げる】
【妖怪 猫娘】 火力【300/300】
「たった300じゃないか。俺もだ。緑の場面から【闘気】」
【闘気】 属性【赤】 通常効果【魂の火力を500上げる】
【弓使いの勇者】 火力【500/500】
相手を倒すに十分な火力であると判断したか、空が宣言する。
「小手調べだ。【攻撃】」
「猫娘の【能力】発動。相手の火力を300下げる」
彼女の舞いは、相手の視覚を翻弄し、艶やかな炎と共に籠絡した。
【弓使いの勇者】 火力【500/200】
「攻撃は受けよう」
魂は全身全霊を以て攻撃する。よってその時、火力の全てを消費する。
【弓使いの勇者】 火力【500/0】
【妖怪 猫娘】 火力【300/100】
僅かにダメージを負ったが、猫娘は健在。未だ戦意は潰えない。故に高丸が宣言する。
「【攻撃】だ」
扇子を広げて一度風を撒けば花の香りがした。赤い花びらが渦巻き空の全身を包み込むと、風に乗る高速の斬撃が襲う。
【弓使いの勇者】 消滅。
頬、肩、腹部、花びらが掠めた箇所がジンジンと痛み、熱を発する。触れてみると、指先に血が、一瞬だけ視えた。それは幻覚と言ってもいいほど鮮明だったが、気のせいだ。カードゲームをやっていれば、食らったダメージを肌で感じるなどままあることだ。
誇らしげな猫娘が胸を張り、両手の扇子を広げて地に落ちた花びらを風で掬い上げる。
『まさか……』
女の声が聞こえた。猫娘が艶めかしく瞳を細めニヤける顔を扇子が隠す。
『その程度の実力で、勝つ、と?』
美しい女が笑いながらそう言った。脳裏に直接響き渡る声がこびり付く。
「ッコイツ……」
(あんな出来損ないのカードで……。占ってやがる……)




