第93話 復興
セツシート崩壊から半年が経った。
甚大な被害を受けたセツシートは周りの街からの援助もあり元の姿を取り戻しつつある。
セツシートに住んでいた住民のほとんどが暮らせる程度には復興も進んできた。
そんな中で問題はセツシートの真ん中に聳え立つ塔。
ドン・ルナティックだ。
現在は立ち入り禁止となっていて二十四時間体制で看守がついている。
なぜそんなことになったかというとセツシート崩壊から二ヶ月が経ち各国から援助に来た人が聖堂に入ってしまったからだ。
聖堂に入ってしまった人は帰ってくることはなかった。
偶然、聖堂に入ったところを目撃した人がいたから発覚したが誰も見ていなかったらどうなっていたか分からない。
「フィオナ……」
学校へ行くのには最近歩いて行くという生活になった。
ドン・ルナティックの前を毎日通るたびにフィオナのことを思い出していた。
「お帰りなさいませ。グレイ様。」
そんなことを考えているうちに帰宅していた。
出迎えてくれたのはマロンとノアだった。
「ああ、ただいま。」
四階へと階段で上がり大部屋へ入った。
「目白さん。帰っていたんですか。」
「そうね。」
扉を開けると部屋の右側の机に目白さんは座り込んでいた。
「何をしているんですか?」
机に座り込んでいた目白さんが何をしているのか気になりそう聞いた。
目白さんは俺の方に机の上を見せてきた。
「あの聖堂について調べているのよ。」
机の上を見てみると本があちこちに置いてありそこに紙が広がっていた。
「何か分かったんですか?」
「いえ。全く。」
そう目白さんはキッパリと言った。
「聖堂についての文献が全く無いのよ。」
「そうですか……」
今日まで俺は聖堂にフィオナがいると信じていた。
だから何としてでも聖堂については調べなければいけない。
「気が狂っても一人で行っちゃダメよ。あなたが唯一の望みなんだから。」
目白さんは俺がいなくなると困る。
俺も目白さんがいなくなると困る。
俺と目白さんはこの世界で唯一、天使の涙を撃てる人間だからだ。
だからどちらかがいなくなれば望みも消える。
俺か目白さんが生きている限り、神は決してこの世から去らない。
今はただ神の休憩期間なだけだ。
「俺たちは神に生かされている、か。」
目白さんからこの言葉を聞かされた時、絶望感が体を襲った。
俺からこれ以上何を取れば気が済むんだ、そう思った。
「この言葉が無ければ俺はどうなっていたことか。」
「こうしてあなたが生きているなら良いのよ。」
こういう言葉をいつか言われてみたいなと思っていたあの時の俺を思い出した。
「なっ、何よ。ニヤニヤして気持ち悪いわね!」
このところ、目白さんはずっとこの調子だ。
というかもっと前くらいからこんな調子になっている。
必要以上に人の目を気にするタイプの人なのか分からないが。
「そんな言葉を言われるの嬉しかったので。」
「ふ、ふーん……そうなの、ね。」
そう言って目白さんは自分の気持ちを落ち着かせようとしていた。
俺は元々、目白さんが何歳だったとかは分からないがこれは思春期特有の現象では無いのだろうか。
「まあ、とにかく。無駄なこととか危ないことはしないでおいて。」
「はい。分かりました。」
もしも目白さんが年下だったらどうしようかと考えてしまう。
年下に対して頭の回転でも判断でも負けるという屈辱なことはない。
「ご夕食の準備が整いました。」
そう話していると扉を開けたマロンが言った。
「分かったよ。すぐ行くから。目白さんも行きますよ。」
マロンと目白さんに対して俺はそう言って下へと向かった。




