第65話 古代の先人
「目白さんを解放してもらおうか。」
俺は膝をついてその場から動かないマヨルダに対して言った。
「はは。良いだろう。まさか本当に攻撃を当てるとはな。お前を実験材料として取ったウィリアムの考えることも分からんでもない。」
ウィリアム?と頭に浮かんだが、すぐに思い出した。
体が変異して相方まで殺してしまった男だ。
「ウィリアムは何も思わないのか。」
「ウィリアムか。ここにいる連中は元々古代の先人に神が攻めてくる原因となりうると判断されたものだけだ。そして、そいつらをこの海底都市、ホッ・カイドウに閉じ込める。」
何を言っている?
古代の先人が神が攻めてくる原因となる人を閉じ込めるだと?
「訳がわからないな。ここは、神によって滅ぼされた場所のはず。」
「神に滅ぼされた?私からすればそっちがおかしいぞ。ここはな、神に滅ぼされた都市などでは無い。神に見つからないよう作られた究極の牢獄なんだよ。」
今マヨルダが言ったことが事実かどうかは分からない。
でもこれがもし本当ならば古代の先人は文明の進化を促したのではなく、文明の進化を操ったことになる。
そして、神に攻撃される原因を見つければすぐにここへ送る。
「お前だってそうだろ。古代の先人はもう死んだはず。だが、なおここに来ているという事はお前が神に滅ぼされるような原因を作る人間と判断されたからだ。」
神に攻撃される原因。
ここにくる前に俺と目白さんは禁忌魔法陣を踏んだ。
それがもしかすると神に攻撃される原因を摘発するためのものだとしたら。
「今まで何人もそういう奴が来ては殺していた。最初に入れられた私たちの義務だからな。」
ここに来たやつというのは全員俺のような異世界人なのかもしれない。
外の世界の知識を使い都市を発展させ神を呼ぶのを防ぐために作られたとでもいうのか。
これ以上考えても無駄だ。
あくまでマヨルダの話が本当だった場合だ。
事実では無いかもしれない。
「これを見ろ。」
マヨルダは自身の服を脱ぎ胸を見せてきた。
そこには鎖の形をしたものが胸から首にかけて掛けられていた。
「ここに来た奴を殺し損ねれば私たち最初の『原始』はこの鎖に縛られ肉体を切断される。」
鎖を指でなぞりながらマヨルダは話し続けた。
「彼らはいつも見ていると言った。だから、ここで私が失敗すれば私は死ぬのだ!」
手に注射器が握られていた。
「まずい。やめっ!」
だが、一歩間に合わず注射器はマヨルダの胸の鎖の部分に突き刺さった。
「アッ……見ているか。お前らの作ったこの場を私が制圧してやる。」
マヨルダの体がどんどんと溶けていった。
地面は黒く染まり辺りからは何か黒い木のようなものが生えてきた。
「何だよこれ!」
足が黒いものに取られ逆さ吊りにされた。
「せいぜい侵食から逃げ惑うのだ。」
黒いものからマヨルダの声が聞こえ、俺は思い切り投げられた。
空中で魔法壁を展開し、受け身の体制をとる。
「兄さん!?」
フィオナの声が聞こえた。
「あぁ、とりあえずみんなの所へ案内してくれ。」
「はい。」
テントの中へ入り全員に今の状況を伝えた。
「そういえば、テントに集まっているけど、目白さんはどうなったんだ?」
「それはですね……」
フィオナが話し始めた。
「フィオナまずい。このままじゃ魔法陣が持たない!」
魔法陣に魔力を送るアルバートが言った。
「もう少しだけ耐えて。」
「いや、もう無理だよ!」
ローズが言った瞬間、魔法陣はパキン!という大きな音を立てて崩れ去った。
「間に合わない!」
ジェイミーに向かって目白さんは剣を振り下ろそうとしていた。
当たった、と思った時、目白さんは地面に剣を突き刺した。
「え?」
おそらく全員がそう思っただろう。
そして、目白さんはその場に倒れた。
「目白さん?大丈夫ですか?」
フィオナが近くに寄って肩を叩く。
うっすら目が空き目白さんが答える。
「ええ。ごめんなさい。意識はあったけど、抗えなかった……。」
「いえ、目白さん。あなたはよく耐えたわ。」
そう言い終わった時、目白さんの意識は切れた。
「ということがあったんです。」
「なるほど。じゃあ、目白さんは無事なんだな。」
「はい、奥で休んで貰っています。」
奥から出てきたノアが言った。
「とにかく、時間がない。ここも時期に侵食される。俺とフィオナでマヨルダを止める。みんなはここを守ってくれ。」
「また、グレイ様が危険に……。」
近くで聞いていたマロンが言ってきた。
「俺なら大丈夫だ。心配そうな顔をするな。きっと生きて帰ってくる。」
そう。
生きて帰って古代の先人の本当の目的について調べなければ。
「では行きましょうか。兄さん。」
「ああ。」
絶対に生きて全員で帰る。
そう誓ってフィオナと共にテントを出て、マヨルダがいる方向へと移動した。




