第112話 因縁の終わり
「相乗魔剣・氷華!」
俺は黒い怪物に剣を突き刺した。
突き刺した場所から怪物の体は凍っていった。
が、すぐにその凍った部分は氷が弾け飛ぶと共に解かれた。
「氷竜の力かよっ……!」
そう。
あの黒い怪物は海底都市の五人の記憶や能力が混じってできた物質なのだ。
「氷の耐性はお手のものってことか。」
「ガアァァァァァ!!」
そう黒い怪物は雄叫びをあげると口から炎を吐いた。
「マジかよ!目白さん、早く攻撃を。」
「分かってるわよ。」
俺が黒い怪物の吐く炎から逃げていると目白さんは前を横切り大きく飛んだ。
「ハアァッ!」
魔封石目掛けて一直線に目白さんは飛んでいった。
そう言って目白さんは剣に魔力を乗せた。
俺の知る限り初めてのことだった。
その瞬間結界はパキンッと音を立ててガラスのように散っていった。
「クッ!」
結界は割れたものの目白さんは失速してそのまま地面に足をつけた。
結界が割れた瞬間、炎は止まったので目白さんの元へ行った。
目白さんは右手を押さえて座り込んでいた。
見てみるとその右手からは血が垂れていた。
「目白さん!大丈夫ですか!」
「ええ。一応、割ることはできるけど今の人数じゃ無理ね。それに私の体が耐えられないわ。」
「くそっ。じゃあどうすれば倒せるんだ?」
「グレイ様。私たちがお手伝いしましょうか。」
そう言って俺の後ろに現れたのはマロンとノアだった。
「マロンにノア!」
「これなら行けるかもしれないけどチャンスは一回だけよ。私が結界を割ったら三人で魔封石に攻撃をして。」
そう言ってフラフラになりながら目白さんは立ち上がった。
「じゃあグレイ。あいつの気を引いて。」
「分かりました。」
剣を持ち魔力を乗せた。
ふと刃を見てみるとガタガタになって刃こぼれを起こしていた。
「俺の剣もあと二、三回か。相乗魔剣・斬!」
魔力で地面を押して黒い怪物の首元から後ろ足に向けて剣で斬り裂いた。
「グギャアアアアァァ!!」
相当な痛みだったのかこれまでで一番大きな声を上げた。
そして待ち望んだ攻撃がきた。
氷の塊を黒い怪物は俺の方へ飛ばしてきた。
「目白さん!」
これまでの目白さんとは比にならないほどの速さで黒い怪物に剣を刺した。
当然かのように結界は復活しており一瞬剣が止まった。
そして俺を狙ってきていた攻撃も止まった。
「まさか、あいつそれを狙って。」
氷の標的は俺ではなく自分の結界を壊そうとしている目白さんに変わった。
必死に走ったが俺は感じた。
これはもう無理だ。
そう心の中で思ってしまった。
「グレイ様は魔封石の破壊の準備を!」
「ここは私たちがメジロ様をお守りします!」
そう声が聞こえると目白さんに向かって行った氷はどんどんと破壊されていく。
後ろでマロンとノアが氷を魔法を撃って破壊していたのだ。
俺はすぐさま魔封石を破壊する体制に移行した。
「私は負けない。こんな所で止まるわけがない!」
パキンッという破壊音と共に目白さんは地面に落ちた。
きっと大丈夫。
目白さんならきっと大丈夫。
そう心に言い聞かせて魔封石の方へ飛んだ。
「ハアァァァァッッ!」
魔封石に対して真っ直ぐに剣が入り真っ二つに割れた。
「ギャアアアアァァアァァ!!!」
黒い怪物はそう叫んで泥のように地面に落ちていった。
そして最後に人のようなものが残った。
「「「私は……」」」
「「俺は……」」
五人の声が混ざって聞こえてきた。
「ここで終わりだ。」
そう言って俺はその人のようなものに向かって剣を思い切り刺した。