第40話 ダンジョン視察準備
「遅いわね。」
街の入り口で私とノアとマロンは待った。
昨日のうちにそれぞれの泊まっている部屋へ尋ねた。
部屋の中では、明日は街の入り口に九時に集合してダンジョンの視察に行くと言ったのだが来ない。
「もう先に行きましょうか?」
横で立っていたノアが提案してきた。
「もう少しだけ待っておきましょう。彼らだって目的地のダンジョンの視察なんて行きたいに決まっているじゃない。きっと来るわ。」
そう言うとノアも黙って門の前に立った。
「フィオナ様。あれはなんでしょうか?」
後ろからマロンが街の方向を指差して言ったが何もいない。
「誰もいないけど…」
そう言った瞬間マロンが指差して言った方向から猛スピードで小さな点のようなものが見えてきた。
だんだんと近づいてくるとそれが何なのかは私にはわからなかった。
なぜなら、顔には黒いフードを被っており誰はわからなかった。
どんどん近づいて来てやがてそれは私たちの十メートルほど先で止まった。
「だからもうちょっと早く出ようって言っただろ…」
まず最初に聞こえたのは男の声だった。
なんだか聞き覚えのある声だった。
「そんなこと言ったって…わたし…知らないわよ…」
息を切らしながら後ろの方で女の人の声がした。
この声でわたしは確信した。
前にいる人はわたしが待っているアルバートとローズとジェイミーだということが。
「なんで私をみるのよ!道を間違えるなんて夢にも思わないでしょ!」
アルバートとジェイミーがローズを見ていたのでローズが弁解しようとしていた。
先ほどの話からするにどうやら宿屋を出るのが遅くなり道を間違えたからこんな時間になってしまったのだろう。
「今ここで争っている暇はないでしょ。早く視察に行ってダンジョンがどうなっているか見て兄さんを探さないと。」
と私の前で言い争っている三人に向けて言うと三人はピタリと喧嘩をやめて私の方を見てきた。
「そうね。」
「こんなことしてる暇なんてないよな。」
と三人とも先ほどの喧嘩を忘れたかのような振る舞いをして言ってきた。
「じゃあ、行ってくるわ。」
私は後ろにいたノアとマロンに手を振った。
「ちょっと待って。」
歩こうとしたらジェイミーが手を掴んできた。
「何?」
「ノアさんとマロンさんはどうするの?」
「今日は少人数で行くわ。ノアとマロンはここで待っていてもらうわ。」
そう言って私たちは街を出てダンジョンに向かった。
「これが海か…」
アルバートが崖の上に立ちその上から下の方にある青ざめた海を眺めた。
アルバートはずっと内陸で育ったため海というものを見たことがないと言っていた。
今私たちがいるのは先ほどの町から十キロメートルほどの場所だ。
ダンジョンの入り口はこの先の森の中にあるらしい。
「さっきの最寄りの街でもそうだったけどここだといっそう寒く感じるわね。」
ジェイミーが手をこすりながら言ってきた。
寒いというのはセツシートの街に比べたらという話だろう。
学校で習った授業では、
『だホッ・カイドウはこのセツシートやホッ・カイドウの周りの街とは比べものにならないくらいの寒さでその寒さを生かした地域独特の生産物も作られていた。』
ということらしい。
これより寒くなると冬場はどれほど寒いのか想像もつかなくなる。
「確かにちょっと寒いわね。」
ローズもジェイミーに続けて言った。
「なぁ、あそこら辺の少し黒い部分がホッ・カイドウってことか?」
崖の上から遠くを眺めていたアルバートが海の方を指差して言った。
「え〜。どこにあるの?」
ローズもアルバートの立っている崖まで言ってアルバートが指差した方向を見ていた。
その隣にはジェイミーも居てアルバートの言うホッ・カイドウを探していた。
「ねえローズ。あれじゃない?」
「もしかしてあのちょっとだけ黒ずんでいるところ?」
「そうじゃないか?学校でもホッ・カイドウは海底深くに沈んでしまった、って言ってただろ。」
「そんなことも言ってたわね。」
私もホッ・カイドウがどこにあるのかくらいは確認しておきたかったので、アルバートたちのいる方へ向かった。
「どれがホッ・カイドウなの?」
私が聞くと三人は同じような方向を指差した。
「あれ。」
「あそこ。」
「あれです。」
と三人とも一斉に言った。
目を凝らして辺りを見回してみると周りとは明らかに色が違う場所を見つけた。
おそらくそこが海底に沈んだ幻の都市『ホッ・カイドウ』だろう。
「じゃあホッ・カイドウも見たことだしダンジョンに行きましょうか。」
今回ここまできた目的がホッ・カイドウを見ることになる所だったので早めにダンジョンへ行こうと誘った。
すると三人もあっさり了承し私たちは森の中にあるダンジョンに向かって歩いて行った。
「これ、何語なんだろう?」
先ほどの場所から少し歩いたところにある森の中。
そこにダンジョンの入り口があり近くに石板があった。
その石板を読もうとローズが先ほどからやっているが全く読めないらしい。
「この文字は以前兄さんが書いたりしていたのを覚えているけど読み方までは教わらなかったわ。」
ローズの近くにある石板をひょいと覗き文字を見た。
こんな時に兄さんがいたらなぁ、と思うが今はいない。
自分の力でなんとかするしかないのだ。
「まあ、とりあえず先に進もうぜ。」
アルバートが石板の前で座り込んでいる私たちに向けて言ってきた。
この石板が何かの注意書きだということではないことを願いながら私たちはダンジョンの中へ入っていった。




