第136話 誰かの剣技
俺が地面に落下した瞬間、そこには塔の上で戦っていた人が集まって来ていた。
「グレイ!?」
「早く全員逃げてください……」
俺はその場にいた全員にそう言った。
上空の時空の歪みがさらに大きくなりミカエルが降りて来た。
「何だ、あれ……」
「ミカエルです。街の人をできるだけ遠くに避難させてください。あれは本当に危険です」
「でもグレイは……?」
俺は触手が飛んでくる未来を見たのでそれを避けながら答えた。
「大丈夫。必ず生きて帰る」
「ここにいてもグレイ様の邪魔になるだけです。早く行きましょう」
マロンがそういうと全員が撤退して行った。
「お前は倒す」
「それはこちらのセリフだ」
ミカエルはそう言うと黒い触手を飛ばして来た。
触手は未来を見ることで挙動は分かるがそれを避けれるかはまた別の話になってくる。
「はっ……」
どうにか触手を避けた先にはミカエルが飛んできていた。
「遅いのだ」
ドンッ!と胸骨が圧迫され骨がギシギシと割れそうになった。
ミカエルに飛ばされた俺は地面に倒れたがそれだけでは終わらずサッカーボールのように俺はさらに蹴られた。
「ガアッ……グッ!…ハァッ………」
完全にミカエルの独擅場に陥っていた。
俺は急いで魔力でミカエルの蹴る位置よりもさらに奥に体を飛ばした。
そこでようやく俺に時間の猶予が出来た。
剣を二本手に取ってミカエルの蹴りを防いだ。
「水素爆発球!」
俺は近距離でミカエルに撃ち込んだが全く聞いている様子は無かった。
おそらく原因はミカエルの体を包んでいるあの灰色の殻だろう。
俺の力では割る事は不可能に近いだろう。
「なかなか使えるじゃないか」
ミカエルはそう言うと魔法を俺に向かって撃った。
それは俺が作った魔法である水素爆発球であった。
水素爆発球の威力は俺が一番知っている。
そしてミカエルの魔力は俺を優に越していて今までで一番危険だろう。
——大丈夫。
俺はそんな目白さんの声が聞こえて来た。
すると俺の手に握られている剣は誰かに握られているかのように自然に動いた。
キンッ
そういう重たい金属音があたりに轟いて水素爆発球はミカエルの方へ何倍もの威力で跳ね返った。
「目白さんなのか……?」
「まさかそんなことがあり得るなんて思ってなかったな」
カウンターをした水素爆発球を余裕の表情で避けたミカエルがそう言った。
「それはっ、」
ミカエルは後ろに下がると目白さんのように魔法の剣を大量に撃ち込んできた。
俺は未来を予測して避けながらどうしても当たる剣は斬りながら対処していった。
そして最後にはミカエルが地面に火をつけた。
「危ないっ……」
俺は魔力で空を飛びながら燃え盛る地面を見た。
俺が空中にいる中でミカエルは容赦なく大量の魔法を撃って来た。
「空中は動きやすいんだよ!」
空中は地面とは違って魔力で操作をしているので俺の場合は空中の方が動きやすい。
「ほう。ならこれならどうだ?」
ミカエルはそう言うと俺の逃げられない範囲の大きさの大きな魔法を空一面に作り出した。
「何でもありだな」
魔法障壁でミカエルの攻撃を耐えようとするが先に魔法障壁が壊れた。
するとまたもや剣が動き軽い力で魔法を跳ね返した。
「どう言うことなんだ……?目白さんはもういないはずなのに………」
「グレイ君。ようやく繋がった……」
「この声って海斗か!?」
頭の中には先ほどミカエルに消されてしまった海斗の声が聞こえて来た。
「何だ?俺を助けてくれるのか?」
「いいかい。よく聞くんだ」
俺はミカエルの攻撃を何とか防ぎながら聞いた。