第92話 兄として
「メジロさん。少し手を貸してくれないか。」
「何をすれば良いですか?」
セツシートについてまずしたことといえば大結界を張ることだ。
本来、街から街への移動とは危険が伴う。
なぜなら、道中に魔物が存在するからである。
天使の涙によってセツシートを守る結界も破壊されたため仮の結界を張るらしい。
「なるほど。この場所をこうするんですね。」
天使の涙を防いだ時よりももっと大きい五十メートル×五十メートルの正方形に描かれた魔法陣を見て言った。
「やはり、これほどの情報量となるとそれなりの大きさがいるんですね。」
情報量というのは定義のようなもの。
例えば、この人がこういうことをすればこうなるというものだ。
「そうでしょう。これをするだけでも一苦労ですよ。」
口を動かしながらも手を動かすということをしてドンドンと魔法陣が完成していった。
校長とナックルはといえば仮の家をドンドンと作っていたようだった。
ナックルは世界で数えられるほどしか使えない魔法の使い手なので重宝しているらしい。
そして、周辺に避難していた人たちを呼び戻し復興を手伝ってくれる人を募集しているらしい。
おかげで二時間ほどで人は少ないものの多少は戻ってきた。
「これで完成ですね。」
「疲れているのに申し訳ない。」
理事長が目白さんに向かって謝罪をした。
目白さんも考えてみれば休んだのはほんの五分程度だったことに気づいた。
「グレイ。君はよくやった。」
何やら聞き覚えのある声が俺の意識を覚醒させた。
「お前は、あの時の……」
「あぁ、よく覚えてくれていたね。まさか、こんなことになるとは僕も想像していなかったよ。」
俺と目白さんを未来のセツシートいや、今のセツシートに送った張本人。
古代の先人だ。
「今更何だよ。」
「おいおい、そんな言い方はないだろう。君の妹の場所を知らせようとしてあげたのに。」
「っ!」
その言葉に俺は反応した。
フィオナの居場所という事はまだ死んでいないのか?
「どこだ!どこなんだよ!」
古代の先人に寄り添って俺は聞いた。
「案外近くにいるよ。聖堂の一番上。でも、君の知っている妹ではないかもね。」
「どういう事だよ!もっとはっきり言え!」
古代の先人の言うことを理解できず、俺は聞き直した。
「まあ、君の中に僕の意識がある。聞きたいことがあれば聞いてくれ。」
そう言い終わった時、俺の意識はだんだんと朦朧としていき途切れた。
「ん…んん……」
目を覚ました時、俺は少し暗い部屋のような場所に寝かされていた。
「ウゥっ………」
急激な頭痛が体を襲った。
頭を押さえながら体を起こすが、今度は背中が酷く傷んだ。
「グレイ!お前だけでも無事で良かった……」
ナックルが部屋の中に入ってきた途端、言った言葉はそれだった。
その言葉で俺は全てを思い出した。
神のこと。
天使の涙のこと。
そしてフィオナのこと。
「せい…聖堂!聖堂に行かないと!」
「グレイ!ちょっと待て。一旦状況を説明する。」
俺の言葉に驚いた様子を見せたがすぐにそう言ってきた。
「とりあえず今分かっている情報を話すぞ。」
「はい。」
「天使の涙によってセツシートは壊滅した。けど、援助もあって今は大分ましになっている。」
やはり、ミカエルの最後の攻撃が一番強かったということか。
「あとは、中央に大きな塔ができた。それは、ミカエルが作ったものでドン・ルナティックというようだ。その最上階には天空の巫女がいるという話だ。」
「ドン・ルナティック……」
恐らくそれが古代の先人の言っていた聖堂だろう。
ということは、天空の巫女がフィオナなのか?
どういう事なのか今は分からないままだ。
「まあ、とりあえず今は調子を取り戻すのが最優先だ。」
そうナックルは言って部屋から出ていった。
「フィオナ……兄さんなのに守ってやれなくてごめんな。」
そう俺は呟いて部屋の中から外へ出た。




