第108話 感じたもの
「それでは昨日と同じく、日の入りまでに帰って来てください。」
理事長と共に海底都市に降りた俺たちはそれぞれ昨日回れてない場所に行った。
「話したいことって何?」
「今朝、古代の先人と話したんです。」
「寝ている間?」
「それが現実に現れたんですよ。」
今までなかった事例に目白さんは少しだけ驚いたように見えた。
「それだけ?」
「いえ今までは男性、海斗っていうみたいなんですけどその人だけしかいなかったじゃないですか。」
「それ以外の人が現れたの?」
「そうなんです。」
目白さんはいつもと変わらず勘が鋭く一発で俺の言いたいことを当てた。
「身長は目白さんよりちょっと小さいくらいで胸が大きい女性で愛莉っていう人なんです。」
「胸が大きい…大きい方が……」
「目白さん?大丈夫ですか?」
「えっ、ああ。続けて。」
「その愛莉って人が海底都市の結界維持をしていたそうなんです。」
「なるほどね。」
目白さんは顎に手を当てて少しの間考えていた。
「なら、今日はその魔法陣についてね。」
「あと、昨日の現象について分かったので話します。昨日の現象はどうやら過去を見ていたようなんです。」
「過去?」
「はい。その土地に刻まれた歴史を紐解くことが出来るようで。」
「発動条件とかはないの?」
「それが分からなくて。」
発動させるのに必要なのが場所なのか、魔力なのか。
「海底都市を回ってる間にその内分かるようになるんじゃない?」
「じゃあ、結界の近くにいきましょうか。」
俺は目白さんの手を取って結界の近くまで瞬間移動をした。
「ここね。」
目白さんは結界の方へ近づきながらそう言った。
「グレイ。これに向かって魔法を撃って。」
「分かりました。獄水球!」
ドンッと音がしたが結界は愚か近くの地面も傷すらつかなかった。
「何でそれなのよ。まあその調子なら何を撃っても無理だと思うけど。」
「俺は言われた通り魔法を撃ちましたよ……」
何故かは分からないが目白さんに怒られているような気がしたから一応そう言っておいた。
「いいわよ。じゃあ、今度は私に向かってこの前撃ってた水素爆弾を撃って。」
水素爆弾て。
間違っているわけではないがもう少し柔らかい言い方はなかったのだろうか。
「目白さんに?」
「そうよ。心配しないでいいわよ。」
「分かりました。水素爆発球!」
魔法は真っ直ぐに目白さんの方へと飛んでいった。
直後、目白さんに当たったと思われた魔法は軌道を変えて結界に当たった。
ドオォォン!と先ほどよりも何倍も大きな音が轟き地面が揺れた。
「無傷と。本物のようね。」
結界を触りながら目白さんは言った。
その目白さんの右手には魔法で作られた剣が手に収まっていた。
どうやら俺の撃った魔法をカウンターしたようだ。
「こんなものを何百年も維持するのね。これの核ってどこにあるのか聞いてる?」
「いえ、それは聞いてませんね。」
「まあいいわ。マヨルダ城に用があるしそこまで飛んで。」
そう言われて俺たちはマヨルダ城の方へ瞬間移動した。
「ここには何の用で?」
「マヨルダ城の中に用があるのよ。」
「中って?」
「私が地下に落とされた時、何かを感じたのよ。その時は魔力に敏感じゃなかったからわからなかったけど。何があるはずなのよ。」
目白さんの後をついて行こうとすると頭に痛みが起きた。
——これなら見つからないぜ
——そんな所で何をしている?
——っ!マヨルダ様…いえ、これは
——もうよい。お前の死に場所はここで決まりだ。
「グレイ。過去が見えたの?」
「どうやらそのようで。ここが開くみたいなんです。」
先ほど見えた場所らしい岩場に近寄って魔法を撃った。
「風球」
魔法の当たった岩は最も簡単に割れてその先にある通路が顔を出した。
「こんな所に通知があったのね。これも過去が見えたからなのね。」
「見えた過去が結構なものなので覚悟は決めた方がいいと思います。」
「それはグレイの方じゃないの?」
「じゃあ行きましょうか。」