暴食少女は毒食の魔女に成り果てる
いつも豪華な食卓が嫌いだった。
私は無能で役立たずだから、こんなものを食べてよいような人間ではない。
でも、食べなければ大人たちに怒られるから、頑張って食べた。
どんなに気持ち悪くても、お腹が空いていなくても、食材という物に拒否感を抱いていたとしても。
食べないと、これから食べ物をもらえなくなってしまうと思ったから。
実際食べないでいると、食べ物を減らされてしまったから。
私は、お腹が空いていなくても食べる。
食べたくない物を食べる。
不相応な高級食材を、お金の掛けられた食べ物たちを。
豪華な食卓は、私にとって拷問でしかない。
でも、頑張って食べて食べて食べ続けた。
その果てに大人たちは、私を見て言った。
豚の様に餌をむさぼり喰らうお前は醜いのだと。
これまで餌を恵んでやったのに、何一つ役に立たなかった無駄飯くらいだと。
彼らは見返りを求めて餌を与えていたのだ。
豪華な餌を与えれば、与える程、より大きな見返りを得られると思って。
私にそんな能力はない。
人より見えなくて、聞こえなくて、動けない。
それなのに、どうして望み続ければ望んだ未来が得られると思ったのか。
そして。
そして。
そして。
最後に結局は、餌を取り上げられた。
なら、私はどうすれば良かったの?
生きるために大人たちが望んできたものを、望んできただけ、食べてきたのに。
それを否定されたら、分からなくなるじゃない。
だから食べられなくなった私は、他の人は食べないものを食べて生き延びるしかなかった。
それが私を殺す毒だとしても。
三日後に私を殺す毒だとしても。
確実に明日は生きられるから。