尾崎吉樹くん失踪事件1995年3月25日
尾崎 吉樹(当時5歳、男) 新潟県〇〇市 1995年3月25日
事件概要
自宅前にて、母親が目を離した10秒のうちに姿を消す。
3月25日、吉樹くんは昼過ぎに母親と公園に行こうとし、母が靴を履いている間に、半開きだったドアから外出した。その10秒後、母親が外に出ると、吉樹くんの姿がなくなっていた。家の目の前は歩道、次いで道路になっていて、母親は吉樹くんが車に轢かれていないか心配で飛び出すも、近くには車どころか歩行者すら見えなかったという。彼女はすぐに警察に通報し、警察犬も出動。警察・消防・地元市民による大規模な捜索を行ったものの行方不明。
テレビ出演
この事件は全国のテレビ局で大々的に取り上げられ、「神隠し」と形容されることが多かった。実際、家から出てどれだけ急いだとしても、10秒の間に尾崎宅から完全に視界を切るのは不可能に思えるからだ。
この不可解な事件の糸口を探るため、父親の良行さん、母親の真理子さんは5年の間に15回のテレビ出演を果たし、情報提供を求めた。
しかし、残念ながら信憑性の高い証言はなかった。
不審な電話
テレビ出演を行うかたわら、尾崎家に不審な電話があった。それは「尾崎吉樹の兄」を語る人物からであった。先に述べておくと、尾崎家の子供は吉樹くん一人であり、兄はいない。しかし、電話口にいる相手の声は明らかに少年のもので、吉樹くんが成長したらこのような感じだろうと感じさせたという。彼は電話で「明日、学校の授業参観があるんだけど来てくれる?」と言った。真理子さんは戸惑い、気味の悪さを感じたものの、吉樹くん発見につながる糸口だと思い「わかった」と告げた。
授業参観
吉樹くんが通うはずだった小学校では、直近の授業参観はなかった。真理子さんは周辺の小学校全てに電話をかけて聞いたものの、該当するものはなかった。そのため、真理子さんは電話内容をイタズラだと判断して行動をやめたが、翌日。もう一度「兄」から電話がかかってくる。真理子さんが受話器を取った瞬間、低く唸るような音が響いてきた。何事かと思った真理子さんがゆっくりと耳を近づけると、それは少年が発している音だった。彼は「どうしてきてくれなかったの」「僕は待ってたのに」と矢継ぎ早に真理子さんを非難すると、真理子さんの返答を待たず、一方的に電話を切った。恐ろしい体験に心が折れそうになった真理子さんは、うずくまりながら「あの子を返して」と涙を流した。すると、家の扉に何かがぶつけられる音が二度して、ようやく扉を開けた真理子さんが見たものは、地面に落ちた二本の歯だった。この歯をDNA解析した結果、吉樹くんと一致した。
超能力による捜索
2000年に尾崎夫妻があるテレビ番組に出演した際、番組はアメリカから超能力を用いる捜査官を呼び寄せた。捜査官は二時間にわたる瞑想の末、自ら紙とペンを持って、現在の吉樹くんの似顔絵を描いてみせた。それは、尾崎夫妻が涙を流すほど真に迫ったものであり、捜査官は「吉樹くんはまだ生きています。理由はわからないが、日本を転々としている」と述べた。この番組が終了してから、吉樹くんの目撃情報が多く寄せられた。
目撃情報
・2000年の目撃情報
「神奈川県横浜市の地下鉄で、吉樹くんにそっくりの男の子を見た」
この証言を聞き、真理子さんは横浜市に向かった。そして、地下鉄各駅の駅員にビラ配りをしたところ、何度かこの子を見たことがあるという情報を得ることができた。そのため、真理子さんは1週間、毎日地下鉄の改札で張り込みをしていたが、吉樹くんは現れなかった。
・2001年の目撃情報
「大分県別府市にて、吉樹くん似の小学生くらいの男の子が一人で夜道を歩いている」
この情報だけでは信憑性は十分でないものの、良行さんは現地へと向かい吉樹くんを捜索した。すると、彼が事件当日に履いていた靴と同じものが道端に落ちていた。DNA解析をしたが、一致しなかった。
・2003年の目撃情報
「中学生の子供が夏休みに一緒に遊んでいた子達の中に、吉樹くんに似た子がいた」
これに関しては、情報提供者が子供の親を探そうとしたが、そもそも誰もが素性を知らず、子供達でさえ「誰かの友達」だと思い接していたことが判明。また、その子は半袖を着ていたそうだが、腕には切り傷の痕が無数に残っていたらしい。真理子さんはその情報を聞いて、該当する少年は吉樹くんではないと判断した。
・2003年の不審な電話
ここまでの情報は、随時前述のテレビ番組などで視聴者に共有されていたが、ある日、真理子さんに電話がかかってきた。電話の主は「兄」ではなく「吉樹くんを誘拐した男」と名乗り、彼は「吉樹くんはもうとっくに殺して埋めている」と言って電話を切った。これをイタズラ電話だと思った真理子さんは、真面目に取り合わず、この電話があったことも2010年に発表している。
・2004年の目撃情報
これは真理子さん自身の情報である。この日、真理子さんが自宅で家事をしていると、扉が二回ほど叩かれた。不審に思った真理子さんが覗き穴から確認すると、その場を離れようとしている少年の後ろ姿を見た。もしかすると吉樹くんかもしれないと思った真理子さんは急いで扉を開けるが、すでにそこには誰もおらず、歩道に出ても影も形もなかった。しかし、その足元にはカッターナイフが落ちていた。真理子さんはこの出来事について「吉樹が私に何かを伝えようとしているのかもしれない」と述べていた。
その後
尾崎夫妻はその後も吉樹くんの捜索を続け、一時期はかなり近付いていたとも言える。しかし、その甲斐も虚しく2018年に真理子さんは心労がたたり倒れ、その翌年に良行さんも心筋梗塞で死亡。吉樹くんの捜索は打ち切られることになった。




