第118話 友達だった?
「これで話は終わり」
「それで何であのダンジョンと同じなんだ?」
「そこに出てきているジュリアン。それは僕の友達だったんだよ」
海斗って、この世界にどれだけ顔見知りがいるんだ?
ほとんどの人が海斗と面識あるんじゃないか。
「彼は僕が旅をしている時に出会った友達の一人だったんだ」
「それでその友達の話を伝説にしたと」
「そういう事だ」
実話だったからこそ今のようなクオリティの本が出来たのだろう。
「その伝説と『フェイトフル・ホーナー』が同じだって事は分かった。けど、『伝説は繰り返され現在に提唱される』っていうのはどう意味なのか分からない」
「だから、その通りなんだよ」
その通り?
何を言っているんだ?
「仲間を想い仲間のために戦い仲間のために死んでいきその時仲間の死を泣く。それと同じだ」
「とにかく、今の俺には分からないってことか?」
「そういう事になる」
ならどうして、フェイトフル・ホーナーの事を話したんだ?
「それと君に伝えることがある。これからはこんな風に会話するんじゃなくて現実で君の脳に直接話しかける。神と戦う時にも出来る限り君を助ける」
「なら安心だな」
「どんな気持ちだい?この世界に二十年も経たずに来て神と戦うっていうのは」
どんな気持ちと聞かれても特に何も答える事はない。
でも、強いていうならば。
「この世界に呼んでくれた女神に感謝しているよ」
「たとえそれが自分の倒さなければいけない相手でも?」
「そうだ」
倒す、倒さないのどちらでもこの世界に呼んでくれた事に違いはない。
「君は強いね。じゃあ、また会おう」
「こんにちは、目白さん」
「あなたが海斗なのね」
「君が目白さんかー。強そうだね」
そう言いながら海斗の後ろから出てきたのはおそらく愛莉だろう。
愛莉の第一印象としては、大きいことだろう。
どこがとは言わないがとにかく大きいのだ。
「それで?私に何か用があるから呼んだんでしょう」
「そう。まずはこれを見てくれるかい?」
そう言って目白さんにグレイに見せたものと同じものを見せた。
「まず、これが何が分かるかい?」
「何なの?大方ストーリーは『フェイトフル・ホーナー』に似てるけど」
「これはその作品の元になったものだよ。元々、『フェイトフル・ホーナー』は僕たちが出したものだし」
「……なるほどね。それで?話の趣旨は何なの?」
「実はこの前君の友達と話したんだ。それで『伝説は繰り返され現在に提唱される。』って言ったんだけどピンと来るかどうか聞きたいんだ」
「そうね。さっきの内容を考えると私は——」
「分かったわ」
「何も感じないのかい?」
「感じるわ。けど、私はもう何も恐れないって自分のことに誓ったのよ」
「そうか。じゃあ、また会えたら」
「グレイ。グレイ起きて」
俺はそう言われて目を覚ました。
「神と戦うんだったらまず肩慣らしが必要でしょ」
「肩慣らし?」
「そうよ。とりあえず、あとで学校の講堂に来て。話はそれからよ」
そう言われて目白さんは部屋から出て行った。
確かに神と戦うのなら肩慣らしが必要かもしれないな。
俺はパパッと朝食を食べて学校の講堂へと向かった。
「目白さんに、校長?何故ここに?」
「肩慣らしをするのに協力してくれるからよ」
「じゃあ、肩慣らしって具体的何をするんですか?」
「簡潔にいうと私と戦ってもらうのよ」
え?
目白さんと戦う?
そんな事をすればまた前みたいに時空の歪みが出来るじゃないか。
「そんな事、」
「だから、校長先生がいるのよ」
「はい。では今から詳しい事を説明しますね」
そう言って校長は一歩前へ出てきて喋りだした。