第29話 ダンジョン攻略⑦
前の方に突き出た心臓を狙って俺は銃の引き金を引いた。
大きな音と共に銃弾は前にいる怪物を捉えた。
心臓に当たったと確信したその時ゆっくりと歩いてきた怪物は背中から出ている触手が少し動いたように見えた。気付いたら銃弾は俺の耳を擦り後ろに飛んでいき窓ガラスをパリンという音を立てて割れた。
幸い俺は怪我がなかったもののものすごい速さで飛んでいった銃弾を触手で受けそれをそのままこちらに返すのは至難の業だ。
そのことを考えるとまともに戦っていたら先にこちらが力尽きるには明白だろう。
そのことも考えてこの怪物と戦うのは避けるのが賢明と判断してあの怪物が入れないほどの場所に逃げることにした。
普通に空港内に入っても怪物は入ってくると考えて近くにあるマンホールに目をつける。あの中ならおそらくあの怪物は入ってこれないはず。
怪物の気を逸らすためもう1発銃を撃ち込んだがやはり先ほどと同じように銃弾を触手で撃ち返したが今度はこちら側に銃弾は飛んで来なかった。
銃弾は怪物の斜め横に飛んでいった。
その銃弾が飛んでいった方向にあった看板にあたり見事怪物の上に落ちた。
この機を逃さず俺は急いで近くのマンホールに行き全力を出してマンホールの蓋を開けた。
これまでにないほど疲れたが蓋を開けて躊躇せずに中に俺は飛び込んだ。
マンホールの中は俺が思っていたより広く匂いもそこまで酷くはなかったがその中がまるで迷路のようにぐねぐねと曲がりくねっており今どこを歩いているのは愚かどこが出口なのかすら分からなかった。
俺はこんなことをしている場合ではないのだ。
この島にいるボスを倒さなければいけないし先ほど別れてしまった目白さんと会わなければならない。
急いでここから抜け出さなければと思っていたら後ろから何かが来ているような感じがした。
振り返ってみてもなにもいない。
だが確かに俺は先ほど何かが来ているように感じた。
最悪の事態に備えて俺は少しばかり小走りになってここから逃げ出そうと探索を再開したその時、後ろから何か黒いものが来ているように見えた。
今度はしっかりとこの目で見たから間違いない。
その黒い何かはどんどんと俺の方へと来た。
だがそこまで早いスピードではなかったのでしばらくじっと見ていると今度はものすごいスピードで先ほどの黒い何かの上をなぞるように大量の触手のようなものが見えた。
おそらくあれは先ほど俺が見たヴェールのようなものの背中から生えていたものとほぼ同じだろう。
これまで歩いてきた通路を埋め尽くすほどの量が襲いかかってきたので俺は走ってその触手から逃げようとしたが、このマンホールの中がくねくね曲がっているせいか全力で走っているうちに方向感覚を失ってしまった。
そしてついに逃げていた前の方向から触手が来てついに挟まれてしまった。
こうなってしまったら俺は対抗する手段がなくなり足を止めた。
後ろから来た触手によって俺は地面に叩きつけられてその反動で地面が割れ俺は先ほどよりもさらに下へと落ちていった。
俺は激しい背中の痛みと共に目が覚めた。
すぐに立ち上がり辺りを見回す。
幸い先ほどの触手はここまでは追ってきていなかったがそこはとても空港の地下とは思えなかった。
「ここはどこなんだ?確か俺は空港に来て怪物から逃げるためにマンホールに入って襲われて地面に落とされてはず…それに空港の下のマンホールからそこまで動いてないのになんでこんな場所があるんだ?ここは地下のはずだろ。」
そう言ったのは目の前に広がる景色が予想外すぎたからだ。
そこは何かの研究施設を彷彿とさせる作りだったからだ。
すぐ前には鉄製の扉があった。
上を見ると穴が空いていたのでおそらくそこから落ちたのだろう。
しかし上を見上げてもどこから落ちたのかはわからない。
おそらくかなりの高さから落ちたのだろう。
それで無傷なのはかなり驚いた。
だが今はそんなことを考えている暇はない。
この場所から脱出せねばと思いドアの方向へと俺は歩いていった。
ドアの先は本当に研究施設のようになっていた。
まっすぐ廊下があったがその横には荷物が入っているように見える木箱があり通路の半分を遮っていた。
廊下の先には部屋があったのでそこに入る。
その部屋は机と椅子が4つ壁際に置かれその横には何かが入ったカプセルのようなものがあったが無視して先へ進む。
しばらく部屋を進んで行った時に俺はこの施設がどういう所なのかわかった。
この施設は、すごく大きい。
何かの研究を行っていたのか部屋も多く実験室も何個かあった。
そして9つ目くらいの部屋に入った時に俺はついにこの施設がどういう目的で作られたのかを知った。
その部屋はほかの部屋よりも大きく作られており前には大きな窓ガラスがあり下には何かよく分からない空間があった。
おそらくあれが行きに通った実験室のうちの1つなのだろう。
後ろは1段上がっておりそこには無数のボタンやモニターがあった。
そしてその上に書類があった。その書類にはこう書いてあった。
この施設はG6の開発・保管及びG6の実験等を行うために作られた施設である。
この施設は地上より80メートル下に作られておりG6の地上への影響を抑えられる高さに作られている。
また、実験にはさまざまな動物を用いておりその処理も安全に行っているため地上に影響はゼロと言っていいほどである。
この施設は冷凍保存を施されておりこの施設に厳重に保管されている野田ほのか様のご意志を継ぐためまた、来るべき時のために用意された施設である。
と書かれていた。
ていうか野田ほのか様って誰だよ。
まずなんで冷凍保存なんて物騒な事をされているんだよ。
ここの研究施設がG6を作ってそれで実験してたってことは俺の前にある窓ガラスの下の実験施設はG6を用いた実験に使ってたってことか?どっちにしろこの施設から逃げるのは簡単では無いのかもしれないな。
もう一枚の資料にはこう書かれていた。
ヴィンセントについて
ヴィンセントとは、G6投与の際に通常の量より遥かに多く身体に入れたものである。
だが、通常はその負荷に耐えられず死んでしまうか爆発してしまう。
なのでヴィンセントは非常に作ることが難しい。
だだし、ヴィンセントはパルワードやヴェールよりも遥かに上の戦闘力と知能を兼ね揃えているため非常に戦闘面で有効であるためヴィンセントは来たるべき時のため地下に保存して置くことを決める。
ヴィンセントか…絶対に戦いたくないな
資料を見終わってこの部屋から出たらそこは何かを作るための工場のようになっていた。
工場の上の通路を通ってまっすぐ行くがここでパルワードが4体ほど奥の扉から出てきたのでしっかりと弱点の頭を狙い撃つ。見事4体全て頭を撃ち抜きその場に倒れた。
工場の奥の扉には今度は何があるのかな、と考えて進むとそこは牢獄になっていた。
長い廊下の両側に3畳ほどの牢屋がずらりと並んでいた。
5つ目の牢屋を横切った時そこには人影があったので中を覗くと見たことのある影が横たわっていた。
そして俺はすぐにそれが誰だかわかった。
「目白さん!」
牢屋を開けようとするが俺の力ではどうにも出来なかった。
奥から目白さんがこちら側に歩いて来た。
だがその速度は非常に遅く足を引きずって右手を押さえながら歩いて来た。
「ここに長いこといたらダメ…また…またあいつが来る…」
その声も非常に微力なものだった。
「あいつって誰ですか?」
「ヴィンセントよ。」
え…でも確かさっきの資料には地下で保存って…
そう聞いていたら俺が入って来た方の扉が大きな音を立てて蹴り飛ばされた。
すぐに反応すると空港で一度戦ったヴェールのようなものがいた。
もしかしてあれがヴィンセント?
いや、怖気付いている場合ではない。俺は目白さんの方へ向かって言い放った。
「目白さん。もう少し待っていてください。」
そう言って俺はヴェールのようなものがいる方向へと歩いて行った。
今度こそ決着をつけると自分の心に言い聞かせて。




