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第63話 信長公の春

時に天正九年の春のことなり。

天下人織田右府信長公の威勢、もはや世の誰かこれを疑わん。

京洛の都には戦のかげ薄れ、ただ中国の毛利、備えを固むるのみ。


しかれば、信長公、思し召されけるは、御馬揃えをしてその武威、天覧に供せんこと。

これ、二月二十八日なり。洛中洛外より兵ども召し集められし騎馬、ことごとく甲冑をととのえ、鐙踏みならして御所の馬場に集まりけり。

その数、二万騎を超え、群集は十三万と云い伝えらる。


天皇、清涼殿を模して設けられし行幸の御殿に渡御なされ、終日その華麗なる軍舞を御覧あそばされけり。

信長公みずから悍馬を駆り、左右に奔りて、槍を取って的に打ち、観衆の喝采、天地を揺るがしき。


この御馬揃え、御製にも「夢のごとし」と詠まれしとぞ。三月五日には、なおも小馬揃えを所望され給ひ、信長公ふたたびその武芸を披露せられたり。


---


されば、応仁より百年、天下の秩序乱れし世に、布武の旗を高々と掲げられしは、この信長公をおいて他になし。


いまや、西には羽柴筑前守秀吉、毛利を伺い、東には徳川三河守家康・滝川伊予守一益、武田を討たんとす。

されど信長公は、ただ静かに京にありて、天下の潮流を見据え、次なる一手を睨まれける。


---


いざや、時は信長のために巡れり。

人の世の栄枯盛衰を知る者、この春を見て、まこと「時代はこの人を中心に回る」と噂せざる者なし。


此の如くして、乱世の霧は晴れ、天下に一つの陽光、さし入りぬ。


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