8話目
それから数日が経った。
「キャサリンお茶を淹れてくれ、最高級のものを客の数お願いね」
「承知しました」
俺は、なぜかきたアース大商店の客人を出迎えていた。アポもなしで、突然来られたのでびっくり……したが、大方先日の襲撃の謝罪に来たのだろう
なぜ謝罪なのかは知らないけどね。
「じゃあ、話を始めようか。ああ、別に緊張しなくていいよ。今日は父さんはいないからね」
「は、はい!! 私はアース大商店の社長を務めております、トイスと申します!!」
トイスさんは、なぜか声が裏返っている。それに、額にも汗がぎっしりとついており、気持ちが悪い。だが、せっかく来たのだからおもてなしをしなくてはいけないよね日本の心を持つものとして。
「よろしくトイスさん。で、そちらの方は?」
「あ、アース大商店のデデスです!!」
「デデスさんね、よろしくね。ってあれ? アース大商店の社長ってアートロス・グルングとかいう人じゃなかったっけ? ごめんね、アース大商店のことはよく知らなくてさ」
「せ、先日社長が亡くなったため私が代わりにならせていただいています!!」
「そっか、前社長は苦労されたらしいからね。頑張りなよトイスさん」
「はい!」
なぜか一言一言に気合が入っている。そのうえ、俺が目を合わせると、そらそうとしているが、別に取って食うわけじゃないのにね。
「じゃあ今日は何をしにしたのか教えてもらっていいかな? 突然来られたから、何もわからなくてね」
「も、申し訳ございません!! 次からは連絡を入れてから来させていただきます!!」
「いいよ別に。急いでこなきゃいけないような理由があったんでしょ?」
「はい、今回は先日の襲撃が私たちが起こしたことであるため、謝罪に来させていただきました!」
「ふーん」
俺は、キャサリンが入れてくれたお茶を口に含む。最高級だけあって口当たりがいいな。魔導師に出したお茶とは比べることすらできないレベルだ。
「先日の襲撃は、前社長アートロス・グルングの独断で行われたことですが、アース大商店はその責任を負い謝罪させていただきます!!」
「そっか、まあ、アートロス・グルングの独断なら仕方ないよね。とはいえ、うちが被った被害は……えーっと、アース商店? に請求すればいいかな?」
「はい!! われらアースだ……アース商店の責任です!! 全額払わせていただきます!!」
「なら聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「なんでも答えさせていただきます!!」
「聖王国裁判所に賄賂を渡しているって聞いたことあるんだけど……証拠とか持ってない?」
「はい! 所持しております!」
すると、打合せしていたように、デデスさんがカバンの中から、紙の束を出す。そこには、アース大商店の経理資料と、聖王国裁判所の経理資料がそろっていた。
それを見ると、なぜか減っている資金と、それと同額の資金が増えている記載があった。それも同じ日にだ。もちろんそれだけではない。
紙の束を見ると、アース大商店だけではなく、別の大商店の資料までそろっていた。どうやって手に入れたかわからないが……そこにも同じような記載がされている。
改めて、見比べてみると、おかしい部分がたくさんあるな。
「これもらっていいよね?」
「どうぞ!!」
もらった紙の束を、キャサリンに手渡す。キャサリンは戸惑った様子だが、汚れないようにファイルに入れてくれている。
「あと話したいことはあるかな?」
「ありません!!」
「そ、なら帰っていいよ」
「ありがとうございます!!!!」
「失礼しました!!!」
すると、アース大商店の二人は駆け足で帰ってしまった。あんまり、不自然な所を見せないでほしいんだけどな。まあでも、これで正式に、ちゃんとした資料を入手できた。
非正規だと、裁判にかけれないかもしれないんだよな。
だから、何とか正規で手に入れなければいけなかったんだけど……現社長が物分かりよくてよかったよ。
俺は満足げな橋上で、お茶にミルクをたす。勝利の宴だ。
それをみて、キャサリンは我慢できなくなったのか、口を開いた。
「何ですかあの茶番は?」
「茶番? 何言ってんの。しっかりとした正式な面会だろ?」
「旦那様が庭に行かれる数分間の間に、なぜかアレス様が玄関前にいて、そのときになぜかアース大商店がアポもなしに来て、なぜかかたずけられている応接室に入られるのを、茶番と言わずになんというんですか」
「たしかに、はたから見ると変だね」
「先日半日屋敷にいませんでしたよね。その間にやったんですか」
「どうだか」
俺はキャサリンの問いかけをごまかす。俺がやったことは誰にもばれてはいけないんだ。ただ、まあ、キャサリンにはばれるとは思っているけどね。
俺の直近のメイドだし、なぜか勘が鋭いから、嘘が通用しないんだよ。
「はぁ。私は何も言いませんよ」
「ありがと」
父さんがいないうちにやらないといけなかったから、不自然になってしまったようだ。ただ、仕方ないよね。
この面会をする計画を練る時間は全然なかったんだから。
半日の間に、全てを終わらせるのは小さい体では骨が折れるんだよ。でも、結構うまくいった。
前世、上司の背中を見ていたからかな?
「じゃあ、その資料を父さんに渡そうか」
「……そうですね」
父さんは喜んでくれるだろうか?
庭師の仇は打てただろうか?
わからないとしか言いようがないが……俺の心はすっきりしていた。
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