第138話 天召結界幻斬舞
「何なんだ……お前らは。どうして私の邪魔をする!」
「ミカエル。お前はこれで終わりなんだ」
体の中に天使を入れた俺はミカエルに対してそう言った。
「いや、私はこんな所では終わらない!」
そう叫んだミカエルは辺りに魔法を撒き散らした。
未来が見えるおかげでほとんどの魔法は避けることができた。
それでも避けきれない魔法は魔力で横に避けた。
「避けるだけではダメであろう」
「氷竜の力、見せつけてやれ」
そんな声が頭の中に聞こえて来た。
すると、体が勝手に動き出した。
「うおっっ!」
羽をばたつかせて空に飛んだ。
それから一気に加速してミカエルに向かって止まることなく進んだ。
氷竜であるメランダの能力で魔法は全て玉砕していた。
「ぐあっ……」
あっという間にミカエルの元に辿り着き氷漬けにしていた。
「ぬああぁぁぁ!!」
だがミカエルは体に力を入れると氷はピキン、という音を立てて粉々になった。
身の危険を感じた俺は一度ミカエルから距離を取った。
「流石は五帝と言ったところか。だがそれだけでは今の私には勝てない!」
そう言ってミカエルは大量の触手を四方八方に飛ばして来た。
先ほどと同じように触手を避けていたが気付かぬうちに辺りは触手で埋めつされていた。
「全く、しょうがない」
またもマヨルダの声が聞こえて来て体が勝手に動き出した。
そして俺では到底思い付かないような身のこなしをし始めたのだ。
触手を凍らせたかと思えばすぐに剣で斬り体を反転させて後ろからの触手を避けた。
「クリストファー。術式は?」
「もう大丈夫だ」
触手を避けている最中にそんな会話が聞こえてきた。
それと同時に右手に握る剣と左手に握る剣、そして魔法によって剣が作り出される。
目白さんしか使える魔法では無かったのだろうか。
いや、目白さんも海底都市であの魔法を覚えていた。
そう考えてみるとマヨルダたちか覚えさしたということになるだろう。
今の瞬間わかったことだが、おそらくその考えで間違ってはいないだろう。
何十本にも及ぶ剣でミカエルの触手を一気に斬った。
「なっ!?」
ミカエルもこれで勝ったと思っていたのか触手から抜け出した俺を見て驚いていた。
とその時急に胸を締め付けるかのような苦しさが襲って来た。
「この命、持ってあと一分ってとこか……これで本当に最後にしよう」
「そうだな。これで最後だ」
そうミカエルが言い終わった瞬間に俺たちは動き出した。
ミカエルもついに自分で動き出して剣と魔法を両立して使っていた。
「ならこれはどうだ?」
剣で俺の両手の自由を奪っている間にミカエルは俺に向かって魔法を撃とうとしていた。
だが俺は何にも動じずにマヨルダ達がやっていたように氷で魔法を凍らせた。
「相乗魔剣・氷華!」
ミカエルが魔法を撃っている間に俺は剣に魔法を乗せてミカエルこ剣を凍らせた。
「なっ!」
パキパキと凍っていく剣を見てミカエルはすぐに剣を捨てて後ろに行った。
するとミカエルは俺の方に大量の触手を飛ばして来た。
今度は避けるのではなく触手の上に乗ってミカエルの方へと走っていった。
途中で他の触手が来たら飛び移って羽を使って避けたりしながらミカエルに近づいて行った。
「これを使うんだ」
「天使たちの最終兵器だ」
ウィリアムとクリストファーの声がすると体が勝手に動き目白さんと俺の剣を重ね合わした。
そこに魔力を流すと丈夫で太い剣が出来上がった。
真っ白な色で金色が施された天使が使うに相応しい形をした剣に変化していた。
「そこにこの魔法を乗せてミカエルを倒すんだ」
心の締め付けがさらに強くなった。
だが、ミカエルの目の前に俺はやっとこさ辿り着いた。
「グレイィィィ!!」
「ミカエル!!」
共に相手の名前を叫び今出せる最大の力を引き出した。
「神撃・ジェニックフルバースト!!」
ミカエルからはこれまで感じたことのないほど大きな魔力を感じた。
そして俺もウィリアムたちに教えてもらった魔法を剣に乗せた。
「相乗魔剣・天召結界幻斬舞!!」
双方の魔法が激突して衝撃波が生まれた。
互角の威力を放つ魔法はしばらくどちらも動かなかった。
いよいよ、俺の魔力も無くなりそうになった。
「「うおおォォォォ!!」」
すると僅かに俺が前へ出た。
ドンドンと俺は前に進んでいきやがてミカエルの体に剣が触れた。
魔法が消えたからか一気に剣は進みあれだけ攻撃しても崩れなかった聖堂ドン・ルナティックはバキバキと音を立てて崩れ落ちた。
「うおおおおおお!!!!」
ミカエルを倒す。
それだけを目標に魔力を剣に流し続けた。
もう体に魔力は残ってはいないだろう。
だが魔力は止まることなく流され続け魔法は継続し続けた。
やがて塔も地面につく頃、剣が腹に刺さっているミカエルは俺に話しかけた。
「ありがとう」
そんな一言を残して辺りは大きく光りミカエルは消えた。
本当なのか嘘なのかは定かではないがその声は俺が初めてミカエルにあった時と同じくらい穏やかな声だった
「ガアッ……!?」
すると俺も口から大量に水のように血が流れ落ちた。
口から流れ落ちてくる血を抑えようとするが止まることはなかった。
「ようやく、俺も終わるのか……」
そう言って今までの人生を振り返った。
決して長くは無かった人生だったが前世ではできないような体験をたくさんした。
友達もたくさん出来て自分に自信がついた。
魔法や剣を使ってダンジョンを攻略したりもした。
フィオナや目白さんのように心から信頼できる人も作ることができた。
「ミカエル、こちらこそありがとう……」
俺もミカエルに向かって空にそう言って地面に倒れた。
そして長い長い夜が終わりようやくセツシートには朝日が差し込んだ。
最終章 最終決戦編-完-