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第38話 森の中の魔法訓練


「今日は何するの?もう出発しないといけないって昨日言ってたよね。」


私に呼び出された三人のローズが真っ先に言ってきた。


「そうなんだけど、昨日のあなたたちの実力を見てこのままダンジョンに向かっても死ぬかもしれないから今のうちに身につけられるものは全部身につけようと思って。」


そう言うと三人は口をぽかんと開けて呆然としていた。


「昨日あんだけやったけどまだダメなのか?」


やがて口を開いたのはアルバートだった。


「結構昨日は頑張ったんだけどね。」


とジェイミーもアルバートに続いて言った。


「確かに昨日のあなたたちの魔法は強かったしこれから向かうダンジョンでも通用するでしょう。」

「じゃあ、どこがいけなかったの?」

「それはつまり、魔力の量よ。」


またしても、三人は固まってしまった。

それもそのはずだ。

魔力の量というのは生まれた時から決まっている才能のようなもの。

だが、兄さんはその壁を壊して魔力を身体に取り込むという方法で代用した。

普通の人が聞いたら意味がわからないのかもしれないが今の三人なら少し話せば理解するだろう。


「分かっていないようだから話すわ。私や兄さんは魔力がどれくらいあるわかる?」


そう質問すると固まってしまっていたローズが真っ先に答えた。


「そりゃもちろん、使っても使っても減らないくらい!」

「もっと具体的に話せないのかよ。」

「じゃあ、そんなことを言ってるアルバートが答えたらどうなのよ!」

「お二人とももうみんなで考えましょう。」

 

とローズが話したことをアルバートが反応しそれに反論してジェイミーが止めに入るといういつもの流れができていた。

だが、ローズが答えた回答は一般人ならみんなこう答えるだろう。

いきなり、『身体に魔力を取り込んでいるから』という人はなかなかいないだろう。

いるとしたら魔力の流れが見える人か、兄さんか私に聞いた人くらいだろう。


「三人ともわからないようだから答えるわ。正解は一般人よりも少し多いくらいよ。」

「「「へ?」」」


三人ともどこから出したのかもわからない間抜けな声を出した。


「それはちょっと言い過ぎじゃないかしら?」


ジェイミーが呆れた顔で言ってきたが紛れもない事実である。

実際のところ身体に魔力を取り込むことを思いついた兄さんでさえ、魔力を取り込めなかったら入学も出来なかったというくらいだ。


「いいえ。これは言い過ぎじゃないわ。」

「じゃあ、どうしてフィオナはあんなにレベルの高い魔法を撃って魔力が切れないの?」


ローズが私の求めていた質問をした。

なんで魔力が切れないの?という質問を私は待ち望んでいた。


「それはね、魔力を身体に取り込んでいるからよ。」 

「……………。」


しばらくの間、沈黙が続いた。

やがて、その沈黙をアルバートが破った。


「なあフィオナ。俺たちにもわかるように説明してくれないか?」


他の二人もアルバートの意見に賛成しているのか頷いている。


「説明なんてするより実践した方が早いわ。今から私の言う通りにして。」

「うん。」

「おう。」

「分かったわ。」


と三人とも言った。


「まず、魔力を指先に込めてみて。」


この作法は以前、兄さんがお手伝いさんに教えていた時のやり方だ。


「くっ…。」


三人とも苦戦をしているようだった。


「力を抜いてリラックスして。魔力は、魔法を使う時にだって集めてるのよ。」

「そんなこと言っても魔力単体では難しいよ。」


ローズが言ったこともわからなくはない。

魔法を使う時には魔力を集められているが、魔力単体になると急に出来なくなる。

実際にお手伝いさんに教えていた時も何人かそう言う人たちが居たからだ。

その人たちは三十分もしないうちに兄さんが魔力を使えるようにしたが。


「魔力は魔法みたいに目で見えるようなものじゃないの。だから、自分の手で感じること以外に魔力の感覚を知ることはできないの。」

「そんな〜。」


私の言葉に対してローズが言った。





三十分ほど経っただろうか。

先ほどようやく全員が魔力の感覚を掴めた。


「なんか、魔力って気持ち悪いな。」

「うん、見えないって言うのが余計にね。」

「はい。想像以上でしたね。」 


と各々の感じた魔力の感覚について話し合っていた。

兄さんがいうには魔力の感覚っているのは人それぞれ感じ方が違うらしい。


「その魔力が空気に流れているからそれを掴むの。で見つけたらそれを身体に取り込む。じゃあ、やってみて。」


私の説明を聞いて三人とも集中しだした。






「—そんなことがあったんですか。」


夕食の手伝いをしながら私は今日あったことをノアとマロンに話した。

あの後、三人とも諦めることなく集中して見事に全員魔力を身体に取り込めるようになったのだ。 

その後に応用で魔法を使いながら身体に魔力を取り込む練習をしていた。

集中していてか何時かも気付かずマロンが呼びにきてくれなければ暗くなるまで帰ってこなかっただろう。

隣で夕食を調理していたノアとマロンに今日の報告のついでに手伝いもしたというわけだ。

 

「何はともあれ今日中に覚えられてよかったじゃないですか。明日からは本格的に移動を早めてできるだけ早くダンジョンの最寄りの街に行きましょう。」


ノアが言っていたこの情報は別で捜査してもらっていたお手伝いさんがダンジョンの近くを見ていたら少し大きな街、というか国のようなものを見つけたらしい。


「そうですね。これからどのくらい移動速度を上げましょうか。」


横で火にかけた鍋を混ぜていたマロンが聞いてきた。


「とりあえず魔力を身体に取り込むことが出来るようになったから、移動速度を上げる魔法を各自、自分で魔力を回復しながら使いながら走りましょう。途中で大きなモンスターに出会って逃げ切れなかったら私たちで処分しましよう。」

「そうですか。では、そう伝えましょうか?」

「いえ、私が今日、夕食を食べている時に伝えます。」

「ノア!フィオナ様と喋るのはいいけど手も動かして!もうすぐそれ入れなきゃダメなんだからね。」  


マロンがいうそれとは昨日の魔法訓練で倒したモンスターの肉だ。

モンスターの肉は森で生きているだけあって身がかなり硬いらしい。

料理人が作ったら家畜の牛などと変わらないくらい柔らかくなるらしいのだが、ここには料理人はいない。

屋敷に居るが彼らは屋敷を守っているしこんな事で呼び出していてはストレスも溜まるだろう。

とはいえここにいるのは屋敷の料理人にある程度教え込まれたお手伝い。 

しかも、私と兄さんに専属の二人である。

もちろん料理も美味しく作れると言っていた。


「あれ…?これであってるはずなんだけどな。」


言っていた…。


「違うわよ。いい?マロン。ちゃんと聞いときなさい。これはこっちに入れるのよ。って、こっちじゃないわ!」


言って…。


「屋敷の人はこれでいけるって言ってたのになんでかしら。」


言っ…。


「こっちを見られても困るわよ。」


……。


「一回二人とも屋敷に戻って聞いてきなさい。」


あまりにもグダグダだったので、屋敷に戻るというあまり取りたくない手段を取った。

やむを得ない。


「すぐに戻ってきます。」

「ちょっと待っててください。」


と二人ともそう言って屋敷の方へ瞬間移動を使って行った。



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