第84話 選択肢
「これね。」
目白さんは、図書館に着き鍵穴を見つけていた。
鍵穴に校長からもらった鍵を刺すと埃を落としながら本棚が下に下がって行った。
「中は意外に綺麗ね。」
長らく人が出入りしていなかったので汚いかと思ったがそうでもなかった。
中にある本の中からホッ・カイドウでの神についての本を探した。
そんな時に目白さんは一冊の本が目に入った。
「神ミカエル観察詳細日記ね。」
ミカエルは本来、天使だったはず。
神と天使ミカエルは同じ存在なのだろうか。
中を開きパラパラと文を読んでいった。
「神はまず対象を確認したと言った。対象を壊す、もしくは不可能と判断した場合一時間の魔力溜めが入った。」
と読んだところで日記はそこで終わっていた。
他の人の日記を読むもどれも全員同じようなところで終わっていた。
最後の方のページにはその日記をまとめた作者の考察が書かれていた。
「神の全ての行動は慈悲などない無慈悲な攻撃であると推測する。そして、神の活動の停止する一時間は天使の涙だと考える、ね。」
天使の涙。
一夜にしてホッ・カイドウを滅ぼしたという攻撃。
「神でも魔力の溜めは必要なのね。」
神でも一時間魔力の溜めをしなければいけないほどの大魔法ということになる。
「神と天使でも同じミカエルなのかしらね。」
本の奥付けに書いてある著者名を見て目白さんはそう言った。
そこには『著 古代の先人』と書かれていたからだ。
「どこまでも私たちを助けてくれるのね。」
他の本を一通り見て役立つ本だけを持って目白さんは図書館を後にした。
「目白さん!何か見つかりましたか?」
俺は学校から出て来た目白さんに向かって聞いた。
「ええ。でも一冊だけね。ついでにあれが神だそうよ。」
俺は目白さんから渡された本をパラパラとめくった。
19年前にミカエルの口から出たお願い。
神を殺してほしい、というお願い。
「魔力の溜めっていうのはいわゆるスリープ状態なの。」
目白さんに言われて俺はすぐ上空にいるミカエルを見た。
「それってあれのことじゃ……」
先ほどから外からの攻撃を一切受け付けなくなったミカエル。
それはもしかすると魔力の溜めが入ったからではないだろうか。
「っ!?なら、早くここから逃げないと。」
「それは無理よ。」
急ぐ俺に対して目白さんが言った。
「ミカエルの狙いは何か覚えているの?」
「え?」
「私たちよ。」
「それがどう関係するんですか。」
「恐らく天使の涙は私たちを追いかけてくる。」
ミカエルは俺たちを排除する、と言っていた。
なら、俺たちをミカエルは追ってくると考えることもできる。
「じゃあどうすれば……」
逃げたとしてもミカエルに追いかけられる。
天使の涙は、一夜でホッ・カイドウを滅ぼすほどの威力を誇る。
防ごうと思って防げるものでもない。
「ミカエルが静止したのはいつ?」
「えーっと、五分ほど前です。」
「そう。なら早く対処方法を見つけないと。」
まずは、この近くの人たちが避難できたかの確認からだ。
時間の猶予はもう無い。
「兄さん!無事でしたか!」
フィオナが瞬間移動で俺の横に来た。
ついでにナックルもフィオナについて来ていた。
ナックルも世界に数えるほどしかいない魔法の使い手だ。
「フィオナ、父さんも。」
「ところであれは何なんだ?」
頭上に浮かんでいるミカエルを見てナックルが言った。
「あれは、なんなんだ?」
「ホッ・カイドウを襲った神、ミカエルですよ。」
「そんな平然と言わないでくれるか?」
ナックルが何とも言えない表情で言って来た。
「そういう父さんだって平然としてるじゃ無いですか。」
「なんでそんな神がここにいるんだ?攻撃したらどうだ?」
「父さん。よく見ておいてください。」
獄火球をミカエルに向かって撃ち込んだ。
見事にミカエルに当たる前に魔法はそのまま返された。
返された魔法を魔法壁で守った。
「おいおい、マジか。魔法をそのまま返すって。目白さんみたいな事するな。」
「さらにすごいのが今のミカエルはスリープ状態ってことなんですよ。」
無意識で常時魔法を発動させ続けるというのは神にしかできない事かもしれない。
「それで、今の状態っていうのが天使の涙の準備フェーズなんです。」
目白さんがフィオナとナックルに説明した。
「それって……」
「ええ。」
フィオナはそれで分かったようだがナックルはピンと来ていなかった。
「ホッ・カイドウって何で滅んだかおわかりですか?」
「何でだ?」
「一夜にしてたった一撃で滅んだ魔法。故に人間には扱えない魔法。天使の涙。」
ナックルはようやく事態のまずさに気付いたのか慌て出した。
「なら早く逃げるぞ。」
「ミカエルの狙いは恐らく僕たちです。なので逃げることはできません。」
そう。
逃げれば被害が拡大するのみ。
残された選択肢はこの場にいるミカエルの攻撃。
すなわち天使の涙を防ぐしか無い。
「じゃあどうするんだ?」
「この場にいる全員で天使の涙からの攻撃を防ぐのみです。」
俺はそうはっきりとナックル達に告げた。




