第117話 神髄兵器
「ジュリアン!?」
扉を開けてジュリアンの行った方向へ私は一目散に走り出していった。
扉を開けた先にはジュリアンともう一人の女がいた。
「ジュリアンを放せっ!」
銃で化け物に対して撃つが全く聞いていないようだった。
「エマ!?俺はいい。早く逃げろ……」
「そんなの出来ない」
「いいから。俺が俺でなくなる前に逃げろ…………」
女はジュリアンから離れジュリアンの後ろに立った。
何のつもりなの?
私はそう思いながらジュリアンに近づいた。
「エマ…逃げ……アアアアァァ!!」
そうジュリアンが叫ぶと体は膨れ上がり大きな化け物へと変化してしまった。
「ジュリアン?ジュリアン聞こえてる!?」
私は必死に呼びかけたがジュリアンにはもう聞こえてないようだった。
ジュリアンは私を見るや否や私の方へと突っ込んできた。
「ジュリアン!やめて!」
そう必死で逃げながら呼びかけるもジュリアンは依然と私を追いかけてきていた。
前を見ていなかったせいか私は道に躓いて転けてしまった。
逃げようとするが後ろにはもうジュリアンがいた。
「ウオオオォォォォォォ!!」
大きく手を振り上げて私を殴ろうとしていた。
もうここで終わりだ。
私は今度こそ覚悟をした。
だが、その振り下ろされた拳は私を狙っていたはずなのに横にずれた。
「エマ……逃げ……ろ………」
ジュリアンから聞こえたのはそんな言葉だけだった。
突如、ジュリアンは後ろに走り出しそこにいた女に突っ込んで行った。
「………」
後ろにいた化け物は黙ったまま突っ込んでいくジュリアンを見つめていた。
「ガアッ!」
ジュリアンの何倍も小さな体を持つのに関わらず吹き飛ばした。
相当な力があるのだろう。
「アァッッッッ!!」
女は手を伸ばすとその先から触手が出てきた。
触手はものすごいスピードでジュリアンに突き刺さった。
それでもジュリアンは止まる事なく触手で体を貫かれながら突っ込んでいった。
「そんな…そんな……ジュリアンやめて!」
女は空中に何本もの太い棘を作り出してジュリアンは全て喰らった。
ついにジュリアンはその場に倒れた。
「ジュリアン!」
そう叫び私は近くに駆け寄った。
体は先ほどのような化け物ではなく人間のような体に戻っていた。
「あぁ……エマか……ハハッ、どうして俺はいつもこういうところで…………」
「もう喋らないで!一緒に帰るって言ったでしょ!」
「エマ。あんたは本当に隊長だったんだな……」
「え?何のこと……?」
「俺の思い描いた姿だよ……仲間を想い仲間のために戦い仲間のために死んでいきその仲間の死を泣く…それがエマ、あんたのことなんだよ」
辿々しい言葉でジュリアンは続けた。
「最初は疑ってすまなかったな……隊長。まだ、生き……」
「ジュリアン、聞こえないよ……最後まではっきり言ってよ……」
地面に横たわるジュリアンに向かって涙を流しながらそう言った。
「あいつだけは私は許さない……」
しばらくジュリアンのそばにいた。
ジュリアンの言った通り、私はまだ生きている。
ならやる事はまだある。
「こっちよね。」
女が入っていった扉を開ける。
中央には女が立って何かをしていた。
「何をしている?」
女は私に向かって喋りかけた。
「何をしていると聞いているんだ」
女がそういうと触手が私の方へ飛んできた。
女は振り返り私の方へ歩いてきた。
服は燃えて体が燃えていた。
「お前とはここでさよならだ」
そう言いながら炎を飛ばしてきた。
女の歩いてくる隙をつき私は反対側に抜けた。
「さてどう倒したものか」
そう辺りを見回すと壁沿いに何かが置かれていた。
「神髄兵器?こんなところになぜあるんだ……まあいいか。これを使わせてもらおう。私も使うのは初めてだが」
神髄兵器を手に持ちゆっくりとこちらに向かってくる女に対して撃ち込んだ。
ドンッという大きな衝撃音と共に女も私も吹き飛んだ。
それは例外なく奥の部屋も全て吹き飛んだ。
「このアラームってまさか……」
施設に大きな警告音のアラームが鳴り響いた。
「自爆装置よね。神髄兵器を使ったからね」
天井から伸びていた梯子を登り空港へと出た。
小型の飛行機に乗り込み私は飛行機を発射させた。
「っ!どこまでもしぶといわね!」
出発させたものの飛行機の足が触手に掴まれていた。
だが、その時触手は切れた。
そして、心なしかこう聞こえた。
エマ、生きろ。
涙を我慢しつつ私は島を脱出した。