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第59話 秀吉の播磨攻略

天正五年、羽柴筑前守秀吉、主君信長公の命を奉じて、中国征伐の緒に就かれけり。

そのはじめの矢先は、播磨の国にぞ向かわれける。


されば播磨と申すは、赤松の旧地にして、いまだ信長の威、四方に行き渡らず、国人・豪族、割拠して世の行方定まりがたき地なり。


秀吉、姫路に入りて城を築き、石を積み、濠を掘りて、まさしくこの地に覇を唱えんとせり。


これに応じしは、黒田官兵衛孝高、才知まことに人に優れ、機を見るに敏なり。


「これより先、我らが御為に命を懸けて尽くさば、必ずや新たなる世を拓かん」と、主小寺氏を諫めて信長に帰順せしめ、みずから秀吉の股肱たる軍師とぞなりける。


その頃、三木の城には別所長治あり。

頑強にして剛直の将、信長に抗し、国中の浪士を糾合して、城を枕に戦いを挑みける。


されど、秀吉これを正面より攻めず、三木の出入りを固く封じ、兵糧の道を絶ちては、生ける屍と化すを待たれける。

これを世に、「三木の干殺し」とぞ申しける。


飢えに嘆く城中の声、母の乳を求めて泣く童の声、草木の根をも煮て食す有様、誠に哀れにぞありける。

されど秀吉、涙を呑みて攻め寄せず、じりじりと時を刻みて、ついに三木の城を落とされにけり。


かくて秀吉、播磨を平らげ、次なる標を備前・備中に定めたり。

その歩み、まことに風に乗るかのごとし。


---


この播磨の地の戦い、信長の威を西へと導く礎となりき。

秀吉が智と仁とをもって兵を操り、ついには毛利と雌雄を決せんとする、その序章にして戦国の一節なりける。


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