第42話 ボス部屋
「そろそろ行っていいかしら?」
「どうでしょう。私はいつでも行けますよ。」
ボス部屋の前の休息地帯で休むこと約15分間。
全員もう十分休憩を取れたと思い、横にいたマロンに聞いたが個人個人に聞いてみないと流石にわからないか。
「みんなもう出発してもいいかしら?」
休んでいた三人に向けて喋りかけると私の方を向いてこくりと頷いた。
「待ってたぜ。」
「ついにボス戦か…どんな奴なんだろうね。」
「もっと落ち着いてくださいよ。ここは最下層のボス部屋の前なんですよ!」
と三人にいつものような言い合いを聞かされた。
「じゃあ行きましょうか。」
前に向かって歩き重く大きなドアを開けた。
「私から離れないようにして。」
後ろを歩く三人にむけてそう言った。
「えっ…」
部屋の中に入った時、思わずそう言ってしまった。
先ほどまでの薄暗いダンジョンとは打って変わってその部屋は夜だった。
「なんだここ…」
中へ入ってきたアルバートが言った。
天井には雲ひとつない美しい星空が広がっている。
「みんな注意して。いつどこから来るかわからないから。」
部屋の中はもはや部屋ではなく大きな草原だった。
前には少し小高い丘があった。
「誰かいる…」
警戒していたローズがその丘の方を指さして言った。
丘の上からは人の形をした影が歩いてきた。
「兄さん!」
その人影を一目見た瞬間、前にいる人物が誰だかわかった。
「フィオナ様!あれはグレイ様じゃないです!」
走って行こうとしたが後ろからノアに捕まれ動きを封じられた。
「何を言ってるの!あれは兄さんじゃ…な…い…」
こちらに歩いてくる人影を改めて見ていると一歩一歩こちらに近づくにつれて体型がどんどん大きくなり三メートルは越えるであろう大きな男になった。
目の前にいる化け物は全身を黒いコートのようなもので身を包んでいた。
一歩一歩ゆっくりとこちらに向かってきた。
「みんな避けて!」
右手を大きく振り上げて私たちの方へ振り降ろしてきた。
ドカーン、と大きな音がして目の前の男が攻撃した場所は床を粉々に打ち砕いていた。
人の形をしていても恐らくあれでは話は通じないだろう。
「みんなで協力してあの化け物を倒すわよ。」
「どうやって…」
後方にいたローズが聞いてきた。
確かに目の前にいる化け物を倒す方法は今はわからない。
「とりあえず隙が出来たら魔法を撃ち込んでいくわよ。」
今はこれくらいしか出来ない。
魔法を撃ち込み続けて効かないということはないだろう。
「電気球」
アルバートが床から起きあがろうとした化け物に向けて電気球を撃った。
あたりに落ちた雷が全て化け物の方へ向かった。
流石にあれだけの電流を流されて起き上がることはできないだろうと思ったがそんなことがあるわけがない。
余裕の表情でまたこっちの方を向いて歩いてきた。
「マジかよ…」
魔法を撃ったアルバートが声を漏らす。
そのまま化け物は止まらず右手を大きく横に振って殴りかかってきた。
「獄水球」
咄嗟に避けて後ろから至近距離でカウンターをするも少しよろめいただけで実際はダメージはほとんどないだろう。
「くっ…」
この魔法も通じないのか、と頭の中で思い目の前の化け物を倒す方法を考えた。
唯一の救いは目の前のこいつが魔法を使わないことだろう。
「フィオナ様。この化け物は倒せません。ここは一旦撤退を…」
火炎球を撃ちながらノアが言ってきた。
ふと兄さんと一緒にいた入学試験の実技試験のことを思い出す。
そして、脳裏に一つの魔法が思い浮かんだ。
「あと一つだけ魔法を試させて。」
そう言うとノアとマロンは何の魔法を撃つのか分かったかのように動き魔法障壁を作り出した。
もちろん兄さんに教えられた一番強い魔法障壁だ。
「みんな、ノアとマロンが作る魔法障壁の中に入って。」
昔、兄さんが入学試験の時に実技試験の時に使っていた魔法。
屋敷で一度か二度の威力を弱めて使ったがそれでも屋敷の玄関は吹っ飛んだ。
そのせいでもう二度と使うなと言われたがこういう時に使えということだろう。
まだ本気で撃ったことはないがこの魔法を耐えてしまえばいよいよ対策が出来なくなる。
そう思い後ろに飛んで化け物から距離をとり魔法の準備をしだした。
「フィオナ。何を…」
ローズが聞いてきたが今はそれに答えている暇はない。
下手をすれば魔法が暴発してしまい全員死んでしまうかもしれない。
「水素爆発球!」
撃ち込んだ魔法は見事に目の前にいる化け物に当たり、辺りは目を焼くような眩しさに包まれた。
その後、天井が落ちてくると思いきや落ちたのは地面だった。
自分の足元を支えていた地面がなくなりつつある中、私は冷静に風魔法で自分を浮かした。
「みんな!」
すぐに後ろを見ると五人はノアとマロンが作った結界の中に入り風魔法で浮いていた。
「フィオナ様。奥の扉に入りましょう。いつまでもここにいても仕方ありません。」
マロンが風魔法を維持しながら行ってきた。
「ええ。そうね。」
そう言って私は奥の扉へと入り、全員扉の中に入ったことを確認すると扉を閉めた。




