表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

第8回『トラベリング・パンツ』 (アン・ブラッシェアーズ著、大嶌双恵訳、発行:角川文庫)


この本もタイトルに惹かれました。


旅するパンツ?


表紙にはブルージーンズの写真がドンと大きく載せられています。


メチャ興味が湧いてきて、すぐにページをめくりました。


主な登場人物が紹介されています。


・カルメン…性格は父親譲りで優しく、体格は母親譲りでぽっちゃり。両親は離婚。


・レーナ…ギリシャ人の母親を持つ美人。明るい性格の妹と対照的に、内気でひとりが好き。


・ブリジット(ビー)…背が高くてスポーツ万能。勝ち気で積極的だけど実は繊細な心の持ち主。


・ティビー…やせっぽちでマイペース。他人に指図されるのが苦手。ペットのモルモット(ミミ)が宝物。


これで、4人の女性の物語ということがわかりました。


ページをめくると、プロローグが始まります。


特別な力を持つブルージーンズのお話しと書かれています。但し、新品ではなく、古着屋で見つけた中古品です。


3ドル49セント(今1ドルが147円くらいなので、513円ほどでしょうか)で、カルメンは試着もしないで買ったもののようです。


でも、4人がカルメンの家に集まった時、偶然にもみんなの目に止まり、順番にはいてみることになりました。


すると、どうでしょう。

ピッタリなのです。

どんな体型にも合うのです。

正に、魔法のパンツと言ってもいいくらいです。

気に入った彼女たちは、この夏休みの間、パンツを共有することを決めます。


        *


4人はアメリカのジョージタウン(ワシントンD.C)に住む高校生です。全員15歳で、大の仲良しですが、今年の夏、初めて別々に過ごすことになります。


カルメンは、サウスカロライナ(アメリカ南東部)のパパ(離婚して別居中)のところへ、

レーナは、ギリシャの祖父母の家へ、

ブリジットは、バハカリフォルニア(メキシコ最北の州)のサッカー・キャンプへ、

そして、ティビーだけは自分の家に残ってアルバイトをします。


彼女たちは、離れ離れになる前日の夜、みんなで集まって、パンツをはく順番を決めます。最初がレーナで、次はティビー、3番目がカルメンで、最後がブリジットになり、一巡したら逆回りに戻すことも決めました。


更に、『トラベリング・パンツの誓い』を立てます。

「今宵、このジーンズに4人組としての愛を捧げる。世界中どこへ行こうと、われわれがジーンズによって愛を受け止めれらますように」と。


使用法も厳格に決定します。それも10項目。


1.ぜったい洗わないこと


2.すそを折り返さないこと、ダサいはき方をしないこと


3.はいている時に、決して自分が太いと思わないこと。口に出さないこと


4.男の子にジーンズを脱がされてはいけない(自分から脱ぐのはOK)


5.ジーンズをはいている時に鼻をほじらないこと


6.再会の時、ジーンズに夏の思い出を刻みつけること


7.夏休み中、どんなに楽しくても、みんなに手紙を書くこと


8.決められた順番でジーンズを送り合うこと。決まりを破った者は、再会の時、尻たたきの罰を受ける


9.シャツを中に入れてベルトをしてはかないこと


10.ジーンズは愛。だから、友を愛し、自分を愛すること


        *


ところで、この書評を書いているバックに流れている音楽はなんだとおもいますか? 

と訊かれてもわからないですよね。

実は、松田聖子のベストアルバムを聴きながら書いています。


何故?

それは、彼女がデビューしたのが16歳だからです。15歳の女の子の気持ちを理解しながら読むためには、普段聴いているジャズを聴きながらというよりも、ほぼ同年齢でデビューした松田聖子を聴きながらの方が最適だと思ったからです。


えっ、

なんです?

おススメの曲が知りたい?

わかりました。

そうですね~、なんといっても『青いサンゴ礁』は外せないと思います。イントロを聴いただけでゾクゾクっとしますし、伸びやかな歌声に惹きこまれます。大好きな人と南の島で過ごしたいという夢が溢れていてハートマーク満載です。


それから、同じくアップテンポの『チェリー・ブラッサム』や『夏の扉』もいいですし、一転してスローテンポの『風立ちぬ』と『赤いスイートピー』もgoodです。


それからそれから、『渚のバルコニー』のかわいらしさには胸がキュンとなりますし、『SWEET MEMORIES』の切ない歌声は最高です。


それからそれからそれから……、


えっ?

いつまで松田聖子の話をしているのかって?

あっ、そうでした。

大変失礼いたしました。

んんっ、

では、顔を真面目にして、本の紹介に戻らさせていただきます。


        * 


カルメンは、久しぶりのパパとの二人だけの時間を楽しみにしていました。しかし、現地で待っていたのはパパの新しい家族でした。フィアンセの女性と連れ子二人(女の子と男の子)です。


カルメンはショックを受けます。

何も聞いていなかったからです。

その上、三人とは気が合いません。

楽しいはずだった夏休みが一気に暗く沈んでいきます。


        *


レーナは妹と共に祖父母の家に行きますが、そこで、ハンサムな男の子に出会います。おばあちゃんの大のお気に入りの、近所に住むコストスです。

彼は秋にロンドンの大学に行くことが決まっていて、サッカーのナショナルチームの試験も受けたという文武両道のナイスガイです。


しかし、あろうことか、レーナが裸になって湖で泳いでいる時、彼に見られてしまいます。

それを、後をつけられて覗かれたと勘違いしたレーナは「コストスはちっともいい子なんかじゃない」とおばあちゃんに伝えます。

すると、酷いことをされたと勘違いしたおばあちゃんはおじいちゃんに話してしまいます。普段は大人しいおじいちゃんですが、聞いた途端、顔色が変わり、コストスの家に怒鳴り込みに行きます。そして、押し合いへし合いの後、コストスのおじいちゃんと殴り合いのけんかになってしまいます。


思わぬ展開になったことをレーナは悔やみ、本当のこと(ただ見られただけということ)を言わなければいけないと思いますが、それをうまく伝えることができません。その間にも、両家の溝は深くなり、コストスとの関係も最悪になってしまいます。


        *


話はブリジットに移ります。彼女は、コーチ役の男性に一目惚れをします。黒いさらさらの髪と、日に焼けた肌が印象的なナイスガイ、エリックです。


行動的な彼女はすぐに猛アタックを始めます。キャンプでは男女交際が禁止されているのですが、そんなことはまったく気にせず、門限を破って夜のダンス・バーへ行って誘惑したり、彼が宿泊しているキャビンに入って彼を連れ出したり、あの手この手で迫ります。しかし、彼はルールを破ろうとはしません。それでも諦めない彼女は大胆な行動に出て、ある夜、想いを完遂するのですが……、


        *


次はティビーです。彼女は、バイト先で女の子と知り合います。ベイリーです。小生意気で憎らしい物言いに嫌悪を覚えますが、白血病を患っていることを知って態度を和らげます。


ある日、ティビーが自主製作のドクメンタリー映画を考えていると伝えると、ベイリーは手伝いたいと言い出します。カメラマンでも音響係でも助手でも雑用係でも、何でもすると言うのです。


ティビーは断りますが、ベイリーは諦めず、インタビュー相手を勝手に決めて、話をどんどん進めていきます。

そうするうちに、ベイリーがとてもいい子であることがわかり、彼女を受け入れたティビーはベイリーと多くの時間を一緒に過ごすようになります。


しかし、それは長く続きませんでした。感染症を併発したベイリーは病状が悪化して入院してしまうのです。そして、外へ出られなくなります。

ティビーは毎日のようにお見舞いに行きますが、そんな時、ペットのミミの様子が変なことに気づきます。ぐったりしてまったく動かないのです。嫌な予感がして病院へ直行したティビーですが……、


✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧


『トラベリング・パンツ』は4人の女の子が16歳になる直前の夏休みの出来事を丹念に追った物語であり、青くて甘くて揺れる心情が鮮やかに描かれています。正に、ザ・青春がギュッと詰まった小説です。

といっても、青春真っ只中の方だけが楽しめる小説ではありません。少し過ぎてしまった方も、遠い過去のように思われている方も、どなたでも楽しめると思います。15歳の頃に戻って、甘酸っぱい想いを抱きながら読んでみてください。


✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧


作者をご紹介します。

(本の最後に記載されている著者紹介や訳者あとがきから抜粋)


アン・ブラッシェアーズは、アメリカのバージニア州生まれです。コロンビア大学で哲学を学んで、ニューヨークで編集者とした活躍します。その後、作家に転身して、この作品を発表するのです。すると大ヒットし、ニューヨークタイムズのベストセラーリストに1年以上もランクインするという記録を打ち立て、更には、30か国以上で翻訳されることになります。当然のようにシリーズ化され、現在第4巻まで発売されているようです。もちろん映画化もされ、好評を博しているとのことです。


✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧


心に沁みる物語、

救ってくれた言葉、

ヒントを与えてくれたビジネスワード、

心を豊かにしてくれる写真と絵と文章、

そんな綺羅星(きらぼし)のようなエッセンスが詰まった、

有名ではないけれどグッとくる本がいっぱいあります。

そんな素敵な本をご紹介してまいります。


✧ 光り輝く未来 ✧


* * * * * * * * * * * * * * * *


【公開中の小説のご案内】


下記の小説を公開中ですので、併せてお楽しみいただければ幸いです。


『真夜中のディスクジョッキー』~人生の選択肢~《連載中》

『天空の美容室』~あなたと出会って人生が変わった~《以下、完結》

『ブレッド』~ニューヨークとフィレンツェとパンと恋とハッピーエンド~

『人生ランランラン』~妻と奏でるラブソング~

『後姿のピアニスト』~辛くて、切なくて、でも、明日への希望に満ちていた~

『平和の子、ミール』~ウクライナに希望の夢を!~

『46億年の記憶』~命、それは奇跡の旅路~

『夢列車の旅人』~過去へ、未来へ、時空を超えて~

『世界一の物語‼』~人生を成功に導くサクセス・ファンタジー~

『ブーツに恋して』~女性用ブーツに魅せられた青年の変身ラブストーリー~


✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧ ✧



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ