第28話 ダンジョン攻略⑥
「ねえ、起きて。起きなさいよ。」
体を揺さぶられてようやく起きる。目白さんが少し怒った顔で俺のことを見つめていた。
一体なぜ俺は起こされたんだよ。
「なんですか。まだ飛行機は止まってないじゃないですか。せっかくの休みです。もう少しだけ寝かせてください。」
そう言ってもう一度長椅子に横になった。
すると今度は目白さんが俺の手を掴んで長椅子から引きずり下ろした。
バタッと大きな音を立てて俺は地面に叩きつけられた。
地面に落ちるとともに背中に激しい痛みを感じて先ほどまで払いきれないほどあった眠気が一瞬にして無くなった。
「何するんです!人が気持ちよく寝ようとしている時に!」
目白さんに飛び掛かる勢いで詰め寄った。さすがの俺も寝ようとしているところを起こされるならまだしも引きずり下されると怒りを感じた。
「私が何回も起こしたのに起きないからでしょ。最終手段よ。でもこれで起きてよかったわね。」
俺はそんな何回も起こされた記憶はないのだが…
「もしもこれでも起きなかったらどうなってたんですか?」
目白さんの言葉に引っかかった。このままずっと放っておくといけない気がするから早めに聞いてみた。
「そうね。まずは後ろの荷台に行ってもう一回起こしてみるわ。それで起きなかったら近くに銃を撃って音で起こしたわね。それでも無理だったら、操縦席の荷台の開閉ボタンをおしてあなたごと下へ落としてあげたわ。」
うひゃあ、やっぱりこういう発想も俺とは違うな。
「それはともかく何で俺を起こしたんですか?」
何の理由もなく俺の快適な睡眠を妨害をしていたら俺が先ほど目白さんの言っていたことをやるくらい怒る。
「それは、これを見て欲しかったからよ。」
そう言って目白さんは1つのファイルをこちら側に投げてきた。
俺はそのファイルを地面に落とさぬようしっかりとキャッチした。
そのファイルには『ダンジョン攻略本 第1番』と書かれていた。
そのファイルは、非常に薄く紙が3、4枚挟まっているだけだった。
1があると言う事は2とかもあるのだろうか。
全く分からないが少しはこのダンジョンの攻略に役立つかも知れないし、目白さんが直々に渡してきたんだ。
信頼できるだろうからファイルを丁寧に開き1枚目を見る。
まずはこの飛行機に乗り込めた事を褒めよう。
このダンジョンは言わば遊び。
9個のダンジョンをクリアして後の10個目はボーナス。
異世界に来てドキドキした事はあるかい?
僕は残念ながら無い。
強いて言えば神が降りてきた時くらいだろう。
でも君たちはおそらくそんな経験ないだろう。
だから僕が最後に遊びを作ったんだ。
これは先ほども言った通り遊びだ。
クリアしたら魔法石を貰えるのは変わらないけどね。
ともかくこれは攻略本だけど他のやつとは少し違う。
1回敵と会ったり撃退していくとどんどん情報が追加されていく。
けど情報が書かれるまで何分か、かかるから気をつけて。
それとこの飛行機でやっと半分くらいだ。
僕から言えるのは頑張れと言うことだけだからあとは君たち次第だ。
ここまで来たからこのダンジョンを作った僕の名前を教えてあげるよ。
僕の名前は大垣俊介でおおがきしゅんすけだ。今後も登場するかもしれないから覚えておいてね。
と書かれて次の2ページ目には【敵】と書かれていた。
〈パルワード〉
G6が体内に入るまたは身体に接触してしまい、超人的力を得る代わりに自我を失ってしまった者。攻撃方法は素手だがG6により身体能力が大幅に強化され殴った時の威力は電柱を倒すほど。弱点は頭と心臓部分。
〈ヴェール〉
パルワードの変異種。パルワードよりもさらに力が増し体の右手が熊のように大きな腕に変異している。右腕を大きく振り下ろし大きな爪で体の肉をえぐる。危険な箇所は右手だけでなく左手も大きな脅威となる。左手もパルワードと同じく素手だがこれも比べ物にならない。弱点は背中側に浮き出ている心臓。パルワードの変異種だが頭は全くもってダメージはないと思ったほうがいい。
とこれだけだった。まあ、どんどん新しい敵と戦えば新しく情報も追加されていくんだろうな。
「これはすごいですね。」
俺が感心して目白さんに言った。
「そうね。やはりこういう面では古代の先人たちはすごいわね。あっ、あれ空港じゃない?」
そう言って目白さんが窓の外を見たので俺も長椅子から立ち、外を見上げる。確かに空港のようなものが上空から見てとれる。
すると、前の操縦席から声が聞こえてきた。
「まもなくこの飛行機は着陸します。椅子に座りベルトを閉めて着陸時の揺れに備えてください。」
という事はあれが空港で間違いないのだろう。俺と目白さんは操縦席に戻ってベルトを閉めた。やがて飛行機の高度が下がって地上が見えるようになってきた。
飛行機は滑走路に入り安全に着陸した。
こういうのは普通に落ちるかも知れないと思っていたがそんな事はなかった。
飛行機は無事着陸し搭乗口までゆっくりと走り出した。
窓から見たがこの空港はまだG6が撒かれていないのかしっかりと職員の人もいてちらほら観光客もいた。
「この空港はまだ安全みたいですね。」
目白さんはまだ気づいていないようだったので言った。下を向いていた目白さんは前の窓から前を見た。
「それはまだ言えないんじゃないかしら。」
何を言ってるんだ、と言いたかった。俺はしっかりと俺たちと同じ人間を見た。
「どういうことですか。」
俺は気持ちを落ち着かせて目白さんに聞く。
「説明する暇はないからとにかく飛行機に捕まってなさい。」
そう言われたので一応前にあるよく分からないレバーを握っておいた。
すると、大きな音と共に地面が揺れ動いた。
少し時間が経ち窓の前の土煙が去ったあとの空港は1つ目の島とほぼ同じ状態になっていた。
窓ガラスはひび割れ先ほどまですぐそこで働いていた人たちは血を流して倒れていたり、建物の瓦礫に埋まってしまい助けを求めるなど地獄と化していた。
そのあと上空からはヘリコプターの音がした。
「目白さん。これは一体どういう事なんですか…」
目の前で起きる出来事を受け入れられず喉の奥から掠れた声で目白さんに聞いた。
「あのヘリコプターが先ほど何かを落としたのが見えたの。それが数秒後に爆発して今こうなっているの。確かG6はここの地下にあるって言ってたわね。どれくらいの深さにあるのかわ分からないけどもしG6が漏れたら大変なことになるわ。もしG6が漏れたらこの島にいるボスも倒すのは一苦労ね。」
そう言ったことを話してもらっているとやがて飛行機が止まった。
搭乗口に着いたのだ。
しかし、リフトを動かす人など誰もいない。
何か方法を考えるが全く思いつかなかったので目白さんに聞こうと横を向いた時にはもう目白さんはいなかった。後ろでも荷物を物色している。
おそらく何かこの飛行機から降りる方法を探しているのだろう。
別に飛び降りたらいいと思うが地面は先ほどの爆発によりでこぼこになっていた。
もし飛び降りに失敗してしまうとこれからの戦いに支障をきたすかもしれない。
というかまずもっと安全な方法を探しているのだろう。
魔法が使えない今俺たちはほぼ無力に等しい。
怪我はすぐに治らないし、もしも飛び降りに失敗してしまうとこれからの戦いに支障をきたすかもしれない。
そう考えて俺も目白さんのことを助けようと席から立った時またもや予想外のことが起きた。
俺と目白さんの間に鉄骨が飛んできたのだ。
幸い俺は怪我がなかったが目白さんはどうなのか分からない。
「目白さん!大丈夫ですか!」
俺は身の安全を確保すると鉄骨で遮断された飛行機の後ろ側に声を送る。
「ええ。こうなったら飛行機も安全じゃないわ。とりあえず今はこの飛行機から降りることを考えましょう。」
そういうと飛行機にアナウンスが流れた。
「飛行機上部にて火災が発生。爆発の危険性があるので速やかに退避してください。」
そう言われたので逃げることに集中するがこの場所にはもう安全に下へ降りられそうなものはない。
最終手段で一か八かで俺は飛行機のドアを開けて地面へ飛び降りた。
無傷とはいかなかったが右足の打撲程度で済んだ。
地面に降りるとすぐに俺は飛行機から逃げる。
飛行機の爆発に飲み込まれたら骨すら残らないかもしれない。
右足の激痛に耐えながら着実に飛行機から遠ざかっていく。
50メートルくらい離れたところで飛行機は大きな音を立てて爆発した。
その爆風に俺は5メートルほど飛ばされたが、手と膝の皮が捲れる程度だった。
まず第一に目白さんは飛行機から脱出できたのだろうか。
そのことが一番心配だ。
そう考えていると後ろから足音が聞こえた。
俺は目白さんかと思い後ろを振り向くとそこには見たこともない大きな怪物がいた。
基本的にはヴェールと同じような体格だが決定的なのはさらに弱点である背中側に浮き出る心臓が前に来ているかわりにヴェールの体自体に何本もの触手がまとわりついていた。
明確な理由はなかったが直感で分かった。こいつは危険だ、と。
だがこの先へ進むには倒す必要がありそうだということも分かった。
俺は目白さんは無事だと信じてこいつを倒そう手に最初から持っている少し重たいハンドガンの銃を前にいる怪物に向けて発砲した。




