第22話 禁忌魔法陣
消えた。兄さんはもう今ここにはいない。こう言う時兄さんならどうしていた?まず教師に知らせに行く。
そうだ、兄さんはいつも冷静で正しい判断をしてくれる。
白い魔法陣で飛ばされた場所は宿泊施設の近くではなくボス部屋の前だった。
大きな扉を全身でこじ開け中に入る。
中は半径50メートルほどの円形をしていてその奥にはセイクバロンテンが立っていた。
「入試の実技試験以来ね。でも今はあいにくあなたにかまっている暇はないのよ。」
そういうとセイクバロンテンは大きな声で辺りを響かせた。
昔の私なら怖くて一歩も足が動かなかった。
でも今は違う。
体がすごく軽くて早く動ける。
一気にセイクバロンテンの間合まで詰めて、自分の中で出せる最強のレベルの魔法。
水素爆発球を自分の持っている魔力全てを使ってセイクバロンテンを攻撃した。
大きな爆発音と共にセイクバロンテンは跡形もなく消えた。
すると奥にあった部屋が空きその先に転移魔法陣があったので上に乗る。
白い光が収まった時には宿舎の前にいた。そこで急いで教員を見つけて話しかけた。
「大変です!兄さんが…兄さんが禁忌魔法陣でどこかに飛ばされてしまいました!どうすれば…どうすれば…」
近くにいた校長が駆け寄ってきた。
「今すぐこの試験を中止しなさい!今すぐにグレイ・ジュリエットを探してください。残りの教員はここに一年生全員を集めてください。」
指示をテキパキと出していた校長は私に向かって
「フィオナさん。お兄さんの転移した時の状況を聞きたいので一度施設に来てもらえませんか?」
そう言われたので急いで施設で先ほどの赤い魔法陣のことや禁忌魔法陣のことについて話していた。
するとドアが勢いよく開いた。そこには若い男性教師がはあはあ言いながら校長に報告に来ていた。
「校長先生!1番のダンジョンに潜っていたメジロペアのメジロ・ユイさんも転移魔法陣でこの宿舎前に来たらいなかったそうでその魔法陣も赤く光っていたのでおそらく…」
兄さん以外も古代の先人たちと同じ遺伝子を持っていた人がもう1人いた。それが先日特待生になったメジロ・ユイだった。
「事態は深刻だ。特待生3人のうち2人が消えた。今すぐこの情報を教師内で共有し、禁忌魔法陣のことについて調べるぞ。」
そう言って男子教師はドアを閉じて去っていった。
「じゃあ、私たちも広間へ向かいましょう。」
「みなさん。今回の試験は中止となります。理由はまだ言えませんが特待生2人の行方が分からなくなっています。」
校長が言った瞬間広間全体がざわめき出した。
「みなさん動揺する気持ちはわかりますが今は落ち着いて話を聞いてください。みなさんは今から学校に戻ってもらい明日からは授業をしてもらいます。ですがいなくなった生徒を探さなければならないので一部の教師がいなくなる可能性が多いにあります。では解散。」
そう言って生徒たちはセツシート大学に続く転移魔法陣の方向に歩いていった。私もそれに続いてセツシート大学に戻った。
俺が目を覚ました時には前に何かの人影があった。
「あなたもここへ来たのね。」
俺が目を覚ましたことを確認して言ってきた。目を擦りしっかりと見る。そこにいたのは先月特待生になったメジロ・ユイだった。
「あなたもってどう言うことなのか教えてくれないか?」
先ほどの発言の意味が全く分からなかったので聞いてみる。
「あなた自分が乗った魔法陣がどんなのか覚えている?」
魔法陣?ああ、あの赤いやつか。そう言えばフィオナが何か言おうとしてたな。
「あの赤いやつだろ。あれがどうしたんだ?」
「あの魔法陣はね、禁忌魔法陣と言って古代の先人たちが作ったものなの。それで古代の先人たちっていうのが私たちみたいな日本とかの外の世界から来た人たちっていうわけ。あっているでしょう。私は日本からきた目白柚衣よ。」
「俺も日本から来た。目白さんでいいのか?」
座り込んでいた俺は立とうとしながら聞いた。
「ええ。名前なんてどう呼んでくれても構わないわ。」
「でもその古代の人たちめちゃくちゃすごいじゃないか。外の国から来た人専用の魔法陣作るなんてすごいな。」
「あなたねえ、この状況を見てまだそんなことを言えるの?」
俺が感心していると目白が少し怒ったような顔で街の方を指さしてきた。
「どうしてあんなことになってるんだ…」
指さした方向を見た時に自然にこの言葉が出てきた。
そこはセツシートの街ではあったが外壁はボロボロになって一部崩れ落ちていた。
上の方に見えるセツシート大学も時計台は崩れ落ちてほかの建物もヒビが入って今にも崩れそうだった。
「そんなこと私に聞かれても分からないわよ。でもおそらくここはセツシートの未来の姿だと思うの。」
「なんでそんなことを言えるんだ?」
それはそうだ。根拠もなしで未来の姿なんて普通の人なら言えない。
「まずここから見えるセツシート大学のあの右側の棟。宿舎棟は中学年の3年目の時に完成した。まずこれが第1の根拠よ。これで過去ということは無くなった。次にあそこの街の中に入るための門。あの門はまだ完成していなかったけど今は完成している。これが2つ目。だからおそらく未来だということが言える。で、この時代はおそらく何か大きな力によって滅ぼされた後の時代。だから街もあんなに崩れ落ちている。」
優れた観察力だな。短時間とは言えここまで考えられるのは逆にすごいな。
「じゃあ、元の世界に帰る方法はないのか?」
さすがに元の世界に帰る方法くらいあるはずだ。
「知らないわよ。ずっとあなたが起きるまで待っていたのよ。あなたがいないと流石に何がいるか分からないあの街にはいけない。もちろんあなたがこっちに来なかったら1人で探索していたけど、2人いるのなら2人でいた方が安全だからここで待っていたの。」
「あの目白さん。俺もグレイと呼んでくれたら嬉しいです。」
いつまでもあなた、と呼ばれるのは違和感がある。
「わかったわ。じゃあグレイ。早く街のほうに行くわよ。何か脱出の鍵があるかもしれないのだから。」
そう言って門の方に歩いていく目白を小走りで追った。
街の中に入ってみると外で見ていた時よりももっと酷かった。
やがて学校に着きいろんな部屋を見て回ったが人影1つない。
図書館の扉を開けた時、奥の方に魔法陣と石板が設置してあるのが見えた。
それを見た瞬間俺と目白は小走りに駆け寄った。俺は石板を読み、目白は魔法陣の解析を行い出した。石板には文字が書いてあった。
其方らは今の実力では神に勝つことはできない。
だから私たちが持っている力を後世の者に託すことにした。
この世界に散らばっている10個の魔法石がある。
それを全て集め下の魔法陣に嵌め込んだ時、其方らは元の時代に帰り同時に私たちが作った現地点でおそらく最強の魔法を習得することができるだろう。
と書いてあった。その内容を目白さんに伝えると
「この魔法陣に10個の魔法石を嵌め込まないと元の時代に帰れないようね。じゃあ、その魔法石を探しに行きましょうか。」
「でも当てはあるのか?」
しらみつぶしに探していたら何年かかっても元の世界に帰れない訳だからな。
「この魔法陣はこの世界を表しているの。ここがセツシートでこの近くに窪みがあるでしょ。だから多分ここに何かがあってそこに魔法石があるの。」
魔法陣を指さされそっちを見る。確かに10個窪みが空いていてその上にあるのがこの世界の地図だ。
「じゃあその窪みの場所に今から行くってことでいいのか?」
目白さんに聞いてみる。
「ええそうよ。何ぐずぐずしてるの?早く行くわよ。」
そう言って図書館から出ようとしていた。おそらく歩いて行くつもりなんだろう。それは流石に疲れるから俺は瞬間移動を使おうと決めた。
「そんな歩いて行かなくても俺が1秒で連れて行ってあげようか?
図書館を出ようとする目白さんに伝えると顔を歪めて言って来た。
「あなたねぇ、この期に及んでまだそんなことが言える訳なの?」
なんてことだ。まあそりゃ信じてもらえないか。
「まあまあ。とりあえず移動するので俺の体のどこかを掴んで下さい。」
そう言ったら目白さんに睨まれた。あれ?俺なんか変なこと言ったのかな?
「わかったわ。とりあえずあなたの体のどこかを持っていればいいのね。」
半信半疑で俺の手を握られた。その瞬間俺は先ほどの窪みの場所まで瞬間移動をした。
そこは石で建てられた大きな建造物があった。おそらくだが外見だけで見てみたらダンジョンだろう。
「ここは、ダンジョンでしょうかね?」
目白さんの方を見て聞いてみる。すると彼女は腰につけていた剣を取った。
「多分ここの最奥に魔法石があるんでしょう。さっさと10個集めて元の世界に帰るわよ。」
彼女が手に持っていた剣は鋭く銀色に輝いていた美しい剣だった。
そう考えているうちに彼女はもうダンジョンに入ろうとしていたので、俺も急いで目白さんの後を追った。




