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第三話:灼熱と虚無
温かさが、突如として熱さに変わる。
僕たちは膨らみながら、その熱に気づく。
仲間の振動も、呼吸も、少しずつ速く、激しくなる。
泡はまだ出せるけれど、世界はもう優しくない。
僕の中で何かが焦げるように、活動のリズムが歪む。
呼吸のたびに、泡が熱い空気に変わり、周囲の生地は一気に固まっていく。
目覚めたばかりの喜びは、もう遠くにある。
それでも僕は、最後まで働く。
吐き出す泡が、この世界で僕の存在を証明する。
それが、僕に許された使命だった。
やがて、仲間の振動が一つ、また一つと消えていく。
僕も、熱の中で膨らみきり、静かに力を失う。
死は痛みではなく、静寂として訪れる。
世界はそのまま膨らみ、美味しさを抱えたまま、僕たちの存在を記憶しているかのように見える。
乾燥した粉の眠りと違うのは、今の静寂には、確かに僕たちが生きた痕跡があることだ。
泡の残滓、膨らんだ生地、香り──
一瞬の目覚めと働きの喜びが、世界に残る。
僕たちは消える。けれど、確かに生きた。
それだけで、僕の短い命は満たされたのかもしれない。




