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溶解  作者: 歩く魚
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三山凌央くん*失踪事件2018年8月13日

三山凌央くん失踪事件2018年8月13日

 

 三山凌央くん。彼が忽然と姿を消してしまったのは2018年8月13日の月曜日のこと。

 この日、笹塚周辺に住んでいた三山さん一家は買い物のために近所の大型スーパーに向かった。父の育史さん、母の美智子さん、そしておそらく凌央くんにとってもなんの変哲もない一日であり、これから起こる出来事など予期していなかっただろう。

 自営業者である三山さん夫妻は時間の小回りがきくため、夏休みを迎えてしばらく経った凌央くんと触れ合う機会も多く、当日も夕方に育史さんの運転する車でスーパーに向かう。事件は、そのスーパーで起こった。

 スーパーに到着したのが午後四時すぎ。車の駐車を確認するや否や、凌央くんはいち早く扉を開けて飛び出す。続いて、それを追うように美智子さんが車を降り、しっかりと戸締りをした後、育史さんがアスファルトを踏んだ。

 美智子さんはスーパーの入り口から10メートルほどの場所で凌央くんを捕まえて、夫の到着を待ち、三人でスーパーに入店したらしい。

 スーパーに入ってすぐ、凌央くんはお菓子売り場へと走った。この年代の子供がスーパーで楽しめる場所といえば、味覚的にも味覚的にもお菓子売り場だろう。凌央くんに先行させつつ、美智子さんはゆっくりと後ろをついていく。この間、育史さんはメモを見ながら買うべきものを確認していた。

 スーパーの商品陳列的に、育史さんのいる場所からお菓子売り場まではほぼ一直線で、十秒ほどあれば辿り着くことができる。だが、夫婦は普段、食料品売り場を経由して、最後にお菓子売り場へと向かう。つまり、大きく迂回するルートを辿っているため、凌央くんはそれをなぞる形になり、育史さんの視界から外れてしまった。

 育史さんが惣菜の列に差し掛かる頃、焦った様子で美智子さんが戻ってくる。美智子さんは「凌央がいないの!」と告げると、再び急ぎ足で店内を探し回る。その場に買い物カゴを置き、育史さんも捜索に加わる。しかし、そこから夫婦の顔に笑顔や安堵が浮かぶことはなかった。


 午後四時二五分。夫婦は商品の陳列を行っていた店員に声をかけ、すぐに凌央くんへのアナウンスが流れ出した。

 その後、誘拐事件を危惧した彼らによって警察への通報が行われ、警官立ち会いの元、事件前後の店内監視カメラの確認が行われたが、その時間帯に店を出入りした子供はいたものの、どの子も顔がしっかりと確認でき、いずれも凌央くんとは別人。そもそも、凌央くんと思わしき子供が入店する様子も映っていなかった。

 警察は凌央くんの存在自体に疑問を感じていたが、あまりにも三山さん夫婦が取り乱していたため、失踪の可能性を探るために警察犬を導入。実際に、警察犬は臭いを辿って店内へと入って行ったが、ウロウロするばかりで進展はなかった。

 また、育史さんが置いていった買い物カゴはその日の終業まで放置されていたが、一度だけ一人でに、何か軽いものがぶつかったように地面を滑っていったが、原因は不明だ。


〇〇〇〇小学校


 凌央くんが通っていたとされる〇〇〇〇小学校に聞き込みにいったが、彼に関するパーソナルな情報は得られなかった。

 彼の所属する2年2組の生徒、教師の反応は二つで、「凌央くんのことは知っているけど話したりはしない」「そもそも凌央くんのことを認識していない」だった。

 また、小テストの答案など、彼の人となりが少しでも読み取れそうな情報を提供してもらったが、何故か凌央くんは全てに名前を書いておらず、点数は平均的だった。

 得体の知れない気味の悪さを感じた警官は、るくんのクラスにいじめがあったのではないかと推測。定期的にクラス内で行われている「匿名でいじめを告発するアンケート」を確認したところ、三十四人いるクラスメイトのうち三十二人の提出が確認され、どれもいじめに関する言及はなかった。

 警官は、三山夫婦がどのような反応をするか重い足取りで彼らの元へと向かったが、報告を聞いた夫婦は呆然と返答するばかりで、程なくして署へと戻る。以来、夫婦が凌くんの捜索を依頼することはなく、未解決事件として扱われることとなる。


※文中の名前間違いは誤字ではありません

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