第127話 氷華炎満
「フィオナ!もうこんな事は終わりにしよう」
俺はそう言ったがフィオナは眉ひとつも動かなかった。
フィオナがいくら強敵だからとしても二体一ならばこちらの方が優勢だろう。
「んなッッ!!」
フィオナは瞬間移動をして俺たちの方へと来た。
やはり瞬間移動をする時に魔力は感じられない。
「獄水球!」
俺は目の前に現れたフィオナに対してほぼゼロ距離で魔法を放った。
それなのに関わらず俺の魔法はいとも簡単に避けられた。
加えてフィオナは俺に向かって光弾を撃ってきた。
「フィオナ、目を覚ましてくれ!」
そう呼びかけてみるもやはりフィオナは反応しなかった。
「ハアァッッ!!」
俺を見ていて背中が空いていたフィオナに向かって目白さんが剣で攻撃をした。
が、目白さんの背面からの攻撃は後ろを向きながらフィオナに塞がれた。
フィオナは手を後ろに回して剣で目白さんの一撃を受け止めていた。
俺も魔力空間から剣を取り出して何とかフィオナの動きを止めようと動く。
「ガアッッ!」
魔力空間から剣を取るというほんの一瞬の隙にフィオナは俺の首を掴んだ。
人間離れした力で俺の喉がどんどんと閉められていく。
「グレイを話せっ!」
目白さんは魔力で剣を大量に作り出してフィオナに対して撃ち込んで行った。
するとフィオナは俺のことを放して目白さんの剣を避けた。
「その量を避け切るのね。でも」
魔力も何も無しに人間の力だけで剣を避けたのはとてつもないことだ。
だが、人間である以上体力というものは絶対にあるはずだ。
そして今、フィオナは少しだけだが息が切れているように見える。
「相乗魔剣・炎舞!」
「相乗魔剣・氷華!」
「「合併相乗魔剣・氷華炎満!」」
これこそ昨日、目白さんと一緒に練習した剣の一つだ。
相乗魔剣と相乗魔剣のそれぞれの違う効果を混ぜることで何十倍もの力を出す。
俺と目白さんの剣が一つになりこれまでとは比べ物にならないくらいの力でフィオナに当たった。
ダンッ!と大きな音がして壁側にフィオナが飛んでいっていた。
フィオナは俺の氷華の効果である氷で固まっていた。
目白さんの撃った炎舞は辺りを燃やしてまだ火が燃えていた。
「海斗!愛莉!俺が押さえておくから!」
「「分かった。」」
そう言うなり二人は俺が押さえているフィオナの方へやってきた。
「やる事は分かってよね」
「もちろんよ。私が記憶を海斗は身体能力をお願い」
二人はフィオナに向かって何かをし始めた。
少なくとも魔力で何かをしていると言うわけでは無いと思うのだが。
「アアアアァ!!」
五秒もしないうちにフィオナがそう叫んだ。
「海斗。これは正常なのか?」
「あぁ、これを取り除くのはかなりの痛みを伴う」
「そうか。フィオナ、俺がいるから大丈夫だぞ」
そうして治療をし始めて十分は経っただろう。
「体の治療は終わった。記憶はどう?」
「ん。もうちょっと。これがここで……よしこれで行けると思う」
「グレイに目白さん、少しだけ離れていてくれ」
そう言って二人はフィオナの前に立った。
「結界消去術式、神結界」
そう言うとフィオナの体にあった鎖の紋様はどんどんと薄れて行った。
「これでもういいのか?」
「しばらくは安静にしておいた方がいい」
「分かった」
何はともあれ俺はようやくフィオナを取り戻した。
思えばミカエルに連れ去られて半年間、俺はずっとフィオナを苦しませ続けていたのだろう。
ミカエルの言っていた矯正というのはどう言うものなのかは分からないがとてつもなく辛い思いをしたのは間違い無いだろう。
「ごめん、フィオナ。そしておかえり」