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13話目


 俺が応接室に入ってから1時間がたったころ。やっと魔法王が入ってきた。

 あまりにも待ちすぎて、逆に疲れたよ。いつ来るかわからないから、気は抜けないしね。そのせいで、魔力の鍛錬をずっとしていた。

 師匠も毎日地道にやっていくしかないって言っていたからね。

「待たせてすまんな、非公式の場だから気を抜いていいぞ」

「ありがとうございます」

 入ってきた魔法王は王様らしい装飾はすべて外している。そのせいで、ただのおじさんのように見えてしまうのは幻覚ではないだろう。

 まあ、魔法王も同じ人間なんだなと思う程度だ。

「称号を授けていただきありがとうございます。そのうえ、禁法の閲覧も許可していただき……」

「ははは! あのぐらい別にたいしたことじゃない。つうか王族ならもっと強欲に行け! 俺なんかこの前息子に城が欲しいなんてせがまれたしな!」

「そ、そうなんですか」

 城って、おねだりの規模が違うな。さすが王家だ。俺も侯爵家ではあるが、さすがにそこまでのことは言えないぞ。

「本当だぞ? あいつら欲がありすぎて困るんだよな。俺もアレスみたいな子がほしかったよ……って、そんな話をしたいわけじゃねぇんだ」

「そうなんですか? てっきり、雑談をしにきたのかと」

「そんなわけねぇだろ。そんな時間あるんだったら、側近のやつらが仕事を持ってくるぞ。「あなたは王なのだから!!」って、このまえも息子に魔法を教える時間を作ろうとしたら、どかすか仕事を詰めてきてな……ってまたそれちまった」

「はははは」

 魔法王も毎日苦労しているようだ。

 俺はこんな風になりたくないな……そういえば、父さんも毎日書類仕事ばかりしているな。もしかして、えらくなればなるほど仕事って増えるのか?

 え、嫌なんだけど。

 できれば自堕落に魔法をいじりながら暮らしたい。

「アレンに聞きたいことがあって呼んだんだよ」

「何でしょうか? なんでも答えますよ」

「んじゃ、単刀直入に言うが魔力見えてるよな」

 多分魔力視のことを言っているのだろう。確か、神様が数百年持っている人がいないって言っていたっけ? でも別に隠すしているわないんだよな。

 父さんと母さんには言っているし、キャサリンと師匠にも言っている。

 もしかしたら知らず知らず広まっているかもしれないしな。

「はい。見えてますよ」

「やっぱりそうか……俺と同じ目を持っている奴と生きているうちに会うなんてな」

「もしかして見えるんですか?」

「おうよ! だからこそ、魔法王なんてたいそうな名前をもらっているんだからな」

 神様、数百年持っている人がいなかったっていながら全然持ってるじゃん。

 いや別に、いいんだけどさ。

「便利ですよね魔力視。結界なんかは一目でわかりますし、どれくらいの魔力を貯めているかも一発でわかる。そのうえ、誰がどんな魔法を使ったこともなんとなくですがわかりますから。魔導師が相手だったらなんでも筒抜けです」

「はぁ? 何言ってんだ。誰が魔法を使ったなんてわかるわけないだろ?」

「え、魔力って全員質が違うじゃないですか。テカテカしてたり、ざらざらしてたり……」

「……想像以上だったかもしれないな」

「見えないんですか?!」 

 いやさすがにそれは予想外。

 だって、そういうことは魔法王よりも俺のほうが魔力をよく見ることができるっていうことでしょ? あ、だから、神様は魔力視を持っているひとはいないって言ったのか! 

 見れているというレベルに達している人はいなかったということね。つまり、なんとなく見えている人とかは割といるのかな?

 いや、今魔法王が初めてあったって言っていたな。

「結界ぐらいは見えるがな、さすがに魔力を見るだけでだれが魔法を使ったかはわからん」

「そうなんですか」

「まあでも、これなら称号を与えまくったかいがあったな」

「そうなんですか?」

「魔力を見れるやつを野放しにできるわけがないだろ。称号とか、爵位で行動を制限させるんだよ」

「それ、本人が目の前にいるのに言っていいんですか」

「小僧にいう程度で問題になることなんてねぇよ」

「そうなんですか」

 俺は長男だから今後侯爵を継ぐのは確定しているから、今回は称号を渡してくれたのか。確かに、称号を持っていると下手な行動はしづらいよな。

 今回みたいに、詰所に押し寄せて勝手に装置を使ったりはしなくなった。

「ていうか、『天』に聞いたんだけどよ?」

「『天』?」

「聞いてないのか? お前の師匠だよ。お前の師匠の二つ名が『天地』だから『天』だ」

「へー、師匠に称号があることすら知りませんでした」

 興味なかったから、知らなかった。

 それに自分から教えてくれるわけでもなかったから。

「別にこんなことはいいんだよ。アレス魔力が特殊らしいよな。だから、魔力の研究資料がほしかったって聞いたぞ」

「そうなんです。魔力回路が多くて、魔力を貯めれる量も多くて、出力も多いんです」

「一見いいことのように聞こえるが?」

「そうもいかないんですよ……魔力見えるんですよね? なら、見ていてください」

 俺はそういうと、魔力回路を起動する。

「見えますか魔力回路の量が」

「ああ、肌の場所が見えないな」

 本来は青い線が数本あるだけなんだ。なのに、俺の場合は、青い線が多すぎて面になっている。肌の面積のほうが少ないくらいだ。

「ではこれを一瞬起動します」

 そう言い、一瞬だけ起動する。すると、俺の中に魔力がたまった。そのまま手を上げ、手先に魔力を集中させる

「この手から放出しますね、3,2,1,」

 その瞬間、部屋の中が揺れ動いた。魔力の圧に部屋の強度が負けたのだ。

「これが、一瞬で魔力を生み出す量です」

「やばいな……出力はどれくらいあるんだ」

「限界までやったことがないですが、今までの最高だと魔力回路を10秒間動かしたときですね。その時も全て魔力が放出されました」

「確かに、魔法を使うのが難しいな。だから、あの禁法を求めていたのか」

「何か手がかりでもあればと思って」

「そうか……でも、やりようがないことはないな」

 そういい魔法王は一冊の本を取り出した。いや、ただ紙の束を分厚い紙で包んでいるだけで、本とは呼べないだろう。だが、俺はそんなまがい物の本をどこかで見たことがある気がした。

 どこでだろうか? 

 今までいろんな本を見てきたがこんなものを見たことはない。

 見たことがあったとしたら特徴がありすぎて覚えているだろう……特徴? そうだ、俺は見たことがあるんだ。

 本にまとっている魔力を!

 俺がもらうはずだった研究資料だ! あの魔導師の魔力で間違いがない!

「この本の中に、何とかする方法が書いてある。だが……」

「だが? 何か問題があるんですか?」

「いや、実際に見てもらうほうが速いな」

「え、見ていいんですか!」

「そのために権限を与えたんだろ。いいから見てみろ」

 待ちに待った魔力の研究資料だ! 

 俺は、手を震わせながら中を開けてみる。するとその中には、ずらっと文字が書いてあった。

 文字が書いてあるんだ……俺にはそれ以上のことがわからない。

「むずいだろ」

「はい、何が書いてあるかわかりません」

「まあ仕方がねえよ。魔力について。それこそ博士と呼ばれるレベルまで知らないと読み解くことはできないだろ。俺も見させてもらったが、読めないところばかりだ」

「そう、なんですか。なら、博士と呼ばれる人に聞けばわかるんですね」

「まあ、そうだな。その博士が禁法を見ることができるのであればの話だか」

 そっか。

 俺がこの本を見ることができるのは、魔法王が様々な称号をくれたからであって、ふつうは見るどころか、触ることもできない。

「……なら、この資料を書いた人に聞けばわかるんじゃないですか!」

「もうこの世にいねぇよ。なんの権限もなく禁法レベルのもんを作り出したんだ。そのうえ、禁法を使ったんだろ? 聞いたぞ『魔力誤認』に『魔力爆発』だったか?」

「はい、もし俺以外の魔導師に使われたら、被害は免れないでしょう」

「あぁ、実際被害は出てたしな」

「そうなんですか?!」

「研究所から魔導師の死体が3体でてきた。お前に捕まえられるまで誰も知らなかったから、随分と用心していたようだな」

「確かに閉鎖結界っていうのを使われました」

「んじゃそれだ。逃げられないようにした上に、声を漏らさないようにしてやがる。わからないわけだ」

 簡単に捕まえることができたから、あんまり実感はなかったが、やばい人だったらしい。よく俺捕まえることができたな。

「そんなわけでもうこの世にはいない」

「そうですか」

 なら、もう俺は魔法を使えないのだろうか? 

 あきらめるのは嫌だが、この本を読めないのであればもうどうしようもない。いや、ほかの方法を探っていくのもあるか。

 魔力を封じる以外にも……思いつかない。

 その瞬間、俺はどうしようもないと言われているようで、目の前が真っ黒になった。これまで魔法が使えるように修行してきたが、これでもうあきらめるしかないのかと……あきらめろと言われているようで。

 だが、そんな時、さし伸ばしてくれた。

「そこでだ、アレスには2つの選択肢がある。一つはこのままあきらめて、死ぬまで魔力の制御を練習する。頑張れば、100歳になるころにはいっぱんてきな魔法は使えるようになるかもな」

「……そうですか」

「おいおい、こんなところで意気消沈するなよ。せっかく二つ目の案を出してやろうとしているんだから」

「無理ですよ。もう」

「そうか? 俺は案外いけるんじゃないかと思うけどな」

「なら教えてください。そのいけると思う案を」

 俺はぶっきらぼうに聞く。本来であれば不敬であるが、今の俺にそんなことを気にできるほどの余裕はなかった。 

 魔法が使えないという事実を何とか飲み込むことしかできないんだ。

「んじゃ教えてやるよ。この本が読めないなら、読めるようになればいいじゃないか。つー訳けで2つ目は勉強をする!」

「勉強?」

「この本は博士レベルの知識量が必要だ。莫大な量のことを覚えなければいけない。だが、限りがないわけではない。新たな道を切り開くわけでもなく、新しいものを作らなきゃいけないわけでもない。すでに覚えるための道は整備されているんだ」

「……そっか、勉強か」

 忘れていた。

 本を読むためには、勉強が必要なんだ。なんで忘れていたんだよ。

 この世界に来た時も、本を読むために、魔法を使うために、たくさんを学んできたじゃないか。

「もちろん道は過酷かもしれない。でも一番可能性があるとは思わないか?」

「はい。勉強します!」

「よく言った! なら、フロンティア学校に推薦してやる!」

「フロンティア学校ですか?」

「聖王国、大心帝国、千州統合国の3つの国の魔導師が共同で運営している学校のことだ! あそこに行けば、なんでも学べるぞ!」

「そうなんですか! 行ってみたいです!」

 フロンティア学校か。どんな場所かわからないけど、楽しみだな。それに、学校にいったことがなかったから、初めての体験になる。

 今からドキドキしてきた。

「入学は4月体からな! それまで勉強しておけよ!」

「はい!」



【魔力だけはあるみたいですよ?~魔法は使えないようです~】を読んでいただきありがとうございます!!

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