第106話 聞きたいことがあるんですけど……
結局、あのあと俺たちは何の進捗もないままマヨルダ城の前まで帰ってきた。
「まだこんな時間なのに海底都市はほぼ真っ暗ですね。」
セツシートではまだ日が照っている時間だが、海底都市では明かりがほとんど届かない。
そのため、今や夜と同じくらいにまで真っ暗になっていた。
「早いうちに上へ帰りましょう。」
そう言われて俺たちは行きに降ってきた階段を登り初めた。
時間は経ち、全員が寝静まった頃俺は寝ることができないでいた。
「夜風にでも当たりに行くか。」
そう言って海岸の方へ向かうとそこには誰かが立っていた。
「どうしてあんたがここにいる?」
そう俺が言うとその人は振り返った。
その人は後ろ姿を見ただけでも分かる男、古代の先人であった。
「君と同じく夜風に当たりに来たのさ。」
「あんたは記憶の存在のはずだ。現実に現れるはずがない。」
「そうかい?これも君の中にある僕の記憶かもしれないじゃないか。」
少し笑いながら古代の先人はそう言った。
「古代の先人、俺はあんた聞きたいことが山ほどある。」
「一つずつなら答えるよ。」
「ならまず一つ目だ。俺の中では今何が起きている。」
死んだはずの相手の声が聞こえると言う現象は間違いなく古代の先人の仕業だろう。
「んー。簡単にいえば過去の出来事が分かるようになった。そこにいた人物の記憶を読み取れるようになったんだよ。」
「前回のあのダンジョンか?」
「そうだね。」
あのダンジョンで頭に入れられた術式はそれだったのか。
「平然と言っているがそんなものをなぜ俺たちの頭にインプットするんだ?」
「僕たちは神を殺そうとした。けど、ダメだった。だから、君たちに託した。それだけさ。」
「その事に関してはよく分かった。なら次だ。マヨルダが言っていた海底都市は古代の先人が管理する監獄というのはどう言う事だ?」
あの日、その言葉を言われてからずっと心に残っていた。
「強ち間違いじゃないね。」
「どう言う事だ?」
「確かに僕たちは彼女達を海底都市に閉じ込めた。けど神に狙われて沈められたのは事実。だから僕は結界を張った。」
「それでその結界は役に立ったのか?」
「いや。天使の涙は何度も結果で防ぐことができた。」
あの攻撃を結界で防げるものなのだろうか。
俺たちも結界を作ることが出来た。
だが作った結界は一回は天使の涙を防げたがそれだけだった。
どういう作り方をすればそんな何回も防げるのだろうか。
「そして神は僕たちの誤算を引き起こした。」
「誤算?」
「あぁ、そうだ。天使の涙ではない、それ以上のものを撃ってきた。それこそが僕たちの敗因、そして後世に受け継いだ理由。」
「想像以上のものって?」
「それを僕たちは神撃と呼んだ。その一撃は全てを破壊した。」
天使の涙より上があったことに一番驚いた。
天使の涙を何度も防いできた結界を壊してたった一撃で沈めた攻撃。
まさにそれに等しい名前であった。
「おかげで地上に出ていたホッ・カイドウは海底に沈んだ。その後は知らない。」
「何を言ってる?あんたが作った牢獄なんじゃないのか。」
「沈んだ後は僕の管轄じゃない。こいつの管轄だよ。」
「は?」
そう言って古代の先人は得意げそうに言った。