第75話 大会前日
闘技大会、セツシート大学代表が決まって数日。
何も意識せずに生活していて気づいたら前日になっていた。
だが俺のすることは変わらない。
目白さんにある程度、剣技について教えてもらった。
もう俺のする事はない。
あとは他の学校からどんな人達が送り込まれてくるかだ。
「いよいよ、前日ですか。」
「俺の分まで頑張ってくれよ……」
アルバートは、剣技部門を選んだがあと一歩のところで負けてしまった。
なんでも目白さんが気を悪くしたあのクロム・アルベルトとぶつかって完封勝利されたさしい。
「フィオナ、私の仇を……」
「私の無念も。」
ローズとジェイミーは共に魔法部門へ出場するも、アルバートと同じくすごく強い人と当たってしまい敗退。
総合部門は俺は見ていなかったがなかなかに盛り上がったらしい。
「俺は多分、剣技部門出てたら速攻負けてたな。」
アルバートが言った。
闘技大会は今年、初めての外部の学校からも参加する。
その為、観客も規模も桁違いだと校長が言っていた。
どうせならばセツシート全体で利益を上げるために、街中の店に野外営業を頼んだらしい。
校長の今年の目的は三冠。
つまり全部門での勝利らしいが、どの部門も予想がつかない。
魔法部門は、セツシート大学はともかく他の学校がどのくらいか分からない。
剣技部門は、目白さんが機嫌を悪くしていた相手が出る。
しかも目白さん以上の人が外部にいるかもしれない。
総合部門は、魔法と剣のどちらもを使うため参加する人は限られている。
だが逆に言えば魔法と剣を両方使えるくらい技術があるという事。
俺ももしかしたら負けるかもしれない。
「とりあえず俺は明日のために練習をするよ。」
「頑張れよ。」
全員に挨拶をしてから俺は家に帰った。
そして、家から明日使う剣と同じ剣を持って地図外の砂漠に飛んだ。
目白さん曰く、剣に魔力を込めるとさらに重みが増して強さも格段に上がるらしい。
「はたして、こんな細い剣がどこまで耐えられるか。」
剣を鞘から抜き前に出す。
上手い事、魔力を調整しながら剣に魔力を送る。
「それでこうっ!」
魔力を持たせた剣は強いが非常に脆く、長時間魔力を留めていると剣が壊れてしまう。
目白さんに教わった通りに、足を踏み切り剣を振り下ろした。
「なかなかいいのが出ないんだよな。」
攻撃力もあるし剣も壊れてはいないが、自分の納得いく攻撃をすることは出来なかった。
俺の思っている攻撃とは違う。
だが俺が出るのは剣技部門ではない。
総合部門である。
魔法も使っても良いのだ。
そういう戦い方をする部門だ。
とはいえ、魔法と剣のどちらかがまだ掴めていなくとももう一方がある。
それで稼げばいいだけの話。
「獄水球からの、振り下ろしっ!」
ヒュンと音を立てて剣を振り下ろした。
「あとは本番でどうなるかだな。」
「フィオナは、どうなんだ?」
夕食を済まして自室に戻りフィオナに明日のことについて聞いた。
「どうって何がですか?」
「闘技大会だよ。」
「負けませんよ。優勝するに決まってるじゃないですか。」
フィオナの実力なら負けるという気がしないが油断している時が一番危ない。
「いつでも手を抜いていたら負けるかもしれないから油断はするなよ。」
「分かっています。」
そう言っている俺も負けないようにしないとな。
「目白さんはどうなんだ?」
「そうね。剣では負ける気はしないけど戦い方で追い詰められるかもしれないわね。」
剣を見ながら目白さんは言った。
「明日はどちらにせよ予選なんだし気を楽にしないとな。」
予選とはいえど負ける可能性だって大いにある。
だからこそ油断は禁物なのだ。
「もうすぐですね。」
「ああ、絶対にグレイとフィオナを見つけ出す。」
馬車の中でナックルは言った。
家を出発して数日。
ようやくセツシートの街が見える位置にまで来ていた。
「セツシートでまずはどこに行くの?」
アーシャが聞いた。
「グレイが持っている屋敷に行こう。手掛かりが見つかるはずだ。」
ナックルはそう言った。
「いよいよですね。」
「そうだな。」
セツシート大学校長が言った。
「今回の大会どう見ますか?」
「剣技部門、総合部門この二部門には禁忌魔法陣に反応した二人がいる。」
「グレイ・ジュリエットとメジロ・ユイですか?」
そう聞くのはセツシート大学理事長である。
「禁忌魔法陣は古代の先人達と同じ国から来ることで初めて完成する、か。」
「この二人のエキシビジョンマッチが今大会の最も大きな注目所となりうるだろう。」
「となるとやはり……」
「あぁ、試合会場を守る魔法障壁でも守りきれない戦いになるかもしれん。」
セツシート大学の時計台に照らされる夕陽を見つめながら校長は言った。
「その件についてはこちらでまた考えておきます。」
「ああ、よろしく頼む。」




