第5話 魔法訓練
「よし。じゃあ始めるぞ。」
「うん。わかったよ兄さん!」
元気良い声が俺の部屋に響き渡った。まずは、魔法について話すか。
「まずな、魔法っていうのは、自分の体内にある魔力もそうだけど、空気中にある魔力も吸収してるんだよ。で、その魔力を身体に入れて出すんじゃなくて、身体に溜める。それがお兄ちゃんのやっていることだ。まぁものは試し。まずは魔力撃ってみよう。」
それで魔力がどんなものか掴んでくれたらいいな。そう思う。
「ふんんん…がはあぁぁ」
フィオナがなかなか苦戦しているので、俺がアドバイスをする。
「身体に巡っている魔力を、そのまま手のひらに集める感じだ。で、溜まったと思ったら放出する感じだ。」
「こうでしょうか?」
フィオナが俺に聞いてきたから、俺はフィオナの手を見た。しっかりと魔力が集まっている。
「じゃあそれを体から離すんだ」
「はい!」
パンッという音と共にガラスが割れた。その音に気づいたのか下の階からアーシャとヘレナさんがこっちへきた。
「大丈夫?怪我してない?」
「はい。お母様大丈夫ですよ。」
俺は、窓ガラスを隠しながらそうやって言った。
「あんまり無理しちゃダメよ」
そう言ってアーシャとヘレナさんは下の階に行った。
「じゃあフィオナ。これで魔力がどんなものかわかったか?」
俺はフィオナに聞いた。
「うーん。なんか変な感じは、掴み取れました。」
多分それがフィオナの感じた魔力だ。
「よし。じゃあそれを空気中から探すんだ。でそれを身体に吸収するんだ」
フィオナは、集中していた。1分後くらいにフィオナは、俺に言ってきた。
「兄さん!魔力が回復しました!」
そう。それこそが俺の求めていた感覚だ。
「そうだ。その感覚を掴め。明日からは、それを使いつつ魔法を出す訓練だ。」
つまり、魔力を回復しながら魔法を使うってことだ。繊細な調整が必要だが、それが使えるだけでだいぶ身体が楽になる。
ー3年後ー
今日は記念すべき日だ。
何とフィオナが5歳になった。
俺は、7歳になった。
今ではもうフィオナも俺も大体の魔法を使えて、力加減もコントロールできる。
が、やはりレベル10の魔法は使えない。身体がその負荷に耐えられず魔法が出ない。
まぁまだ7歳だ。大丈夫だろう。
フィオナも俺もセツシート大学の特待生を目指す。
特待生は、男子と女子それぞれ入試の上位3人が選ばれる。
魔法の方は、ナックルが大丈夫と言っていたが、問題は筆記試験だ。
ナックルが言うには、セツシート大学の筆記試験は、この世界で最も難しいテストの一つだ。
普通科の人は、実技による点数はない。
だから、実技で点数を稼げない。
そのおかげで普通科の優等生は天才だ。
セツシート大学は、有名な学者や研究者を多く輩出している。
そのほぼ全員が普通科だ。
だが俺とフィオナは、魔法科を受ける。
しかし、解く問題は、普通科と同じだ。
そのため、魔法は出来ても筆記試験が駄目なら特待生どころか、合格すら危うい。
特待生をなぜ目指すかと言うと、学費免除があるからだ。
正直、我が家は2人も学校に行かせられるほど、お金はない。
確かに他の家よりは、裕福だが2人分の学費は払えないらしい。
だから、俺もフィオナも毎日勉強している。
「なぁグレイ。お前大丈夫なのか?」
は?急になんだよ。
「何のことですか?お父様。」
「そんなの決まってるだろうがよ。お前、筆記試験点数取れそうなのか?」
あぁそのことか。
まぁその事は、大丈夫だ。
セツシート大学公表の過去問を見てみたが、簡単だった。まるで小学6年生のテストだ。
でもまぁそれを8歳で受けて合格する人がいるんだよなぁ。
最初は、どんな問題か怖かったが、実際に見てみたらそこまでだった。
だが問題は、フィオナだ。
フィオナが果たして8歳で小6の問題を解けるだろうか?いや、そんな事は考えない方がいい。
だが試験の難易度は、年齢と共に上昇する。
でもそのこともまたぼちぼち考えていけばいい。
ー3年後ー
いよいよ試験一週間前だ。フィオナも俺が今日まで徹底的に筆記試験を手伝い、過去問なら9割は、絶対にとれるようになった。
「いいかお前たち。今年のセツシート大学の時程は、1日目にまず筆記試験2日目に実技試験がある。もし筆記試験が自信がなくても気にするなよ。実技試験に支障が出たら困るからな。まぁなにしろ自分を信じろ。今日は、早めに寝ろ。」セツシート大学は、受験生の家まで送り迎えしてくれる学校だ。俺の家がある場所からは、6日かかる。だから明日から迎えがきてそのまま馬車でセツシート大学まだ行きそのまま筆記試験だ。いよいよ明日かぁ。そんな思いを胸に秘め俺とフィオナは、眠りについた。
ー次の日ー
次の日は、朝が早かった。
迎えは、12時ごろに来るらしいが、セツシート大学に移動中は、勉強が出来ない。
よって今のうちに不安なところを潰しておけと言うが、俺は知っている。
「試験前は、問題集は見るな!」ってドラ⚪︎ン桜の⚪︎木先生が言っていた。
だから俺もフィオナも勉強しなかったが、栄養はしっかり取り、家に行ってきますと言っていた。
合格すると家にもう帰らないかもしれないからな。
俺は何としても合格しなければいけない。
そんなことを考えていたら、迎えがきた。
持ち物は、何もいらないと迎えに言われたので、そのまま何も持っていかず馬車に乗った。
「なぁ、フィオナ。特待生に絶対なろうな。」
俺は、フィオナにこう言った。
「兄さんこそ、油断は禁物ですよ。」
移動中は、特に何もなかった。
食事は、すべて馬車に乗っている人が用意して、その他毛布、水、簡易トイレも馬車についていた。
外観は、そんなに大きくないのに中はすごく広く感じたので、馬車に乗っているセツシート大学の人に聞いてみた。
「あのーすいません。この馬車なんか広く感じるのですが、どう言う原理ですか?」
「おっ、兄ちゃん。いいことを聞くな。さすがは、ナックルの息子だぜ。この馬車はな、縮小の結界が貼ってあるんだ。作ったのは、セツシート大学の美しき華のおっとこの話は、兄ちゃんがセツシート大学に受かったらな。」
俺の知らない魔法だな。
ナックルたちと時代が変わったんだな。
そんなこんなで6日と言う期間は、思ったより早かった。
セツシート大学の試験は、男女で分けられる。
魔法科は、カプセルホテルみたいなのが振り分けられる。
だから馬車を降りたら試験が終わるまでフィオナとは、会えないが俺は全く持って心配していない。
フィオナなら大丈夫。この日のためにすごく準備をしてきたじゃないか。
セツシート大学に、5時には到着した。
この大学は、この世界では最も美しく、入るのが難しい学校だ。
この学校のメインといえばやはり図書館。
図書館は、なんと地下3階から地上5階までまである。
そしてこの時計台だ。
セツシート大学を卒業し、歴史に名を刻んだ人達や、卒業生などが記されている、博物館のような場所だ。
受験会場まで歩いて緊張をほぐす。
フィオナは、馬車のところで別れたが問題ないだろう。
そして、色々と考えていたら遂に筆記試験の会場に着いた。
いよいよ始まるんだ。
少し緊張していたが問題ないだろう。
そう言う気持ちで、俺は試験会場に足を踏み入れた。