9話目
今日は晴れている。絶好の魔力制御日和だ。
「師匠。もっと魔力送りますよ」
「おいやめろ!! 無理、無理だって!」
「軟弱ですね」
そう言いながら、俺は魔力を生成し師匠へ送る。これで2秒分だろうか?最初は、1秒にも満たない量でギブしていたので、頑張っているほうだろう。
しかし、全く動くことができていないようだし、魔力を貯めるだけで、ほかには何もできなくなっている。師匠なのに、俺よりも魔力制御が劣っているなんてクソだな。
「せめて俺と同じくらいは貯めれるようにしてもらわないと、給料減らしますからね」
「いや! 俺と坊主ではそもそも、魔力の保有できる量が違うだろ! 俺はもう限界を突破しているんだよ!」
「それでも魔導師ですか」
「そういう坊主も魔導師だろ!! 魔法使えねぇのに!!」
「あ、言っちゃいけないこと言いましたね。あと2秒分行きますよ」
「やめろ!!! 爆発する!!」
あの事件から数年がたち、俺は10歳となった。ただ、やっていることは何も変わらず、魔力制御の練習である。
なぜなら、いまだ魔力制御が全然できていないからだ。それでも、結構成長していて、5秒分の魔力であれば、貯めておきながら歩くくらいはできるようになったのだ。
それも、最近は魔力回路が増えているにもかかわらずだ。
そして、一番成長したのは、身体強化の操作だ。
これは一番苦労した。
最初のころは魔力を込め過ぎると、制御できずぶっ飛んでしまったが、今では……2秒分の魔力であれば戦うくらいならできるようになったんだ!
たった2秒? と思うかもしれないが、結構すごいんだぞ?
「ハイハイわかりましたよ」
そのせいで、師匠に魔導師の試験を受けさせられたりしたんだけどな。でも、突然のことだったけど、ちゃんと合格したんだぞ?
試験官全員殴り倒して。
あれはひどかった。試験官は一度たりとも魔法を使うことができなかったんだから。そのせいで3回も再試験したしな。
そのおかげもあって、俺の胸には魔導師を証明するバッチをゲットした。
あとは二つ名ももらったな。本来であれば、魔導師になったうえで偉業を達成しなければいけないらしいが、殴り倒したインパクトが強すぎて、二つ名までもらってしまったのだ。
「はぁ、はぁしぬ」
「早く魔力を戻してください、動かないでいるの邪魔なんですけど」
「辛らつだな!」
「てか、早く俺に魔法教えてくださいよ。魔導師協会に文句言われてるんですけど」
「それは魔力制御できてないお前のせいだろ!」
「師匠が魔法を教えてくれないせいです」
「なら、目の前の庭を見てみろよ! 一か月前教えろって言われて教えた結果があれじゃねぇか!」
目の前を見てみると、なぜかマグマのようになっている地面が見える。一か月前のことなのになんでまだ熱が残ってんだろう?
魔力がたまってなんちゃらって言われたけど、実際見ると面白いよね。
「あれは1か月前です」
「なら聞くが、坊主の魔力出力はどれくらいだ!」
「……0.5秒」
「俺の魔力保有限界よりも多いじゃねぇか!! 無理だよ!」
「仕方ないじゃないですか。魔力が多いんですよ」
「魔力が少ない俺への当てつけか?!」
魔法を使う上で、一番困るのは魔力出力が多すぎるのだ。そのせいで、簡単な魔法でも天地創造してしまいそうになる。そのうえ、最近は魔力回路が増えたから、魔力を生成する最小単位が増えてしまったのだ。
身体強化ならまだしも、外部へ影響がある魔法は使えなくなってしまったのだ。
「魔力出力を減らすか、魔力生成量を減らすかしないと教えることすらできねぇぞ?」
「ふーん。なら、師匠はいらないですね。解雇しましょうか?」
「おいおい! なんでそんな話になる!」
「まあいいですよ。師匠は、師匠でしかないんで」
「どういうことだ?!?! 師匠以上の称号があるのか?!」
「話しかけないで。今から、魔力の出力を調整しますから」
「っち、言われたことはするんだよな」
「では5秒から」
「おいおい!! 5秒からやる必要はないだろ!! グハ!!」
すると俺の魔力に酔ったのか、師匠が倒れてしまった。まあ、修行しているので無視していいだろう。今は、出力を減らすことができないか試さなければいけないからな。
「3秒」
魔力放出する量を3秒分に減らす。ここまでは、簡単にできる。
「1秒」
ちょっと苦しくなってきたな。一度の魔力出力を減らすだけでこんな疲れるなんて……成長というのは嫌である。
とはいえ、魔法が使えないのはそれよりも嫌なので、続けていく。
「0.7、0.6、0.5」
ここが俺の限界だ。これ以上は減らそうと思っても、壁に当たっているかのように減らせない。だが、これを越えなければいけないんだ。
全身の魔力を体内から離さないようにこらえる。
「……無理だ」
これ以上減らしようがないんだが、どうすればいいんだよ。いい魔導師になるには魔力出力が重要なんて言われているが、出力がありすぎても困るんだけど。
もしこのまま、魔法を使おうと思えば、目の前の惨事をまた引き起こすだけ。なら、なんか対策がないといけないんだけど、その対策も、難易度が高すぎる。
「そういうのは地道にやるしかないんだよ」
「あ、復活した」
「今まで、何回やられたと思ってんだ」
「フーン、なら次はもっと強くやらなきゃ。てか、地道以外に道はないの? 空路とか」
「やるなよ?! てか、地道って道のことを言ってんじゃねぇよ!」
「てか、本当にないの? 魔力生成量減らせる魔道具とかさ。それこそ、魔力を封印する魔法とか」
「ねぇよ。そんなのあったら、今頃魔導師はいないぞ」
「そっか、なら自分で作るしかない?」
「できるもんならな。まあ、できたとしても禁法だろうがな」
禁法か……いったん調べてみるのもいいな。それに自分で作る案もいい。
いったん、魔道図書館に行こう。それで、何か手があったら、もっと考えてみるしかないだろう。
幸い、魔導師だから閲覧する権限はある。もし見れなかったとしても、師匠にお願いすればいい。
「じゃあ、調べてくるよ」
「はぁ……魔道図書館に行くのか?」
「そこしかないしね」
魔法に関する本というのは、一部例外を覗いて、所持することは禁止されている。なぜなら、危ないからだ。
ただ、魔法を全面的に規制することはできないから、「サルでもわかる魔法」という本は誰でも見ることはできる。俺も昔読んでた。
だが、基礎的な部分しか書かれていないから、知見を深めるのには向かないんだよな。
「師匠も来る?」
「行くよ。お前を一人にするのは怖い」
「心配しなくてもいいのに。不審者がいても、一発だぞ?」
「お前の心配はしてねぇよ。殴られた不審者の方を心配してんの」
「ははは。面白いこと言うね」
「前に殴って全身の骨バラバラになったやつ忘れたのか?!」
「あれは相手が悪いよ。てか話している時間無駄だから行くよ」
師匠はため息をするもついてくることにしたらしい。じゃあ、俺は先にいっちゃおうかな。
2秒間魔力を生成し、その魔力を全て身体強化の魔法を使うのに使用する。これで、魔道図書館まで、5分もかからないぞ!
俺は地面を蹴り、向かうのであった。師匠を置いて。
「そういうところだぞ!!」
後ろから何か聞こえるが、気にしなくていいだろう。
【魔力だけはあるみたいですよ?~魔法は使えないようです~】を読んでいただきありがとうございます!!
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