第132話 注射器
「大丈夫ですか!?」
「何でここに……?」
そこに立っていたのはマロンとノアたちだった。
「グレイたちを助けるためだよ」
その後ろからはアルバートたちも来ていた。
「ここからは俺たちも加わるから安心しろよ」
「ありがとう……みんな」
ここで人が増えるのはとても嬉しい事だった。
「うおおおっ!」
アルバートは天使の一人を剣で斬りかかった。
斬りかかったのはいいがアルバートの攻撃はもちろん天使に防がれていた。
そこに黒い影が通って天使を斬り裂いた。
「クロム!?」
一番驚いていたのは目白さんであった。
「攻撃が鈍くなったんじゃないかい?」
クロムが開口一番に言った言葉はそれだった。
クロムの剣も目白さんと見劣りしないぐらい美しく筋が通っているものだった。
「グレイ様、メジロ様。ここは私たちにお任せください」
「でも」
「グレイたちには倒すべき相手がいるんじゃないですか?」
「……分かった。こいつらは強いからくれぐれも気をつけるんだ」
そう言ってミカエルの飛んでいった方向へ俺たちは向かった。
そこは空間が歪んでいて何かゲートのようになっていた。
「ここですね」
その空間の中へと俺たちは入って行った。
「まさか、この期に及んでまだ抵抗するとはな」
「お前もな」
ミカエルは俺がそう言うと懐からあるものを取り出した。
「これを使うのも二度目か。以前は海底都市で使った以来か……」
ミカエルの手に握られていたのは注射器だった。
「それは……」
「海底都市に行ったんだから知っていて当然か。だが、これは海底都市とは違う」
「目白さん。あれは?」
俺は訳の分からない話だったので聞いた。
「ウィリアムが作っていた薬よ」
「そうだ。ウィリアムが天界で作り出した薬だよ。あちらと違って意識を保つこともできる」
海底都市の場合は身体は強くなるが急激な魔力の上昇で意識が保てなかったはずだ。
ミカエルはそう言うと肩にその注射器を刺した。
直後、ミカエルの肩からは四本の長く鋭い触手が出て来た。
「どうだ。この力は素晴らしいだろう」
そうミカエルは喋りながら触手を辺りに振り回した。
「ぐおっ……」
魔力障壁で防ごうとした俺も、剣で防ごうとした目白さんもどちらも触手に吹き飛ばされた。
この空間には壁というものがおそらく存在しないためミカエルは自由に行動できるたろう。
「グレイ、行くわよ」
俺も目白さんもすぐに立ち上がって触手を避けながら走った。
ぐるぐるとミカエルの周りを回って少しずつミカエルに近づいていった。
「ハアァッ!!」
ミカエルに向けて目白さんが剣を振り下ろしそこへ俺が魔法で追撃を仕掛けた。
「水素爆発球!!」
あたりが煙で包まれて姿は見えないがミカエルの声が聞こえて来た。
「そんな貧弱な魔法では私には触れることすらできん」
そう言うと青白く光ったビームが飛んできた。
そのビームは本能で分かった。
触れてはいけないものだと言うことがわかったのですぐに避けた。
「何だよあれ!」
横に並走しながら目白さんに聞いた。
「多分だけど……魔力だと思う」
「魔力!?」
魔力はどうやってもあんなビームのように撃つことはできないはずだ。
「普通はこんなことは出来ない。だが、今の私は薬のお陰で魔力をこうする事も可能よだよっ!」
魔力を何個もの球にして俺たちの方目掛けてバラバラに飛んできた。
「神は本当に何でも出来るのかよ!」
攻撃を交わしつつミカエルの方へと近寄ろうとするがそれすらも不可能だった。
「目白さん……」
「ミカエルの魔法を止めることはおそらく出来ないわ。けど、近寄ることなら出来る。私の今から言う指示に従って」
そう言っている目白さんの指示を俺はミカエルの攻撃を避けながら聞いた。