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第74話 木の枝


「兄さん、もう時間ですよ。」


図書館で天使の涙について調べていた俺にフィオナが声をかけてきた。


「集中して、何を見ているの?」


後ろに立っていた目白さんが俺の見ている本をのぞいて来た。


「ホッ・カイドウの神の降臨について、ね。どうして貴方そんなものを?」

「いや、人間の命ってどれくらいの魔力になるのかなーって。」


上目遣いに俺はそう言った。


「ともかく、剣の練習をするんでしょう。」


フィオナが腕を組んで言った。


「そうだったな。じゃあどこに行けばいいんだ?」


俺は本を片付けながら目白さんに聞いた。


「こっちよ。」


俺が本を片付けるのを待たずに目白さんはフィオナを引き連れて歩いて行った。






「俺って剣の練習をしに来たんだけど。」

「剣とは己の命を預けるもの。そのためには己と向き合うことが一番大切、って教えられた。」


剣を習うために俺たちは剣技大会の開かれる会場に来ていた。

そこでまずした事といえば、固い地面に正座をして自分と対話する事だ。

昔目白さんは剣道をやっていて、その時に毎回していた事だと言う。


「そろそろいいんじゃ……」

「そう言うほど心が乱れているのよ。」

「あの、剣は?」

「フィオナも、すぐにそう剣に辿り着けるわけないでしょ。」


正座をして痺れていることを我慢して俺たちは無言を保ち自分と対話し続けた。


「よし、じゃあ次に進みましょうか。」


やっとか、と思いながら目白さんから渡された剣を取る。


「まずはそれを自由に操ることが出来るまでとにかく剣を振り続けるのよ。」

「メジロさん、これ剣というより木の枝では?」

「心が未熟だから、そういう事が言えるの。」


ただ、これに関してはフィオナの意見に賛成する。

目白さんから渡された剣は、剣というより程遠いものだ。

そこら辺に落ちてそうな細い木の枝だ。


「そういう棒を自在に操って初めて剣と言うものが分かるのよ。」


授業で教えてもらうよりは、剣で特待生になった目白さんに教えてもらう方が説得力がある。

しかも目白さんには実力もある。

故に目白さんの言ってくることは全て大切、と捉える事がいいのだろう。


「とは言っても棒を操るってどう言う事なんだ?」

「グレイも何もわかってないわね。」


目白さんも木の枝を手にした。


「棒を操るって言うのはね。」


そして何故か壁の方を向いて構えた。

熟練者ともなると、構えだけで相手が何をしようとしているのかが分かるらしいが俺には何も分からない。


「こう言うことよっ!」


くるっと横に回ったかと思えば縦に回り木の枝を剣に見立てて壁を切った。


「ここまでとは言わないけど。」


観客席下の壁が一部壊れた。

だがこれは剣ではない。

どこにでも落ちている剣なのだ。


「どうしたのよ。体が止まっているわよ。」


目白さんの手から離れた木が落ちるのを見ていた。

枝は手から離れると共に灰になって消えた。

もう何も考える気にはならない。

多分、剣技部門の優勝は目白さんだろう。

目白さんに勝てるものがいたら紹介して欲しいくらいだ。


「あの枝が折れるんだけど。」


目白さんを真似して壁に枝を振ったが先に枝が折れてしまった。


「枝に意識を移すのよ。どうすれば力が分散しないかって。それが出来るまでは次には進めないわね。」


まじですか。







闘技大会まであと一ヶ月というところ。


「剣の扱いまでよく慣れてきたと思うわよ。」


俺は木の枝から卒業し木剣で目白さんと実戦で戦っていた。


「全くそうは思えないですけどね。」

「最初に比べたら成長してるわよ。」


俺の上段振り下ろしを目白さんは軽々受け流した。

俺は体勢を崩し地面に倒れた。

すぐ起きあがろうとするも目の前に目白さんの木剣があった。


「やっぱり強いですね。」

「私に勝つなんて夢のまた夢よ。」


闘技大会会場は、今学内予選を行なっているから使えない。


「予選でも見に行きますか。」

「気休めにはいいと思うわ。」


フィオナはというとアルバート達に魔法部門に出るための特訓をしに行った。


「あの人強いわね。」


会場について一言目の言葉はそれだった。


「勝者、クロム・アルベルト。」


審判の言葉に会場から歓声が上がった。


「予選なのに人がたくさんいますね。」

「そうね……」


意味深な言葉を返してきた目白さんに疑問を思いつつ試合を観戦した。


「さっきの人、どこが強いんですか?」

「え?あぁ、あいつ普通に嫌いなのよ。高学年進級試験の時、私を置いて走って行ってそれで禁忌魔法陣に引っかかったのよ。」


目白さんのペアってあの人だったのか。


「それなのに、無駄に剣筋は乱れないし強いから嫌いなのよ。」


そう言って目白さんは会場から出ていった。

目白さんにも色々事情があるんだな。


「それにしても総合部門の予選、どうなるかだな。」


優勝、とまでは言わないが特待生としていい成績は出したいところだ。

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