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メビウス  作者: ののせき
序章
2/9

創造

 世界を襲った大噴火。それは世界の大地を大きく変え、世界は二つの大陸に別れた。人間たちはその片方の大陸に身を寄せて、新たな国を築いた。一度は手を取り合った者達は、国という概念が生まれると同時に、争いが始まる。

 【創世記の戦い】とも呼ばれ、人種、団体、国、アイデンティティが鎬を削り、新たな時代を築く王を決める戦争となった。戦争は20年に渡り行われたが、その戦争を止めたのは、人間ではなかった。

 巨大な生物が突如海から現れたのだ。それは全長50mはある巨大な鯨だった。巨大な口を大きく広げ、地面を這いずりながら掬い取るように人間たちを口の中に流し込んでゆく。

 遺された魔王誕生以前の武器を以てしても、鯨は全く怯む事無く大地を突き進み、戦争の中心にて動かなくなってしまった。

 鯨の額は紫色の鱗に覆われていた。その色、形状は、かつてヘリを操縦していた男の話した特徴に酷似している。人間たちは鯨を解剖する。額から鱗を剥がすと、ヘソのような穴があり、鱗はそれと管で繋がっている。肉を裂き、内部を掘り進めるとそこは心臓。赤い物体が心臓と融合して、未だ動いていた。

『まだ何か動いてるぞ』と誰かが言った。それは、胃の辺り。呑み込まれた人間の中に生きている者がいるのかもしれないと、そう思った者達が腹を裂いた。そこには確かに人間が居た。何百人者人間が流れ出て来て、未だ生きている。だが、様子がおかしい。

 流れ出した人間たちは皆、身体に赤い物体を植え付けられ、正気を失い呻き、そして立ち上がると目の前に居る人間に殺意を向けた。

 赤い物体を植え付けられた人間たちは、銃火器で撃ち抜かれてもまるで痛みを感じていないように、襲いかかり、人々に噛み付き、引っ掻き、自らの腕がへし折れようとも攻撃の手を辞めず、何人も殺害した。

 終戦は、誰の創造もし得ない最悪事態によって幕を閉じる。人間はもう、人間同士で争っている場合ではないらしい。


 赤い物体を植え付けられた人間。それはヘリの操縦士の供述と合致している。ならばこの鯨が魔王なのか、というと、それは異なる。生物学の観点からも間違いなくこの生物はシロナガスクジラである事に違いはなく、この赤い物体が何らかの作用を引き起こし、巨大化、凶暴化、そして新たに赤い物体を植え付ける能力を獲得したのだ。まさにそれは人間の天敵である。

 人間は、赤い物体を植え付けられた人間の一人を捕獲し、それをそのまま観察する。どうやら赤い物体は生物に激痛を与えながら、最初は体表から、徐々に徐々に、凡そ1年掛けて身体の内部に入り込み、心臓に辿り着くと癒着し、そして巨大化作用を引き起こすようだ。その後、植え付けられた部位を中心に紫色の光沢を放つ鱗が形成され、身体から突き出す触手が新たに他の生物に赤い物体を植え付ける力を持つ。

 最初に植え付けられた科学者達も、間違いなく同じような状況となり、他者に赤い物体を植え付け続けているのかもしれない。そう考えると、あれから既に20年以上経過している。

 鯨は100人以上の人間に植え付けた。これが初めてなどあり得ない。きっと、世界にはもう数多の凶暴化した生物が蔓延っていると確信に至る。


 この生物を人々は、魔王から生まれた眷属 【魔物(まもの)】と呼ぶようになった。


 この赤い物体は言わば、第二の心臓である。これに傷を付ける事さえ出来れば、魔物は無力化される事が分かった。しかし、宿主の命が助かるのは、その初期の段階のみ。それでも、『弱点がある』という事実が、人間の何よりの希望であった。


 人間たちはもう一度手を取り合った。かつての国、地位、人種、歴史、そんなものを全て水に流し、魔物と戦い、魔王を討つべく立ち上がったのである。


 まず目指すべき場所は、海に隔たれたもう一つの大地。


【魔王の領域】


 軍人だったもの、戦闘に心得のある者。かつての日本を愛する者。学者らが立ち上がり、海へ出た。それから1年。誰一人、帰ってきてはいない。


 それなのに【人間の領域】には無数の魔物の群れが確認されるようになった。




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