第88話 天召結界魔術
「なっ!?今の音は?」
「後ろからですね。」
俺とフィオナは、目白さんに作ってもらった時間を使ってミカエルから逃げていた。
「目白さんが足止めしてくれてるんだろう。早く逃げるぞ。」
「はい。兄さん。」
フィオナを連れながら俺たちはとにかくミカエルの逆の方向へ走った。
「兄さん!あれ……」
フィオナが立ち止まり後ろを見ていた。
その後ろには遠くの方にミカエルがいた。
「どうなってんだよ……目白さんは?」
ミカエルがここに来ていると言うことは目白さんはどうなってしまったのだろうか。
ミカエルの目的は目白さんと俺のはず。
なら最悪の場合、目白さんは……
「クソッ。フィオナ!天使の涙はそう簡単に連発は出来ないはずだ。ミカエルよりも先に攻撃を仕掛けるぞ!」
「分かりました。」
そうフィオナに指示して俺は攻撃をする体制を整えた。
「対象を視認。コード203の完遂を確認。」
相変わらず何のことかもわからない事を言うミカエルに対して俺とフィオナで魔法陣を作った。
「天召結界魔術!」
ここ数年で結界魔法は恐ろしい進化を遂げてきた。
詠唱なしでも出来る魔法陣を作ったのも目白さんたちだ。
ミカエルはそのまま天召結界魔術に引っ掛かり身動きを制限させらせていた。
「天召結界魔術《コードNedMrG》の存在を確認。」
ミカエルは魔法陣をどうにか無力化しようと動いていた。
「そのまま畳み掛けるぞ!」
「はい!」
俺とフィオナは共に水素爆発球を作りミカエルに撃ち込んだ。
辺りが煙で包まれて見えなくなってしまった。
「どうだ?」
煙が風で吹き飛ばされ上を見た。
「prl-412の損傷を確認。直ちに修復を試みる。」
「ミカエルに傷が……」
ミカエルの右腕からは鮮血が垂れていた。
「今です!」
フィオナの言葉に俺はミカエルにもう一発、水素爆発球を撃ち込んだ。
「これで!」
「ご……めん…なさ……い………」
「っ!?」
先ほどまでの機械的な声は消えて元の美しい声に戻った。
顔も19年前と全く同じ美しさを帯びていた。
「兄さん!危ない!」
「えっ?」
横にはもうミカエルがいなかった。
ふと上から衝撃が加わった。
「足!?」
ミカエルは俺の頭を足で蹴った。
地面に体が叩きつけられ衝撃が走り、全身に痛みが広がった。
「クソが。魔法だけじゃないのかよ。」
「…………」
ミカエルはそんな俺の言葉には反応せず無数の白い矢を作り出した。
何とか逃げようとするも体が痛くて思うように動かない。
そう思っているうちにミカエルは作り出した白い矢を振り下ろした。
「マズっ!」
「獄風球!」
身動きできない中、フィオナが魔法で矢を払った。
「兄さん!大丈夫ですか?」
フィオナが俺の方まで来て体を起こした。
「ああ、ミカエルを倒すなら今だ。」
「でも兄さんが……」
俺の体の状態を見てフィオナが心配して言った。
だが、今フィオナが俺の方に集中すればミカエルの傷は無くなる。
攻めるのであれば今しかない。
「俺はいい。フィオナは目の前の的に集中しろ。」
「分かりました。」
フィオナはそう言って俺から離れミカエルの方を見た。
「いよいよ、まずい事になったな。」
ナックルがセツシート郊外で言った。
「まさか、天使の涙が跳ね返されるとは。」
理事長が関心を持って言った。
それもそのはず。
短時間の魔力の溜めだったとは言え人間には到底扱えない天使の涙を跳ね返したのだ。
「ただ、あれだけの事をすれば魔力切れも。」
「それだけが心当たりだな。」
逃げながらもセツシートの方を振り返り三人で郊外で話していた。
「うおっ!今度は何だ!」
走って逃げようとすると大きな地鳴りが響いた。
「爆発?でしょうか。」
校長が後ろを振り返り大きな煙が出ているのを見た。
「もうどっちがどっちなのか分かりませんね。私たち大人が子供に戦わせているのが申し訳ないな。」
「力不足か……」
ナックルはそう言ってまた理事長たちを連れて走り出した。




