第109話 魔封石
「こんな暗い場所でよく生活できましたよね。」
「そうね。陽に当たらないっていうのはかなりの苦痛だと思うけど。」
壊した岩から出てきた穴は少し進んだだけで真っ暗になってしまった。
「ここが最奥ですか。」
「最後まで下に掘ろうとしてたのね。」
右側には人骨とその近くにはツルハシが握られていた。
「かなり掘ってますね。」
その人骨の横にはかなり長く下に掘られた穴があった。
「とりあえずここの下を撃ち抜いて。」
「分かりました。水弾!」
大量の弾を生成して弾を円形に設置し地下へと飛ばした。
その後、足で真ん中を押すとバキッと音がして水弾で傷つけた場所が崩れた。
「まあまあ綺麗な円形になったわね。」
空いた穴を覗き込んで目白さんがそう言った。
城の地下と言っていたのでそれほど深くないはずだが爆発で地下が崩れていたら元も粉もない。
「大丈夫ね。この下はちゃんと道が続いてる。」
目白さんは先に穴の方へと飛び降りた。
先に行った目白さんに続いて俺も穴へと飛び降りた。
降りた先は一本道が続いていた。
「すごい……」
そこには明るく光る正八面体の物体が浮かんでいた。
「なんて魔力なの…これで結界を維持してるの?」
城の地下にこんなものが埋まっているなんて誰が予想出来ただろうか。
「見た感じは魔封石みたいですね。」
「こんな大きいのは見たことないけれどね。」
魔封石というのは文字通り魔力を封印した石なのだが高密度になればなるほど作るのは難しくなる。
魔力の詰め込みに耐えられる石が限られてくるからだ。
「こっちに扉がありますね。」
魔封石の後ろには鉄の扉があった。
「階段?」
「登ってみましょうか。」
「ここって……」
「おそらく城の中ね。」
「じゃあ、あそこと繋がっていたって事ですかね。」
「そういう事になるわね。」
「それにしても随分と丈夫な部屋ですね。」
数ヶ月ぶりに城に入ったものの中は自爆装置のせいでぐちゃぐちゃになっていた。
それでも爆発を耐え忍んでいるのだ。
——古代の先人もこんな物をここに置いて。舐めるのも大概にしろっ!
——君がこれをどう使うかは知らないけどここを維持してるのは全部これだからね。
——魔封石がまさかこんな力を……
「マヨルダと愛莉か?」
「何が見えたの?」
「はい。マヨルダが魔封石を使って何かを。」
「やっぱりマヨルダが仕組んだ事だったのね。」
「何がですか?」
目白さんは机の上に置かれた紙を見ながらそう言った。
「前にあなたが薬で人の身体を強化するって言ってたことよ。何より早く見つけたのはマヨルダだったみたいなの。」
そう言いながら目白さんが手に持っていた紙を渡してきた。
紙には何かの設計図のような物と魔封石の絵が描かれていた。
「でもそれとあの薬に何の関係が?」
「マヨルダもこの海底都市から出たかった。そのためには力が必要だった。そこで見つけたのが魔封石だったのよ。でも、マヨルダ一人じゃどうしても研究が進まなかった。」
「そこでウィリアムに任せたと?」
「そういう事になるわね。わざとウィリアムを泳がせ最後に自分のものにする。それがマヨルダの計画だったみたい。」
この研究室が魔封石の上に作られていたのはそういう事なのか。
丈夫なのも魔封石や研究材料を破壊させないためか。
「とにかく薬の材料が魔封石って分かっただけで大きな進捗ね。」
「まさか身体の大幅な強化をするあの薬が魔封石だったなんて思いもよらなかったですね。」
「まあ大方、体内の魔力を無理矢理増やすといったところかしらね。」
俺も体内にある魔力を無理矢理増やしたことがないから分からないが身体にはかなりの負担がかかるだろう。
「今できることはもう無いしここを出ましょうか。
「そうですね。魔封石についても知りたいですしここを通路にしましょうか。」
「そうね。じゃあ早速取り掛かりましょうか。」