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春乃太夫の命をかけた恋 その一『初春』

前回の「気ふれの遊女」の話を聞いた時に、かえでは吉原の恐ろしさを初めてさとり今までの天真爛漫な性格から慎重な性格へと変わってしまいました。

その後、かえでが仕えた春乃太夫は優しい性格で二人の禿をとても可愛がり、また信頼もしていました。今回からは数回にわたって春乃太夫の命をかけた恋のお話をしようと思います。

姉の様に慕う春乃太夫の恋の為に、かえでとふじ枝の二人は奮闘します。

「太夫の恋」、どんな結末が待っているのでしょうか?

 本編の主人公である松ノ尾太夫こと、幼名タヅは十才の時に太夫付きの禿(かむろ)に昇進し、名前もかえでと改名した。


 そしてその年十一才の正月を迎えた。

かえでが仕えた太夫は春乃太夫といい、相州屋の看板太夫だった。

春乃太夫は二人の禿(かむろ)を従えており、もう一人の禿(かむろ)はふじ枝といった。

 ふじ枝はかえでの半年先輩だったが、そこはまだ幼い少女同志である。

二人はすぐに仲良くなった。

昼見世と夜見世の間の自由な時間にはじゃれ合いながら笑いさざめき、子供らしく明るく無邪気に過ごしている。

そんな様子を日々間近で見ている春乃太夫にとって二人の存在は心温まる癒しだった。


 通常、禿(かむろ)は日常的に殆どの時間を太夫や先輩遊女達と共に過ごしている。

子供の騒がしさが嫌いな遊女も居たので、心優しい春乃太夫に仕える事が出来たふじ枝とかえでは幸せだったと言えるだろう。

 そんな中でふじ枝とかえでは、春乃太夫の「誰にも知られてはならない秘密」に関する重要な使命をおびていた。


 実は春乃太夫には好き合った恋人がいたのである。

遊女にとって恋人(間夫(まぶ))の存在はご法度だったが、人を恋慕う感情は遊女といえども普通の人間と変わりはない。

むしろ辛い日常を忘れさせてくれる恋人の存在があってこそ、遊女達は苦界と呼ばれる吉原で生きていられたとも言える。


 春乃太夫とその恋人は文を遣り取りしてお互いの気持ちを確かめ合っていた。

以前は小間使いに小銭を渡して文の遣り取りをしていた。

 しかしある時その小間使いの思慮の浅さから恋人の存在が周囲の人に露見しそうになってしまった。

そして「春乃太夫には本気の情を通じた男が居る」と噂になってしまった事があった。


 その時は噂止まりで危うく事なきを得たが、春乃太夫の恋人の事は相州屋の人間には絶対にバレてはいけない。

特に遣手婆のお登喜おばさんに感づかれてしまうと大変な事になる。

 お登喜おばさんの仕事の一つに遊女達の生活管理がある。

もちろん男女の関係の取り締まりの事だ。

二人の仲が分かってしまったら最後、引き離されてしまう。


 なので春乃太夫は愛しい男への恋文を届けて貰う役目を、自らの忠実な世話係りである賢い二人の禿(かむろ)に託したのである。

 それがふじ枝とかえでが担っていた春乃太夫の「誰にも知られてはならない秘密」に関する重要な使命だったのだ。


 まさかそんな大役を子供が行うとは周りの大人達は誰も思わないであろう。

それに楼閣の中や吉原中のあちらこちらでウロチョロする事が当たり前である禿(かむろ)には、それはうってつけの役目であった。


「かえでやん、羽根つきしなんし。」

「あい。あっちの得意なんし。」

 ムクロジの実に鳥の羽を付けた衝羽根(つくばね)を羽子板で叩く度にコーン、コーンと冬の空に軽やかな音が弾いた。

ふじ枝とかえでは羽子板で遊びながら楽し気に笑い、その声は楼閣の中庭じゅうに響いていた。


 今年の正月はまだ雪も降らず暖かい日が続いている。

「コレ二人共、ちっとこっちに来なんし。」

春乃太夫が座敷の縁側からふじ枝とかえでを呼んだ。


「あい。」

二人は羽子板を手に持ったまま春乃太夫の元に駆け寄った。

「コレ、衝羽根(つくばね)もちゃんと拾いなんし。ほおっておいたら無くなってしまうでありんす。」

「あい。すんません。」

春乃太夫は声をひそませて胸元から文を取り出すと二人に言った。

「これ、この文をまたあのお人に渡して来ておくんなんし。誰にも知られぬように渡しておくんなんしえ。」

 ふじ枝とかえでは顔を見合わせて目配せをした。

「あの人は今日は当番の日でありんす。会所に詰めておりんさるだろうから。くれぐれも人に見つからんように渡しておくんなんしえ。」

「あい。」


 二人は会所の様子を伺いに相州屋を出た。

仲之町の揚屋(あげや)や茶屋は正月の門松やしめ縄で飾られており、正月の挨拶回りをする廓の主人やお内儀(かみ)さん達で賑わっていた。

「なんで人がこぉんなに沢山の正月に、ましてやあのお人が休みの日でもありんせん会所に詰めてる日に文遣いにやらすんでありんしょうなぁ。」

「好きなお人を想う気持ちはそんな事関係ありんせんのでしょう。」

やはりふじ枝の方がませていて男女の色恋に詳しいようである。

「はぁ、そんなもんでありんすのかいなぁ。わっちはただ危なっかしくて、ここがドキドキして怖うござりんす。」

かえでは胸を押さえて言った。

「気ふれの遊女」の話を聞いてすっかり慎重で小心者になってしまったかえでにはまだまだ早い男女の機微であったようだ。

「フフフ…。」

ふじ枝は含み笑いをして春乃太夫の恋文を納めた懐に手を当てた。


 春乃太夫の想い人は吉原大門のすぐ横にある吉原会所に勤める銀次というちょっと見た目の良い男である。

吉原会所というのは吉原に出入りする人の取り締まりをする場所である。


「あ、居りんさる。」

ふじ枝とかえでは通りの向かい側の路地の陰に隠れて吉原会所の中の様子を伺っていた。

 銀次は会所の中で上がり(かまち)に座りながら仲間と談笑をしていた。

男気のあるりりしい眉に優しそうな瞳をした好青年である。


 そんな銀次が他の遊女や町娘の誘いに耳もかさないのは、ひとえに春乃太夫の存在があるからである。

しかし太夫に恋人が居る事が相州屋の人間に知れてしまったら、もちろん二人の文のやり取りすら出来なくなり、思いを確かめ合う事も出来なくなってしまう。


 しかも相手は会所の男だなどとは、あってはならないご法度だ。

それどころか足抜け騒ぎにでもなったら吉原中の大事件になり二人の命すら危うい。

その事が充分過ぎる位よく分かっていた春乃太夫と銀次は慎重に慎重を重ねていた。

なのでふじ枝とかえでも重い責任感を持ってこの役割りを行っていたのだ。


「どうしんしょう?あのお人が一人の時じゃありんせんと文が渡せねぇ。」

「そうでありんすねぇ。出て来んさった所を追いかけるしかありんせんなぁ。」

「でも人に見られねえようにしなきゃねえ。」


 二人が小さな声でヒソヒソ話しているといきなり後ろから男に話しかけられた。

「おい、お前らは春乃太夫の禿(かむろ)じゃないかい?二人揃ってこんな所でコソコソ何してるんでい。」

「ぎゃあぁ!」


 二人は急に後ろから話しかけられたので驚きのあまり思わず大きな叫び声を上げてしまった。

「おぉっと!化けもんでも見たような声出すんじゃねぇぜ。おいらの方が驚いちまうじゃねぇか。」

「あ、あい、す、すんません。」

ふじ枝とかえでの身体中からヘンな汗が吹き出ていた。


 後ろから声をかけた男は番所に勤める岡っ引きの市造だった。

番所と吉原会所は吉原大門の左右すぐ横にそれぞれ有り、仲之町を挟んで向かい合わせに位置している。

番所は幕府の置いた監視所で会所は吉原で人の出入りを検問する所である。


「こんな所で何してるんでい?」

「い、いや、何でもありんせん。」

「おめぇさん達はナンにもなくて人の嫌がる番所まで来るのかい?しかも二人してコソコソしてるってぇと…。もしかして春乃太夫の事で何か番所に関わる事でもあるのかい?」

本当の事を見透かされて二人の心の臓はバクバクと大きく波打ち顔は顔面蒼白になっていた。


 どうしんしょう、どうしんしょう…!

ふじ枝とかえでは何も言えずに身体が硬直したままだった。

「…ははぁん…、そうかい。オイラも野暮な事は聞かねえよ。何も見なかった事にすらぁ。だけどまさか春乃太夫が足抜けを考ぇてるってワケじゃああるめぇな?そおなるってぇと話は別だぜ。」


 二人は首を大きくブンブンと左右に振った。

市造は明らかに二人をからかっている。

「そうかい。まぁそうなったらそうでいちでぇじだけどよ。でも気をつけろよ、お前さん達は春乃太夫の看板しょってんだ。迂闊に二人揃って番所や会所の近くでうろつくのは良くねぇな。すぐにこっから捌けるこった。」

「あ、あい。」

二人は一旦その場を離れた。


「ああ、怖うござりんしたねー。」

「うん、凄く驚きんしたー。初めて番所の人に見つかってしまいやんしたなぁ。やっぱり番所や会所の近うで待つのは良うないねェ。もうすぐ昼だからあのお人も昼飯食いに会所を出るでありんしょう。その時に渡しんしょう。」

「そうでありんすね。あたいはもう早う終わらせとうござんす。」

小心者で慎重なかえでは身震いして、文遣いはもう懲りごりだと思った。

しかしふじ枝の方はやる気満々で意気揚々としている。


「ねぇ、ふじ枝やん。さっき番所の市造どんが言っていたとおり、わっちらが二人で仲之町をウロウロしていると必ず春乃太夫の用事かと思われちまいやんす。今までは無事にあのお人に文を渡せてきたけど、これから先は何が起こるか分からねえ。ちょっとやり方を考えなきゃいけねえんじゃありんせん?」

かえでは深く考えてもっと別の安全な方法をふじ枝に提案した。

太夫の恋人が会所に勤める男だなんて誰にも知られてはならない重大な秘密です。

それでも大好きな春乃太夫の為に、かえでとふじ枝はどうしても恋を実らせてあげたいと、幼いながらも策をめぐらせます。

この後、二人が考え出した作戦とは?


ところで、某国営放送の大河ドラマで花魁と客の営みを蔦重が見せつけられるというシーンがあったそうですが(私はテレビを観ないので)、今回新しい情報を得ました。

花魁は客に後から突き上げられる後背位だったそうですね。四つん這いになった時、花魁は着物を着ていたのだろうか?それとも臀部までヌードだったのか?ヌードは女優さんが拒否したのか?私はてっきり花魁が客の上で腰を振る騎乗位だったと勝手に妄想していました。(^_^;)))

なんだ、結局は某元子役の女優さんが同じく恋人の前で客に後背位から攻められる映画(?)のシーンの二番煎じだったのか。(それで恋人に「見ないでー!」と叫ぶ(笑)AVビデオと同じ演出だ(笑))そして今その某元子役の女優さんは今回の大河ドラマで忘八の役を演じている。

これが自分の才を見失った現代の女優さんが辿る道なのか?

結局は女性はいつまでも性を売り物にするしかないのか?

私はそれは個人の選択の問題だと信じてますがね。

それにしても視聴率稼ぎに某国営放送の大河ドラマがAVモドキのシーンを放送するとは情けなくも能がないね。

視聴率の為には恥も知性も創造力も捨ててエロシーンを放映するのか…。

しかし小芝風花さん、デビューした頃はガミースマイルでも可愛いくて好きだったんですけどね。

美人だとか、演技が上手いだの誉めちぎられていますがこれ以降、堕ちて行くのかどうか、見ものですね。(^_^ゞ

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