第39話 到着
「さて、じゃあ出発する前に言うことがあるわ。」
昨日、アルバートとローズ、ジェイミーの三人は魔力を身体に取り込むということを習得することが出来た。
ということは魔法を使いながら魔力を回復するという永久機関的なものができるということだ。
「今日からダンジョンまで移動速度を上昇させる魔法を常に使いながら走っていくわよ。それで…」
とそこまで言いかけた時に横からローズが言葉を遮った。
「ちょっと待って。魔法を使いながら走るって言った?しかも常に使っていたら魔力切れを起こしてしまうわよ。」
「昨日、何のために一日ここに停滞したと思っているのですか?」
「なあ、俺たちに魔法を使いながら魔力を身体に取り込めっていうのか?」
ローズに対して返答した回答を聞いてアルバートも口を挟んできた。
「ええ。初めのうちは少し難しいかもしれませんが使っていくと慣れていきますよ。」
「慣れていきますって、そんな無責任な。」
そんな事を言っても私だってそう教わったから仕方ない。
兄さんにあれこれ魔法について教えられていた時も気づけば使えるようになっていた、なんて事はザラにあった。
「まあ、フィオナの言った事は今まで間違ってなかったんだし一回やってみたらいいんじゃない?」
とジェイミーが会話に割り込んで話をつけてくれた。
ジェイミーによって合意した三人は私の後を走ってついてきている。
「そういえば、昨日までいたノアさんとマロンさんはどこに行ったんだ?」
前を行く私の横に少しペースを上げて走ってきたアルバートが話しかけていた。
「ちょっと色々あって先に行ってもらったの。」
色々というのはとても曖昧だが、本当に色々あったのだ。
まず、昨日屋敷に居る料理人にみっちり料理の極意とやらを詰め込まれて帰ってきた。
その後屋敷から連絡がありもう一つ禁忌魔法陣のあるとされるダンジョンの文献が文書を漁っていたD班から連絡があった。
そして、屋敷に居るお手伝いさんとの相談によって、少々疲れているだろうがノアとマロンに連絡のあったダンジョンで調査してもらうことになった。
別れ際に調査はそっちが早く終わるだろうから先に私たちが向かうダンジョンの最寄りの街へ来てと言った。
というようにかなりノアとマロンに負担をかける形になってしまった。
「そういえばもう魔法と魔力の取り込みは出来るようになったの?」
「あれ?なんか知らないうちにできてるな。」
と自分の体を触りながら言った。
最初はかなり騒いでいたがもうすっかり慣れてしまったのだろう。
「出来るようになったのならよかった。」
というとアルバートは少しばかりうなずきまた後ろの方へ戻って行った。
ー三日後ー
「まさか、あの距離をたった三日で移動できるなんて驚いたわね。」
「はい。こんなに早くつけるなんて夢にも思いませんでした。」
「だよな。それも全部フィオナが教えてくれたおかげだけどな。」
と三人はダンジョンの最寄りの小さな街の前にいた。
この三日間はほとんど走り続けていた。
睡眠をとり朝食を食べて走り、昼食を食べて走り、夕食を食べて寝る。
そんな日を続けて三日目にようやく最寄りの街に着いたというわけだ。
「いつまでそこで休んでいるの?もうノアとマロンが待っているから早く行くわよ。」
確かに街に到着して疲れているのはわかるがそれではノアとマロンに申し訳ない。
「あっ、あれじゃない?」
ノアとマロンを探して街中歩き回っていたが、ついにローズがそれらしき人を見つけたようだ。
私も目を凝らしてよく見るがどこにいるかわからない。
一緒にいた期間が短いローズが見つけられて、一緒にいた期間が長い私が見つけられないのはどうかと思ったが、ローズの見ている方向を見てもノアとマロンはいない。
「ねぇ、どこにいるの?」
見当もつかなかったので諦めてローズに聞いた。
「そこに…ってあれ?いなくなってる…でも、さっきまではいたの。」
「みなさんお待ちしておりました。」
三人が私の方を見ていると後ろからそんな声が聞こえた。
「「「うわああぁぁぁ!」」」
三人とも振り向いて驚きながら声を上げていた。
三人の後ろに立っていたのはノアとマロンだった。
「フィオナ様を見つけましたのですぐに移動してきたのですがみなさん気づいておられなかったのでそのまま後ろにいました。」
と何ひとつ表情を変えずにマロンが言ってきた。
そんなこともうしないでください、とローズが怒りながら言っていたので私が仲介に入る。
「何はともあれ見つかってよかったじゃない。明日からダンジョンの攻略に移るから今日は早く休みましょう。」
どこの場にいた三人とノアとマロンに言った。
すると、三人は同じ方向へ歩いて行った。
もう行く場所は決まっているのだろうか?
「ノアとマロンは私に着いてきて。」
「「はい。」」
と返事をして私の後をついてきた。
ノアとマロンが見つからなかった時はどうしようか迷ったが見つかって本当に良かった。
ホッとした気持ちを胸に私たちは3人が歩いて行った方向とは逆方向へ進み始めた。




