第31話 死後の世界
「ん…」
そう言って俺は目を覚ました。
「やっと起きたのね。」
と目白さんの声が聞こえた。目白さんは無事だったんだな。
改めて俺はこの場所を見回した。周りは石で囲まれていて奥に大きな扉があった。
「ここは、どこなんですか?」
「さあ。あなたがヴィンセントを倒すとか言って牢獄で待ってたら下からすごい音がして施設がつぶれてしまって…全くひどい目にあったわ。」
それはすごく申し訳なかった。
確かに倒すと言われて普通の人は施設を壊さないだろう。
でもだ。
あの量の爆発物でまさかあの施設が崩れるとは思わなかった。
だって、入り口にあった書類にこの施設は地下に造られておりって書かれてたからそれくらい頑丈なのかって思うだろ。
確かに天井が崩れるとか少し揺れるとかは予想できたけどまさか施設がそのまま崩れるとは…
「…まあいいわ。とりあえずあの扉の奥に行きましょう。私も気がついたらここであなたが起きるのを待っていたの。だからここがどこかも全くわからないの。」
そう言って目白さんは俺の方を見てから扉の方へ向かっていった。
俺と目白さんで協力して扉を開けた。
中は特に何がいるわけではなく、大きな空間だった。
地面に魔法陣が描かれていること以外では。
「これは乗っても大丈夫よ。多分記憶とかそういう系を再生するやつだから。」
目白さんがいて本当に良かった。俺はこういう暗記系は苦手だからもし危険な魔法陣があってもそのまま上に乗ってしまうかもしれないからな。
俺と目白さんで魔法陣の上に乗るとそれまで全く反応しなかったのに魔法陣全体が白く光出した。
少し光が弱くなり前を見ると一人の男が立っていた。よく目を凝らして見てみるとあれが誰だか分かった。あれは空港の時と飛行機の中にいた人だ。
「みなさんこんにちは。これは魔法陣に刻まれた記憶のようなものだから質問とかには答えられないけど聞いてくれると嬉しい。君たちはいま何のことかと思っているだろう。君たちはヴィンセントを倒す際か倒そうとしている時に何かが起きて死んだ。だからここにいる。」
俺がさっきあの施設壊した時そのまま死んだってことか?
せっかくここまで頑張って来たのにこんな所で死んだのか…
横にいた目白さんを見ると俺と同じことを考えたのか信じられない、という顔をしていた。
「でも大丈夫。君たちは確かに死んだけど実際の死とは程遠い。飛行機に乗った時点で君たちは一時的にダンジョン内での死と現実の死とは切り離されてたんだよ。飛行機の中で君たちはおそらく短い間でも必ず睡眠をとったはずだ。」
そういえば俺も目白さんも飛行機の中で疲れて眠っていたな。
「そこで、もう一度挑戦出来るようにしたんだ。けど、次回はダンジョン内で死んだらここに送られるような機能はなくなる。つまり、本当に死ぬ。先ほどのヴィンセントが死んだ後からの挑戦となる。どうだい。やるとしたらその前の扉を開けて進むといい。やらないのならば右側の扉に行けばいい。右側に行ったらこのダンジョンの入り口に戻るけど、一生元の世界へは戻れない。じゃあ、時間はたっぷりあることだしじっくり決めるといい。」
そう言って魔法陣は光を失い同時に前にいた男も消えた。
「えーと、じゃあどうしましょうか。」
「何を迷っているのよ。もちろん前の扉に行ってさっさとこんな所終わらせて現世に帰るに決まっているじゃない。」
まじか。もう一回死んだら本当に死ぬっていうのにそういうことへの恐怖はないのか?
まあ、俺も現世に帰りたくないと言えば嘘になるがこの先、ヴィンセントよりも強い敵が現れたら対処できないかも知れない。
でも、その時はその時に考えればいいか。
俺と目白さんは前の方にあった扉を開け中に入った。
歩いているうちに気がつけば先ほどの工場の一階にいた。
目の前にはヴィンセントがいた。
そして、目白さんは消えていた。
まず、目の前にいたヴィンセントが生きているかどうか確かめた。
確かめる方法は銃を撃つだけ。
そして銃をヴィンセントに向かって撃ったが触手で跳ね返すことなくそのまま当たった。
おそらく死んでいるだろう。そう思いたい。
ていうか、ここにいた時と同じ持ち物になっていることに今気づいた。
次は目白さんがどこにいるかだ。もし、先ほどと同じなら牢獄にいるだろうから、工場の2階の通路まで上がったその時工場内にアナウンスが流れた。
『ヴィンセントの出現を確認しました。1分後に工場内及び牢獄内を焼却します。まだ残っている従業員は今すぐに避難してください。』
ヴィンセントの出現確認するの遅すぎだろ。正直そんな事を言いたかったが今は時間がない。焼却されたら俺も目白さんもひとたまりもない。
「目白さん!」
そう言って俺は牢獄の前の扉を勢いよく開いた。
「遅い!」
俺が助けに来た時にはもう牢屋の扉は破壊されて目白さんは外に出て来ていた。
「何ボーッとしてるのよ。早くここから出ないと死ぬわよ!」
目白さんに肩を掴まれてやっと自我が戻った。
せっかく全力で走ってここまで来たのに扉を開ければもう外に出ていたなんて俺が来た意味あったのか?
まあ、このおかげで俺が牢屋を開ける手間が省けたわけだけど。
「早く!シャッターが降りて来てる!」
前を行く目白さんが叫んだので俺は前を見た。確かに上からゆっくりと防火シャッターが降りて来た。そのまま、中に入らなかったらその時点で俺は死ぬんだろうな…
だめだ、こんなことを考えるのはやめるんだ。今は目の前のシャッターの奥に行くことだけを考えろ。
前を見ると目白さんはもうシャッターの奥に行って息を整えていた。俺は全力で走って間に合わないと考えて直前の所でシャッターの奥めがけて飛んだ。
見事シャッターが閉まる前に中に入ることに成功した。というか、人生で初めてスライディングしたな。
「危なかったわね。」
息を吸って呼吸を整えてから目白さんの言葉に返した。
「はい。あれはもう焼かれてしまう俺の姿が一瞬見えてしまいましたよ。」
「ふふ。まあ、生きているからいいわ。早くこの施設から脱出しましょう。」
その頃、施設工場内では、あらゆるものが焼きつくされていた。
工場内地下研究施設内にて
研究施設内で長らく眠っていた人物が目を覚ました。それこそが、野田ほのか当人である。
長年にわたるスリープ状態から目覚めてカプセルから出て来た。
「ようやくこの時が来たわね。ふふふ。わははははははは。」
野田ほのかは満面の笑みで施設内を見回した。
「研究施設内をこんな事にしたのはあいつらか。まあいいわ。この力を試すついでに復讐もしましょうか。あなたたちが犯した罪がどれほどのものなのか示してあげましょう。」
そう言って燃え盛る工場内へと歩いていった。




