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11話目

★★★

「渡せないってどういうこと?」

「そのままの意味です。研究資料の中には、あなたでは閲覧することができないレベルの内容が含まれております」

 後は研究資料をもらえれば完了かと思いきや、その前でつまずいてしまった。

 なんでも、俺では閲覧できないものがあったらしいが、魔導師は禁書だって見ることができるのに、今更見れないってどういうことだ?

 禁書以上のものが書かれていたということ?

「なら俺が受け取る。それでいいだろう」

 すると師匠が前に出てくれた。魔導師になってからまだまだの俺より、師匠は魔導師になってから結構年がたっている。

 信頼もあるだろうし、見るための権限だって持ち合わせているかもしれない。

 だが、相手の表情は変わらない。

「ダメですね。あなたの権限では閲覧することができません」

「どういうことだ? 俺がダメってなると、それこそ魔法王じゃないと見れないんじゃないか?」

「そうですね」

「そうですね?! 本当に魔法王しか見れないのかよ!」

「回答できません」

「いや回答してたじゃねぁか!」

 ……師匠でもダメなのか。

 いや、そもそも師匠はそこまですごい人ではなかったのか? まあいい、それはいったん置いておこう。 

 このままだと、研究資料が見れないままだ。

 どうにかしていきたいんだが……魔法王じゃないと見れないものって何が書いてあったんだよ。全く見当が付かないぞ?

 もしかして、魔力に関係することの中に禁書レベルのものがあるとか?

 ……そういえば、この前師匠が「魔力を封じる魔法は禁法」って言っていたな。あの魔導師、それに近い魔法を使っていたはずだから……もしかしたら、そのことが書いてあるのかも?

 これはなんとしても見なきゃいけなさそうだな。

 魔力を減らす大きな一歩になるかもしれないぞ。

「師匠お笑いはそのへんでいったんやめてください……捕まえた魔導師の研究資料はこの中にあるの?」

「回答できません」

「俺は別にお笑いをしていたわけじゃないぞ!」 

「師匠静かにしていてください」

 回答できないってことは、中に研究資料があるかもしれないな。なら、一番いい手がある。

「侯爵家長男として入らせてもらおうかな。国家反逆企てているかもしれないし」

「・・・侯爵家の人でしたか」

「あれ、言ってなかったっけ?」

 俺はそういいながら、侯爵家としての証明であるバッチを見せつける。普段は、落っことさないようにつけていないからな。

 まあでも、こうなってしまったからには、中に入らせるしかないだろう。たとえ、魔導師の研究資料があったとしても。

 権力っていうのはこういう時のためにあるんだ。

「入るよ。あ、みんな動かないでね? 証拠隠滅って思われたくないでしょ?」

 ただの詰め所ではあるが、中に入ると意外と大きかった。そのせいで見つけるのは苦労しそうだが……俺にはそういう常識は通用しない。魔導師の研究資料は、紛失しないように魔法をかけていることがある。

 つまり、俺の目は教えてくれるんだ。研究資料の場所を。

「どこかな?」

 ぐるっと周りを身を見渡し、どんどん奥へ入っていく。ところどころに魔力をまとっている研究資料はあるが、俺が捕まえた魔導師の魔力ではない。

 もしかして、もっと厳重な場所にあるのか? 見せれないっていうほどだしな。

 なら、入っちゃいけない部屋を探してみるか。

 俺は、廊下に出て開けてはいけないような部屋を探す。すると、なぜか鉄でできている扉を見つけた。

「あれか!」

 見せることができないものを入れるのには絶好の部屋だろう。それ以外に、厳重な部屋はなさそうだから、間違いない。

 俺は勢いよく扉を開け、中に入る。

 するとそこには、間違いなくあの魔導師の魔力をまとっている紙の束があった。求めていたのはあれだ!

 だが、なぜかその研究資料は、へんてこな形をしている装置の上にのせられていた。

「見つけた!!」

 へんてこな装置の上にのせられていようと、取ってしまえば関係ない。そう思った瞬間、その研究資料はパッと消えてなくなってしまった。

 一瞬のうちにしてだ。

「は? どういうこいとだ?」

「あれ、どちら様ですか。この部屋には誰も入ってはいけないはずなんですが……ああ、もしかして先の資料をもらうはずだった、魔導師でしたか」

「そうです。資料はどこにいったんですか」

「あれはもう、魔法王の元に飛ばしてしまいましたよ。見たかったのであれば一歩遅かったですね」

「飛ばしてしまったって、どういうこと……?」

「そもままの意味ですよ。あの装置は転移を行いえるものでして、人間ほどの大きさは無理ですが、研究資料くらいであれば、上にのせて魔力をこめれば行ってくれるんですよ」

 なんだと……ということはもう手に入れることはできないのか。

 今の俺だと、魔法王に合うことはできないだろうし……どうしようもなくなってしまった。クソ、こんなことになったなら、文句の一つや二つ言ってもいいだろ!!

 俺は近くにあった、紙にペンで文字を書き始める。

 内容は「俺の研究資料を取るな」と罵倒である。思いのままに書きなぐる。

「いいですねー。ストレスは貯めておくよりも外部へ放出したほうが、体にいいですから。紙に書くなんて言うのは、まさにストレス発散の極意。書いたものは最終的に燃やせば、誰にも見られないんですから」

「……いや、これは燃やさないさ。だって、魔法王に見せるために書いているんだからな!!」

「は? どういうこ……もしかして、装置を使おうと!」 

 俺は、書き終わった手紙を装置の上に置き、止められる前に、魔力をこめ始める。どんだけ魔力が必要になるかわからないが、俺の魔力であれば、一瞬だ!!

 装置は急激に動き出し、1秒もたたずして手紙が消えてしまった。

「今使ったら魔法王に届いてしま……おわった」

「あーすっきり」 

 目の前の魔導師の反応的に、ちゃんと送れているようだ。文句は言えたし、心の底からすっきりできた。ストレスっていうのは人に当たるのが一番早く解消できるんだよな。

 ただまあ、魔法王に恨みつらみを書いた手紙を送るのはやりすぎたか? いや別にいいか。どうせ親戚だし。

 魔法王とは、この国の王でありながら、魔法に関しても全ての魔導師を超えていることからつけられた二つ名なのだ。

 つまり、俺の遠い親戚である。

 王族のみを集められたパーティーとかで一目見たことあるしね。

 と、そんなことを思っていたその時、なぜか装置が動き出した。明らかに壊れるような、音を出し始め、止まったと思ったら、装置の上には、一枚の手紙が置いてある。

「……何これ」 

「この装置一方通行のはずなんだけど……明らかに魔法王の仕業じゃん」

 一見何の変哲もないが、絶対にやばい手紙だろ。てか、今一方通行って言ったか? なんで魔法王から手紙を送り返されたんだよ! 

 ただ、さすがに読まないわけにはいかない。

 いや、できることなら、触りたくすらないが、読まなきゃただじゃ置かないという雰囲気が手紙から漂ってる。

「……装置に触れちゃいけないと思うから取ってくれない?」

「いや、十分に触ったでしょ! 触ったうえで、勝手に使ったでしょ! これ以上何しても罪は増えませんよ!」

「いや、ほら。お願い」

「嫌です!」

「お願いだから! 触ったら発動する絶命の呪いとかかかってそうじゃん!」

「なおさら嫌ですよ!」

 っち、もう俺が取るしかないのか。

 仕方がないが、これも運命だとして受け入れよう。ふー、せめて死なないように魔力を練っておくか。絶命の呪いをかけられていたとしても、魔力の圧で致命傷にはならないかもしれないしな。

 そう思いながら俺はゆっくりふれる。

「……なにも起こらない? なんだ、全然大丈夫じゃん」

 てっきり罵倒に怒って殺そうとしているのかと思ったが、全然そんなことはないらしい。一安心だ。なら、あとは手紙を読むだけ。

 俺は袋にも入っておらずただ二つ折りにされた、手紙を開く。

「あ、終わった」

「どうしたんですか……」

 俺は魔導師に手紙を見せる。そこには怒りがこもった文字で「明日の12時に来い」と書かれていた。ご丁寧に、アレスへと記載されているうえ、下には王印という、魔法王しか使えない印が刻まれていた。

 つまり、これは正式な招待状というわけだ。

「これ自らの手で殺したいってことなんじゃ……」

「可能性はありますね。あ、私は少し仕事がありますんで。じゃ!」

「あ! おい! 逃げんな!」

 魔導師は関係ないという雰囲気を出しながら、この部屋から出てしまった。いや、全く関係ないが、一緒につれていこうと思ったんだけどな。 

 あーあ、終わった。



★★★


【魔力だけはあるみたいですよ?~魔法は使えないようです~】を読んでいただきありがとうございます!!

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