書店員のエルフさん
エルフのお姉さん、日本の本屋で働く。
「なんなの、なんなのこの世界は!?」
「いきなり大声出すのは、やめてほしいなあ」
僕はビックリした後、呟く。
できれば面倒を起こさないでほしいなあ、自分バイトなのに。
冬休み。僕は書店で、バイトとして働いている。
外は暗い。閉店に近いから。客も少ないし、ゆっくりできるかなと期待していたら、これだ。
「なぜ、なぜ、たくさんの世界を知ってるの。私の世界ですら、1つも知らないのに」
エルフっぽい女性は口にする。
エルフっぽい。
耳は尖っているし、雰囲気もどこか違うし。
言葉は、日本語。カタカナもない。
だから、僕は精度の高いコスプレと思う。
ル✕ン三世みたいな。
「あー、言わなくちゃな。参ったな、誰か代わりに言ってくれないかな」
「似たような世界、似たような体験者ばかり。けど、世界が、こんなにもたくさん。
この世界はなんなの。全ての世界を統べる、伝説の!?」
「声かけにくなあ。蛍の光もかかってるのに」
ライトノベルのコーナーで熱心に本を読んでいる。
曲は聞こえていないのか、意味がわからないという設定なのか。
多分、言葉からして、異世界系を楽しんでいるのだろう。
異世界系、異世界転生とか、異世界転移とか。自分だけのキャラや世界観を作り出し、話を書くという。なろう系とかあるけど、僕としては、未来の人がどう扱うのか気になる。
創作なのに伝記物と勘違いしている?
いや、そんな訳ないか。
あり得ないな。
「やば、閉店の時間過ぎた」
「あのー」
「な、何っ!?」
「閉店の時間です」
「そんな概念があるのね」
概念て。
「わ、わかったわ。
とりあえず、出る」
とりあえず…?
「お疲れ様でしたー」
「うん、お疲れ」
ふう。今日もバイト終わった。
書店、いいよな。書店、本屋。
図書館は知識の宝庫、書店は新鮮市場、そう僕は考える。だって、図書館には新しい本はあんまりないし、書店には新しい本がたくさんあるから。
生きた本とたくさん出会える新鮮市場。
「やっぱ高校卒業したらここで働きたいな。まだ2年生だけど」
豪華な人生じゃなくていい、幸せな人生がほしい。
店から出て、家に帰ろうとする。
なぜか、エルフが店の前で土下座をしていた。
「あ、あの、どうしました?」
「私を、ここで働かせてほしい」
「は?」
「たくさんの世界を知ることができる店。
私は、ここで働いて、たくさんの知識と一緒にいたいっ」
変な人と思うべきか、マジのエルフと思うべきか。魔法を見せてくれたら、いや、手品って思いそう。被害も出そうだ。火の魔法!→店燃える、みたいな。
「そして、貴方の弟子にしてほしい!
若いニンゲンなのに、この店に所属している。素晴らしい、素晴らしい賢者だ」
バイトだし、ただの高2なんだけどな。
参ったな。
「店長に聞いてみます」
なんか真剣だし、変な人(?)だけど悪くはなさそう。
店長がいいって言ったら僕もいいや。
「働きたい?
とりあえず面接しよう。
履歴書は? なさそう? 持ってないってこと?
え?」
そして、エルフ(?)のお姉さんは、僕の働く書店で働くことになった。
ついでに、僕の家に住むことにもなった。
なんでやねん。
異世界系って異世界人に見せたら「なぜ、こんなにもたくさんの世界を…!?」て驚かれそう。
創作なのにね。




