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第90話 神ミカエル


「それで何をすれば良いんですか?」


フィオナにミカエルの気を引いてもらっているうちに目白さんに聞いた。


「私の中には今、天使の涙の術式が入ってる。あなたの中にはその術式への魔力の流し方が入ってる。それを合わせるのよ。」

「なるほど。二人で一つの魔法という事ですね。」


古代の先人の言っていた魔法というのはこれのことだったのか。

それにしても、人間には扱えないと思われていた魔法を使えるようにしたのか。

やはり、古代の先人は俺たちの何倍も先を進んでいるかもしれない。


「そうね。そうと分かったならすぐに準備するわよ。」


そう目白さんが言って術式を作りだした。

その術式に向かって俺が魔力を流し続けた。


「目白さん。これ何分くらいかかるんですか?」

「少なくとも5分は必要ね。」


フィオナが戦いながら目白さんに向かって聞いた。

上手い事フィオナはミカエルの気を引いていた。

その五分というのはあっという間に過ぎた。


「ようやく完成よ。いつでも撃てるわ。但し、一発だけ。」

「フィオナには負担をかけることになるけど誘導してもらうか。」

「そうね。グレイ。あなたの魔力が勝負の鍵よ。分かった?」

「はい。フィオナ!そこにミカエルを誘導するんだ!」


フィオナは、分かったかというようにすぐに動いた。

フィオナの動きに釣られてミカエルもその跡を追った。

そのミカエルの来た位置を見計らってフィオナに言った。


「フィオナ!避けろ!」


目白さんと息を合わせてミカエルに向けて天使の涙を撃ち込んだ。

今まで感じたことのないほどの感覚に襲われた。

言葉で言い表せないほど不思議な感覚に襲われた。

天使の涙はミカエルに直撃した。

いくら天使とは言えど都市を滅ぼすほどの魔法が直撃してしまえばひとたまりもないだろう。


「どうだ?」

「兄さん。あれ。」


フィオナが前に寝込んでいる物体を指差した。


「やりましたね!兄さん!」

「ああ、やったな。」


目の前に寝込んでいるのはミカエルだと分かった瞬間、肩からドッと力が抜けた。

この戦いにおいては知っている限り誰も死んではいなかった。

それだけで十分俺は嬉しかった。

喜びながらフィオナは俺の方へと走ってきた。


「やりましたね!兄さん……」


そう言ってこっちに向かってくるフィオナの口から血が吐き出た。

そのフィオナの腹には黒い何かが貫通していた。


「フィオナ!」


地面に倒れ込んだフィオナを支えた。

目白さんがこっちにやって来てフィオナの様子を見だした。


「グレイ。ちょっとの間、時間を稼いで。」


そう言っている目白さんの奥に倒れているミカエルは微かに動きを見せた。


「おいおい、嘘だろ。」


ミカエルは体から血を流しながらも地面からそっと足が離れた。

ミカエルの体から流れ落ちる血の音だけがこの場に轟いた。


「譛?邨よ焔谿オ螳溯。」


何を言ったのか、という思考もできないほどの速さでミカエルは動いた。

ただ、気づいた時にはミカエルに胸ぐらを掴まれ投げ飛ばされていた。

そして、目白さんもおれの方へと飛んできた。


「グッ………….」


上にいるミカエルの周りに黒い棘が大量に作られ辺りにばら撒かれた。

身動きをできなかった俺と目白さんその棘に体を貫かれた。


「アッ……」


刺すような痛みが体を襲う中、ミカエルはフィオナの方へ近づいた。


「やめ、ろ……」


痛みに耐えながら喉から出した声だった。


「…………」


ミカエルは俺の言葉に反応する事もなく、フィオナを包み込むように抱き上げた。


「待てよ、」


瀕死の状態でも俺はミカエルに向かって、獄水球ヘルウォーターボールを撃った。

ミカエルには魔法はそのままこちらに跳ね返され、俺に直撃した。


「ミカ…エル……ミカエル!」


ミカエルは俺の言葉に反応することなく抱き上げたフィオナを持って空を飛んだ。

体の痛みに耐えて俺は地面を蹴り、ミカエルの方へ向かおうとした。


「ダメよっ!」


目白さんが俺のことを引き止めた。


「なんでだよ!フィオナが!」

「ミカエルをよく見て!」


ミカエルの手には大量の魔力が集まっていた。


「天使の涙なんて、まともに食らえばどうなるか分かるわよね。攻撃範囲外に瞬間移動で移動して!術式がわかる私ならどこが安全か分かる。」


目白さんの言うことが正しいのは分かる。

でも。


「でも、妹は瀕死で神に持ってかれたんだ!兄として……」

「なら、兄としてあなたは精一杯生きなさいよ!フィオナはどう思うかは分からないけどそれでもそう思うのなら行きなさいよ!」


目白さんはそう叫んだ。


「早く逃げるわよ。」


目白さん手を差し伸べた。


「分かり…ました……どこまで逃げるんですか。」

「セツシート郊外から260メートル先よ。」


目白さんの手を取り俺は、目からこぼれ落ちる涙を拭って今ある力を使って瞬間移動で移動した。

セツシート郊外についた時、セツシートには一つの明るい光が落ちていた。

そして、その光はセツシートへと落ちてやがてものすごい爆発を起こした。


「セツシートが……」


目白さんは上空高く上がる炎を見て言った。

爆風は郊外にまだ伝わり、周りの木々が飛ばされていた。


「凄まじいわね……」


目白さんが防御結界を作って俺を守りながら言った。


「兄として、俺は何をしたんだ……」


自分の心に残る気持ちを噛み締めながら言った。


「あなたは良くやったわよ。」


横にいた目白さんが言った。


「もう休むと良いわよ。ミカエルもここまでは追って来ないわよ。」


そんな言葉に安心を覚えたのか俺の意識はすぐに遠のいて行った。

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