第67話 変異マヨルダ
「絶対にテントの近くに入らせるなよ。」
アルバートがテントの周りを囲む三人に言った。
「目白さんはまだ動けない。絶対に傷つけはさせません。」
ジェイミーも言った。
ここにいる四人は全員先ほど、目白さんに魔力封印を教えてもらった。
目白さんに教えてもらっていた時は、五人いたがノアはフィオナを助けるために走って行った。
「行くぞ。魔力封印!」
アルバートが先人を切って人形に魔法を撃った。
「まじか、すげーな。さっきまで俺たちが苦労していた人形が夢のように崩れていったぞ!」
そう思うのも仕方がないだろう。
グレイとフィオナが出て行ってしばらく経った時、急に空から黒い塊が落ちてきたのだ。
それがみるみる、動き出し人のようになった。
五人で対処しようと、魔法を撃ち込むと一回は倒れ込むもののすぐに起き上がってくる。
その後はそれの繰り返し。
そうやって消耗戦が続き、ふとした時にテントから目白さんが出てきた。
そんな目白さんを何とかベッドに連れ戻し魔力封印を教えてもらったということだ。
「油断してはいけませんよ。いかなる敵でも想像の斜め上に行くことがありますので。」
まるで実体験のようにマロンが言った。
「そうよ。こいつらも急に後ろから現れるかもしれないんだから。」
ローズが言った。
その頃、テント内にいる目白さんは何とかして戦いに行こうとしていた。
「私だけ戦わないなんて……」
体の痛みを我慢しながらベッドの中から這い出る。
「アッ!…………」
ベッドから出ようとするとそのまま体が崩れ落ちた。
感覚が麻痺して、思ったように力が入らなかったのだ。
「こんなところで……私は…」
「目白さん!まだダメです!」
ベッドから起きた時の音を聞きつけたのかローズが入ってきた。
「ダメなの……私が、やらなきゃ。」
ローズに体を支えてもらい体を起こした。
「外では、みんな戦って、私だけ寝ているなんて。」
「目白さんは私たちに教えてくれたじゃない。魔力封印のこと。」
「でも、私はみんなに剣を向けた。」
「とにかく、まだ寝ててね。」
そう言うと急ぐようにローズはテントから出て行った。
もう一度、ベッドに横たわり考えた。
自分は何をするべきなのだろうか、と。
「どうした?そんなものなのか?」
「お前にまだ俺は攻撃していないぞ。」
「それが、追い詰めているということだろう。もうお前も体が限界を迎えるであろう。」
度重なる戦闘で俺の体はかなり重くなっていた。
そのせいなのか、魔法を撃つことすら難しくなっている。
「まだこんなところで倒れるなよ。」
マヨルダがそう言うと俺の方へ向けて爪を立てて攻撃してきた。
そんな攻撃を俺は避けて顔面に一発水素爆発球を撃ち込んだ。
「アァッッ……なぜ拒む?」
少々、顔を押さえてマヨルダは怯んだ。
が、すぐに立て直しマヨルダは俺に聞いてきた。
「お前はここにきた時点で私に殺されることは決まっている。」
魔法でマヨルダは黒い球を作って俺の方へと大量に撃ち込んできた。
所々、痛み重い体を動かして横に走った。
「なのに、なぜ!なぜここまで抗う?」
そんなマヨルダの発言に俺は避けながら答える。
「俺はな、お前如きに殺される事はないんだよ。お前をここに入れた古代の先人は見た事はないからわからないが悪いやつなのかもな。」
さらに追撃してくるマヨルダの攻撃を避けながら答えた。
「だからって、お前にも何か出来たはずだ。」
隙を見てマヨルダに獄火球を撃ち込んだ。
「うるさい。黙れっ!!」
直後、マヨルダの体から大量の黒い物体が飛び出し空間全体に張り付いた。
「マズっ!」
周りを見ていたせいか足元を掬い取られた。
腰の位置にまで黒い物体は、巻き付いてきた。
そして、空中に逆さ吊りにされた。
どうにかして黒い物体を剥がそうと魔力を使おうとするが魔力が使えない。
「何でだよっ!」
「流石のお前も、魔力を封じればただの人間だな。お前の体から魔力が無くなるのはいつだろうな。」
まさか。
こいつは俺から魔力を抜き出していると言うのか?
「ありえないと思ったか?私はもう後戻りは出来ない!」
もはや元の姿の無くなったマヨルダが姿を現した。
肌の色は変色し、髪の毛は足元まで伸び真っ黒なドレスを着ていた。
「これで終わりだ。」
マヨルダは、手から黒い穴を作り出し俺の方へと投げた。
「クソがっ……」
もう無理だと思った刹那、何かが切り裂かれる音がした。
そして、俺は吊り上げられていたが黒い物体が斬られ地面に落ちた。
「痛っ……」
辺りを見回すと前の方に大きな穴が空いていた。
そして、そこには剣を持った人が立っていた。
「あなたが負けてどうするのよ。」
そこにいた人は、そう言葉を発した
その言葉で俺はそこにいる人が誰なのかを理解した。
「目白さん………」




