第50話 城主
ーグレイ視点ー
「ほんと何もないな。」
先ほど背の高い女が入って行った穴の中に重要なものがあったのだろうが俺はギリギリ扉が穴が閉じるのに間に合わなかったのだ。
『レイ…グレイ聞こえてる?聞こえてるなら返事をして。』
どこからともなくそんな声が聞こえてきた。
声が聞こえて来た場所は俺のポケットの中からだった。
その声は慌てているかのような口調だった。
『その声…もしかして目白さんですか?何かあったんですか?』
ポケットの中から取り出した魔法石に向かって語りかけた。
今思えば、これを作ったのは俺だが実際にこういう場面で使うのは初めてだな。
『黒いローブを被った女に出会った?』
『いや、背の高い女に会った。』
『そう。この城の連中はみんな私たちを殺しに来てるわ。気をつけ…』
言葉を言い終わるより前に魔法石から聞こえる言葉が聞こえなくなった。
「あらあら、サーシャが死んだと聞いて地下に行こうとしたらこんな所に人がいるじゃない。」
はっ、と思い後ろを向いた。
そこには見上げるほどの大きさの女がたたずんでいた。
「だれ…だ……」
圧倒的な威圧をかけられた。
今まで感じたことのないほどの恐怖心。
そしてこの恐怖心が何かをすぐに理解した。
殺意。
圧倒的な殺意だ。
その中でやっとのことで喉から出た言葉がその三文字だった。
「私は今はこの城いや、この空間を収めているマヨルダだ。」
この空間ってもしかして、この海の中にある街の全てってことか?
「ええそうよ。」
え?
どういうことだ?
「私はあんた達人間の心が読めるのよ。」
「ぐっ…」
何も考えることはできなかった。
ふと自分の腹を見ると鋭い爪のようなものが刺さっていた。
「さよなら。人間。」
その言葉を最後に俺の意識は途絶えた。
ーメジロ・ユイ視点ー
思ったよりもみんなへ連絡することが遅れている。
廊下を右へ左へ曲がりながら
『グレイ?グレイ聞こえてる?聞こえてるなら返事をして。』
『その声…もしかして目白さんですか?何かあったんですか?』
何度か呼びかけていると魔法石から声が聞こえて来た。
『黒いローブを被った女に出会った?』
『いや、背の高い女に会った。』
『そう。この城の連中はみんな私たちを殺しに来てるわ。気をつけ…』
グレイと話していると前から女性の声が聞こえて来たので強制的に魔法石の通信を切って、近くの物陰へと移動した。
「なんで!?何で答えないのよ!サーシャ!」
前から現れたのは先ほど倒したはずのローブを着た女、では無かった。
理由は単純。
明らかに先ほどまで戦っていた女と声の高さや口調が全くと言っていいほど違っていたからだ。
そして、先ほど倒した女は塵になって消えているはずだ。
「行ったわね。」
後ろを向いてしっかりと女がいなくなったかどうか確かめた。
誰もいないことを確認したらまた廊下に戻り捜索を続けることにした。




