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溶解  作者: 歩く魚


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14/30

鶴見大学生殺人事件

令和4年4月4日(月曜日)午前2時から午前5時30分ころまでの間、鶴見区に住む男子大学生、加藤慎平さん(20歳)が殺害された事件。


慎平さんの遺体は、彼が住んでいる鶴見区のアパートから最寄り駅までのちょうど中間に位置する場所で発見された。また、うつ伏せに倒れている慎平さんの横に倒れた自転車があることから、通学中に襲われたものと思われる。


しかし、殺害時の状況には少し不自然な箇所がある。


まず、慎平さんの直接の死因は刃物で喉を掻き切られたことによる。頸動脈が切断されると血液が高圧で噴き出し、数十秒~数分以内に失血死する。人間の血液量は体重の約7~8%になるが、頸動脈が切れると1分間に1.5リットル以上の血が失われるため、急速に意識を失うためである。しかし、アスファルトに付着するはずの彼の血液が、一部不自然に拭き取られている。というよりも、他の何かに付着したことで、アスファルトに到達しなかったように見えるのだ。これはつまり、犯人は慎平さんを正面から切りつけた、または背後から狙った後、わざわざ正面に回ったことになり、さらに身体中に血を浴びたまま姿をくらましたということだ。だが、近隣住民から血だらけの男を見たという証言は得られず、近くの監視カメラをチェックしても、該当する人物は見られなかった。


そもそも、自転車が慎平さんの真横に置かれているという状況、彼自身に他に傷がない点も不可思議である。自転車に乗っている状態で襲われるなら、確実に身体のどこかには擦り傷ができるはず。しかし、慎平さんは喉以外は無傷である。これは、犯人が慎平さんの知り合いであるという可能性を極めて高める要素である。だが、彼の知り合いであるなら、通学中ではなく彼の家で襲う方が人目につかないのではないだろうか。そう考えると、犯人像がまたボヤけてしまう。


唯一、犯人が男であると決めることができる情報がある。事件当日、慎平さんはワイヤレスイヤホンで音楽を聴きながら自転車に乗っていたようだが、殺害時に彼のスマートフォンが流していた曲と同じものを、彼ではない男が大声で歌っていたという証言がある。情報提供者は現場を見たわけではなく、たまたま近くを歩いていた時に聞こえたらしい。犯人像の特定には至らなかったが、犯人は極めて猟奇的な思考の持ち主かもしれない。

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