第101話 そんな所で何を?
「ここは……?」
「やっと起きましたか。」
あれから少し待った時、ようやく目白さんの意識が覚醒した。
俺の方を少し見てその後周りを見回した。
「列車はどうなったの?」
何かを思い出したかのように俺に聞いてきた。
「列車はあんな状態で……」
「頼りにならないわねっ!」
そう言った途端に目白さんは、手に持った剣を俺の方へ投げてきた。
俺はその件を避けようとしたが間に合わないと感じた。
が、その剣は俺の横を通り抜けていった。
「そんな所で何してるのよ。」
目白さんは俺の方を向いていった。
「別に何も……」
「あなたじゃないわよ。隠れても無駄よ。古代の先人さん。」
目白さんの口から出た言葉に驚きすぐに俺は後ろを向いた。
「なんで君にはバレるのかな?女性の勘ってやつかい?」
石の壁にもたれかかるように立っているのは見覚えのある男だった。
「ここは何処だ。」
「おいおい、何でそんな怒ったように聞くんだ?僕は君に情報をたくさん言ってあげたじゃないか。」
確かに思い返してみれば古代の先人には色々と教えてもらった。
天使の涙の術式について。
フィオナが生きている事。
ダンジョンの場所。
「それで、何でここに案内させたの?」
今度は横にいる目白さんが聞いた。
「そうだね。前も言った通り、君たちの能力を伸ばすため。」
そう言うと古代の先人は後ろの壁を叩いた。
すると後ろにあった壁はゴゴゴ…と重々しい音を立てて開いた。
その先に進んで行った古代の先人を追って俺と目白さんはその中へと入っていった。
「こんなにたくさんダンジョンを作ったのは訳がある。」
前を歩く古代の先人の話す言葉を聞きながら歩いた。
「僕らの作ったダンジョンの目的は神に戦う力を身につけるため。一人一人が神と戦う力を持っていたがそれを誰かに教えることができなかった。なぜだか分かるかい?」
「全員、神と戦う力を持ってはいたもののそれ以上のことを覚えてしまうと記憶の限界がくるから……?」
俺はそう古代の先人に問いかけるように聞いた。
「まあ、あながち間違いではないね。そこで僕たちはそれぞれの術式を保存することにしたけどそれも一つの場所に収まらなかった。」
「それでこんなダンジョンを?」
今度は目白さんが古代の先人に問いかけた。
「そうだね。おっ、ついたね。ここに乗って。次の術式のインプットを始めるから。」
案内された通り俺と目白さんは古代の先人が指差す魔法陣に乗った。
魔法陣に乗った瞬間、辺りは真っ白になり気がつくとそこは最初の洞窟だった。
「ここに戻ってくるわけか。」
「とりあえずここから出ましょうか。」
目白さんの提案になって俺たちは洞窟から出た。
「もうこんな時間になっていたのね。」
外はもう既に日が落ちて真っ暗になっていた。
俺と目白さんは瞬間移動を使ってマロンたちが待っているはずの宿屋近くまで飛んだ。
「そういえば新しい術式って何だったんでしょうね。」
宿屋まで歩きながら俺は目白さんに聞いた。
「また、古代の先人が言ってくれるんじゃない?」
そう言うものなのかと思いながら俺は歩きながら考えた。
そう考えているうちに宿屋に着いた。
「では、マロンたちと合流しましょうか。」
「そうね。」
そう会話を交わしてマロンとノアのいる部屋の扉を叩いた。
三回ほど叩いた時、扉が開き俺と目白さんを中に入れてくれた。
そこでそれぞれの調査の報告をした。
「結局のところ、俺の言った場所にダンジョンは無かったと。」
「はい。」
マロンたちに調べてもらっていたダンジョンはそれらしきものは無かったと言うことだった。
だとすると、これでダンジョンはこれで終わりなのだろうか。
それともあのセツシートとは違う場所にダンジョンがあるのだろうか。
「何にせよ全員無事だったんだし、これで良かったんじゃない?」
目白さんがそう言った。
「明日にはセツシートには戻りましょうか。」
セツシートには俺たちの帰りを待っている人たちがいる。
フィオナもきっと、俺たちが助けてくれるのを待っているはず。
「絶対に…助け出してみせる……」
そう小声で呟きながら俺は自室に戻った。